初夜が最悪です
『マジェンタの瞳』のネタバレを含みます。ご了承下さい。
「愛は不要です。跡継ぎを生む事と公爵家の妻の仕事さえして下されば結構です。ただ、贅沢は許しません。」
そう言い放ったのは、結婚式で初めて顔を合わせた私の旦那様。
長い茶色の髪は美しく、顔立ちも整っている上に爵位は公爵。それだけではなくて我が国の宰相閣下。有り得ない程素晴らしい玉の輿だって飛び付いたけれど、美味しい話には裏があるんだって、今更ながら実感してしまう。
緑の鋭い瞳が私を捉えて、このまま初夜かしらって緊張していたら彼は部屋を出て行ってしまった。他人と同じベッドで眠れませんって言ってたけど…私、貴方の妻になったんですけど?!
私の名前はカトリオーナ。
大陸の中でも二大大国と謳われるバークリンのメラーズ侯爵家の娘。
四年前に我が国では大きな革命があった。前王が崩御して、新国王ライオネル陛下が即位してから国は凄い勢いで変わったの。そんな中でメラーズ侯爵家が生き残れたのは、父さんが元々領民に寄り添う領地経営をしていたお陰みたい。そのお陰で我が家の家計は火の車だったけれど、ライオネル陛下が即位して国が整い始めたら、我が家にも余裕が生まれた。それまでは、貧乏侯爵家の娘を娶ろうとして下さるご令息はいなくて、私は二十四まで縁談無しで立派な行き遅れとなった。
そんな私にやって来たのがこの縁談。父さんと兄さんはグルーウェル公爵は立派で優しい方だって言っていたけれど、全っ然違う!
夫婦の為の広いベッドで一人寂しく眠りに就く事になった私は誓う。負けるものかと。
貧乏貴族の行き遅れ女、舐めるなよ!




