プロローグ
君は突然友人との連絡が途絶えたり、友人の性格が変わっただとかというのを経験したことはないだろうか?
もしかしたら『彼ら』は君のそばにすでにいるのかもしれない―――
「ねえ聞いた…?例の噂、あれってやっぱりマジらしいよ…」
夕暮れ時に商店街が怪しく黄昏色に染まる。
「噂ってあれでしょ?人が消える『穴』ってやつだよね?」
「えーなにそれ?私全然知らない!どういう噂なの?」
なんの変哲もないいつもどおりの商店街。毎日何人もの人間が通勤、通学、買い物、様々な目的をもって訪れる。この少女たちもいつもどおり学校を終え、世間話をしながら寄り道をしたりして帰路を歩いている。
「えぇ!?由美子知らないの?ほら、今ネットとかTwitterとかでも超話題になってる都市伝説よ!本当に知らないの?」
「知らなーい!もしかして絵里も知ってるのお!?」
「まあねー。多分知らないのは由美子、あんたぐらいだと思うよ…」
「えーそうなんだあ!どんな噂?」
夕日が山に沈み始め、黄昏色に染まった空から徐々に闇が生まれる。
「ったく…。さすがにこの話は知ってるわよね?全国各地で今人がたくさん消えてるって話!テレビのニュースでも取り上げられてるぐらいだし」
「それは知ってるよお!確か消えてるのは中学生から高校生の学生ばっかりってやつだよねえ?怖いよねえ!ゆみも消えちゃったらどおしよお~!!」
「そうそうそれそれ!最初はただの失踪事件だと警察とかも思ってたらしいんだけど、消えるのが学生ばっかでしかもそれが全国各地で何人も同じように消えるから急に話題性が高くなったんだよね!なんでも街のあらゆる所に『穴』があってそこに落ちて消えているっていうのが今一番有力な説らしいよ!穴の目撃情報もあるって話だし…」
「でもそれの話は知ってるけど何がマジなのお?事件があったのは事実だし、ホントもウソもないよねえ?」
日は完全に沈み、街に灯りが付き始める。しかしそれと同時に人の数も徐々に減っていき、気づけば商店街にいるのは少女達3人だけとなっていた。
「ここからが本番よ!この話はあまりにもヤバイから国が報道を規制したらしくて、その情報の一部が漏れたらしいんだけど…」
その場に少し緊張した空気が張り詰める。日が沈んだせいか、もしくは別の何かが原因なのかあたりの空気の温度が肌で感じることが出来るほどに下がっているのが分かる。
「実は消えたはずの学生達がなんの前触れもなく突然帰ってきてるらしいのよ!しかも全員誰1人欠けることもなくね!」
「え~?でもでもお、それっていいことじゃないのお?皆無事に帰ってきたってことだよねえ?それのどこがヤバイのお?」
「それがたた帰ってきただけなら一件落着だったんだけど、その帰ってきた人達の全員が消える前と消えた後とで性格がまるで別人と入れ替わったように変わって帰ってきたって話なんだよね…」
「えー!?何それえ!?なんか怖くなあい!?」
「でしょでしょ!?しかも性格が歪んでる人が良くなるとかじゃなくてほとんどの人が凶暴な性格に変わってるって話もあるんだよね!なんでも穴の下にはエイリアンとか宇宙人とかが住み着いてて、落ちた人はそいつらに自分の皮を奪われて変装してるだとか、他にも穴の下には宗教団体のアジトがあって、そいつらに無理矢理穴に引きずり込まれて意識改革されてるっていう噂が出回ってるの。それがまあ今話題の都市伝説ってやつだよ。」
「へ、へえ~…。その話がもしマジなんだったらちょっと怖いよねえ…。千尋、その話は本当にマジなの…?」
「多分マジだと思うよ…。私がTwitterでフォローしてる人達、都市伝説が好きで調べてる人が多いんだけど、その人達も実際に消えた学生達を目撃したってツイートしてたしね!」
「ていうか千尋…。あんたそんな変な人達のことフォローしてるの?やめときなよそんなの気味悪いんだから…。」
「何言ってんのよ絵里!この人達は現代の謎に包まれた都市伝説を解明しようとしている勇者なのよ!かっこいいじゃない!素敵じゃない!気持ち悪くなんかないわよ!?」
本当に何言っているんだこの2人は。今この「街の穴」の都市伝説。世間や友人は全く認めようとはしてないし、これから先信じるつもりもないだろう。でも私には分かる。この噂は「マジ」だ。そんじょそこらにはびこっている嘘くさい噂なんかとは比べ物にはならない「何か」があると私は思っている。
もちろん根拠なんか無い。強いていうならば女の勘だろうか。私もいつか彼らの仲間に入れてもらってこの都市伝説の謎を絶対解明してやるんだ!
