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江戸の春  作者: 井上はあ
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数日後、非番だったので、文吾は役宅の自室で書物を読んでいた。そこへ、

「文吾!文吾!」

と大声で呼ばれ、文吾は呆れ顔で振り向いた。

「何事ですか。母上。騒々しい。」

見ると、母親のお勝が瓦版を手に満面の笑みである。

「お前っ。よくやった!」

「はぁ?」

「これを見な。」

お勝は、水茶屋の看板娘だったが、五年前の流行り病で亡くなった、文吾の父に見初められて立田家に嫁入りしたのだった。そのためかちょっと乱暴な口のきき方をする。

差し出された瓦版には

(同心小町の恋。思い人は南町の与力立田某。)

などと書いてある。雪乃は小町娘として江戸で有名なのだった。

「これ、お前のことだろ?南町の与力に立田なんて、お前だけだろ?噂によれば器量だけじゃなくて、気立ても大層いい娘みたいじゃないか。お前、この娘をお貰い。」

「お貰いって、俺が妻をめとる気はないと、母上だってご承知でしょうに。」

「お前そんなこと言ってると、あっちの方だと噂されるよ。」

お勝は右手を左の頬に充てる仕草をした。

「大丈夫ですよ。しょっちゅう女と遊んでるんですから。」

「お前、まさかあのことで自棄やけになってるんじゃないだろうね?藪の言うことなんかあてにならないよ。」

文吾は黙り込んだ。

お勝は顔を知りもしない雪乃を気に入ったと言う。文吾だって、雪乃を憎からず思っている。

しかしどうしようもないのだ。


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