母ちゃん、もうキツイ 1
非常に唐突だが僕は父親のコネをフルに使って高校進学に成功した。
のだけど、その高校は実家から通えないので3年間下宿させてもらう運びとなった。
もちろん、それは『条件』を承諾したからだ。
目的地に到着し、改札を通り抜けたところで渡された下宿先の番号に電話をかける。
「トゥルルルル...もしもしボス?ドッピオです」
『HAA!HAAA!YEAHHHHH!COME OOOOOOOON!』
ガチャ ツーツー...
どうしよう、めちゃくちゃ怖かったから通話切っちゃったよ
番号間違えたか、そんなはずはない
どこをどう間違えたら開口一番にUSA風に高笑いしているようなイカレたパーティ会場に繋がるんだ。
おそるおそる、もう一度確かめながらかけ直す
『もしもし、ごめんなさいね。どちら様でしょうか』
「あ、ひゃひゃいいい!さいとおゆうすけと言います!」
焦った僕の声は裏返っていた...殺せ、ひと思いに僕を殺してくれ
『あ、今日からうちで下宿する子ね』
『もう着いたんだーじゃあ今から迎えに行くから駅周辺のお店で時間潰して待っててくれるかな』
椎名林檎をもちょっと大人にした感じの声だったんですけど
と、ここで時間をつぶすため僕は何をするか考えた...考えに考えた...そうだ!
『エロ本を買おう』
そこからの行動は早かった。
僕の頭は棋士さながらに右脳と左脳をフル回転させこの見知らぬ土地を把握する。全国に点在する某成人専門の武将系書店がこんなとこにはないことを理解し、だいたいの駅にはあるTSUTAYAなどのチェーン店を拒否、2分も立たないうちにベストであると考えうるブックセンターにたどり着いた。
だが、もちろん中規模のこんなこじゃれたお洒落で専門書にも可愛らしいポップがついてるようなスイーツ御用達な雰囲気のこの店で過激なエロ本が手に入るなどとも思っていなかった。
そもそもよく考えたら僕はまだ15歳で成人雑誌専門店なんかいけばたちどころに追い出されてしまう。
ツカツカと店内を闊歩し、まっすぐと店の奥に申し訳程度に存在するグラビア雑誌コーナーへと向かい、『君に決めた!』と即決で2冊のエロ本を手にしたのだった。
「ここまで来たんやさかい、ただでは帰らへんで~」
地元が関西なわけではないのだが、急に漫画みたいな関西弁を使いたくなるのも思春期だからということで許してもらいたい。
しかも恥ずかしさから、入店したときとはうって変わってそそくさとレジへと向かう僕。色々とゴキブリみたいだ。
「すみませーん」
声をかけてみたが、レジには誰もいなかった。
「あ、今行きまーす」
店員さんが小走りで向かってきて一安心
店員さんは、女子高生だった。
oh, my god.
さようなら、僕のアイデンティティ