そういえば今日はこの2人に帰り道に寄りたい所があるから付き合ってくれと言われてついてきたけど、一体何の用なんだろう?早く帰ってTwitterをチェックしたい。早く終わらせてもらおう。
そう思いながらも彼女達3人はすっかり暗くなってしまって街灯がないとあたりになにがあるか分からなくなってしまった住宅街を歩を進める。
「ねえ2人とも。今日言ってた用事ってまだなの?早く終わらせない?私そろそろ帰りたいんだけど。」
「ああ…ごめんごめん!それならこっちよ。そこの路地の先を左に曲がった所。そこでちょっと友達と会うんだ。ねっ由美子?」
「うん!そおだよお。」
2人が指差したのは1つの狭い路地。そこは住宅街の一部であるはずなのに、人の気配どころか生き物がいる気配すら感じることができない。ましてや今までここの路地に誰1人として通ったことがないのではないか。何もかもを引きずり込んでいるような。そんな不気味な雰囲気。まるでこの先には異世界に通じていて、路地の前に立っているだけで体が吸い込まれていきそうな気がした。
もちろん路地の先には灯りなど1つもなく闇が広がるだけ。
路地から不穏な空気が漂う。
なんだか気持ちが悪くなってきた。
「こんな所に友達…ってか人なんかいるとは思えないんだけど…。ほんとにここであってんの?なんかおかしくない…?」
今すぐ引き返したい。帰ってTwitterを確認するつもりだったけどそんなのもういい。すぐにベットに潜って休みたい。そんな気分だ。
「まあまあ~!細かいことは気にしない気にしない!すぐ終わるから千尋も付いてきてよお~!」
2人に背中を押され路地の中に無理矢理進んでいく。嫌だけど仕方がない。早く用事を終わらせてもらって帰ろう。
そう思いながらも闇の中を手探りでに進んでいく。
「ね、ねえ2人とも…なんか怖いんだけど…本当に友達なんかいるの?」
「心配しないでも大丈夫だってばあ。ていうかなんならもう着いたし。」
そう言ってたどり着いた場所は暗くてよく見えなかった。しかしだんだんと目が暗闇になれてきて視界が広がっていく。
そして見えた物に目を疑った。というよりいきなりすぎて頭が回らない。思考もまとまらない。
なんなのよこれは。
「あれー?どうしたの千尋ぉ…。そんなに驚くほどのものでもないでしょお?だってこれはぁ…あなたがずっと探してたものだよお?」
「え…でも…それをなんであなたたちが知ってる…?え…?はははっ!はははははっ?全然訳わかんない…」
頭が混乱して何を考えたらいいのか、今自分が何をすべきなのかなのかが全く分からなくなる。
目の前で起こっている事、存在しているものが非現実的すぎて自分の脳が追いつかない。何かを言おうとするが恐怖からか困惑からなのか、言葉が喉につまって何も出てこない。
「あははは。もしかして予想外すぎて言葉にならない感じなのかなあ?」
「あんたたちさっきから何言ってんの―――」
言葉が出せることに気がつき、2人を問い詰めようとした瞬間背中に強い衝撃。それと同時に前へと押される。
「痛ッ…!!何なのいったい…!」
激痛を覚えながらなんとか後ろを向く。
視界が暗くて顔は見えないがもう一人誰かがいる。そいつが後ろから襲った犯人だろう。
遠のく意識の中声が聞こえる。
「あーあ。不用意に調べなかったらこんなことにならなかったのにね。千尋。あんた近づきすぎだよ。世の中には謎のままにしといた方がいいことが山のようにあるんだ…。ほんとバカだよね。」
「まあいーんじゃなーい?最後に自分の夢が叶ったんだからこの子も本望でしょお」
「まあ安心しなさい。これからは私が『千尋』として生きたげるからさ」
最後に聞こえた声は聞き覚えのある―――自分の声だった。
闇は全てを飲み込む。例え世間に見せることができないものだろうとなんだろうとお構いなしに。
そう、それが例え人だったとしても。
今日も街は闇へと包まれていく―――
初めてで読みにくいかもしれませんが頑張ります。
面白い展開になるよう努力いたしますのでどうかよろしくお願いします!