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祝言の日、同心小町の花嫁姿を一目見ようと大勢の見物人が八丁堀に集まっていた。
「きれいだねぇ。」
「この世のものとは思えねぇ。」
「立田の旦那、羨ましいねぇ。」
皆それぞれに感想を言い合った。雪乃は馬上で少し俯いていた。
雪乃の花嫁行列が立田家に到着する。お勝が目を細めて出迎えた。
しつらえられた金屏風の前に文吾と雪乃は並んで座る。
文吾は、いつも綺麗だが、いつにも増して美しい雪乃を見てにっこりと笑う。
雪乃はすでに目に涙をためていた。
「雪乃ちゃん、泣いたら化粧が取れちまうよ。」
お勝がうれしげに言う。
「やぁ、文吾。こんなに美しい妻を娶ったら、もう女遊びはしまいにしないとな。」
文吾の叔父の采女が酔った赤い顔で言った。
「もちろんですとも、叔父上。」
文吾は請け合った。
「ほんとかねぇ。もし密通でもしたら雪乃ちゃんが許しても、私が承知しないよ。」
お勝が怖い顔をして言った。
「良かった、本当に良かった・・・。」
俊也は涙ぐみながら盃をなめている。
宴も終わり、やっと二人きりになった。
雪乃は目を赤くしている。
「また泣いたのか?お前は泣き虫だな。」
文吾が笑うと、
「どうしてずっと会ってくださらなかったんですか?私、文吾さまにお会いしたくて、でも女の方から会いたいからって会いに行くわけにいかないじゃないですか。」
雪乃は頬をふくらませた。
文吾は雪乃の手を引いて抱き寄せた。
「悪かった。でもこれからはずっと一緒だ。な?それでいいだろ?」
文吾は雪乃の口をそっと吸った。そうしながら雪乃の夜着を慣れた手つきで脱がせる。
「あっ。灯りを消してください。」
「灯りは消さねぇ。」
「えっ?」
右手で胸を左手で下腹部を隠そうとする手を掴んで、文吾は雪乃を夜具に押し倒す。
「恥ずかしゅうございます。」
「今日から俺たちは夫婦なんだぜ。恥ずかしがるこたぁねぇ。」
文吾は巧みに雪乃の全身を愛撫した。
雪乃は息を弾ませながらあらぬ声をださぬよう、両手で口を押える。
男女の営みとはこんなに恥ずかしいことまでするのかと、雪乃は驚いていた。
そして雪乃は生まれて初めて絶頂に達していた。
(これ、なんですの・・・?)
「気をやったな?」
文吾がにこっと笑う。
「気を・・・?」
「女の歓びを知ったってことさ。」
とうとう二人は結ばれた。
雪乃は痛みを覚えたがうれしい気持ちの方が大きかった。
「文吾さま・・・。」
雪乃はまた泣いてしまった。
ことが終わった後、
「痛かったろ?でもそのうち痛くなくなるからな。」
文吾は雪乃を抱きしめた。
雪乃はそのたくましい胸に抱かれうっとりとした。
「文吾さまと私、結ばれたんですね?」
「ああ。」
「うれしい・・・。」
雪乃の目から涙が零れ落ちる。
「また泣く。しょうがねぇなぁ。」
文吾は雪乃の涙を指で拭ってやり、二人は唇を重ねた。