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エンジェル  作者: takayuki
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9話 冷静になりたいから、離れてて!

【9話】冷静になりたいから、離れてて!


「させるか!!させるものかー!」


その声もまるで水の中から聞えてくるようにこもった音をしていて、聞きずらかったけど、そう叫んでいることが分かった。前回では、ただ目で見ただけだったけど、今回は音まで聞こえてくる。視覚しかく聴覚ちょうかくがあわさった事と前は20mも離れたところから、見ていたからよかったけど、今はほんの2mまで迫ってきてるから何もできない、わたしは恐怖で震えるしかなかった・・・。黒い影は、ガブに近づく前にガードレールをまるで粘土のように曲げむしり取り、それをつかってガブに何度も打ちつけた。そのガードレールのまわりにも黒いもやが囲み霊体のように触れないガブの体にも当たるようになったようだ。


ガン!ガン!ガン!


でも、ガブの体までは届いていないようだった。ガブの5cmほどの周りに何かあるようで、それが陰の衝撃しょうげきを跳ね返していた。影が打ちつけた部分が、白い水の波紋のように、揺れ動いた。

ガブが、手を出し払いのけると、影が持っていたそのガードレールを堤防の硬いコンクリートに突き刺さった。そして、ガブが左手で影をつかみ左から右へと軽く振りぬくと、影はものすごい勢いで回転をはじめた。影がとっさに掴んだガードレールも不自然に折れ曲がった。おもちゃのヘリコプターのように、影は50cmほど浮いていた体が、さらにゆっくりと上がっていき2mほどまでいくとピタっと止まった。そして、影が花に向かって何かを言いかけた時、ガブは背中の羽を大きく広げ、その影をまるで蚊を叩くように、挟みこんだ。その羽の周りにもガブの体をまもっていた光の波紋はもんがあり、それによって影は一瞬で、風船が割れるように消し飛んだ。ガブは、花のほうへ振り向き、ゆっくりと花に口から、ふぅーと風を吹きかけると花の世界は元へ戻った。


突然の出来事に言葉を失っていた。


≪花ちゃん。大丈夫?≫


≪一体なに・・・影・・・宙に浮いてる・・・ガードレール・・そう!ガードレール≫


花は混乱しながらもガードレールがどうなっているのかを確認した。前のように、さっき壊れたはずのガードレールは、最初と変わらずに綺麗なままだった。花は、目をパチパチさせながら最後に、目をぎゅーっと強くつぶった。そして、起きあがりガブの存在がないように、自転車に乗って走り出した。ふうりがいないことも不思議に思わずに。


しばらくして、混乱がおさまったのか、花はガブに質問した。


「あれは一体なに?」


≪悪霊だよ。≫


「どうして、わたしをおそおうとするの?」


≪花ちゃんというより、今はぼくに向かってきてるんだね≫


 反対方向から、自転車が走ってきた。花は冷静に、テレパを使った。


≪どうして、ガブを狙ってるの?≫


≪悪魔はね。どれだけ人間を“ある方”から離そうとするのかを生きがいにしてるんだ。天使は逆に、“ある方”からの命令で人間の為に存在してるんだね。悪魔からすれば、天使は邪魔物なんだね。≫


≪ガブは大丈夫なの?≫


≪ぼくはね。天使の中でも大三天使と言われる天使なんだ。天使たちの多くはぼくにいてきてくれるほどほどなんだ。≫


≪それは、何度も聞いたわよ!≫


ガブは、少し悲しい顔になって花の横を飛びながら話す。


≪闇は光には絶対に勝てないんだよ。光を消す為には、闇では消せないんだね。何か物体を間に挟まない限り、光の中に闇は存在することすら出来ないんだよ。≫


≪うーん・・・。よくわからないけど、悪霊が来ても大丈夫ってことなんだね?≫


≪ぼくが悪霊に負けるわけないじゃないか。ぼくは大三天使という・・≫


≪ああー!もうそれいいから!・・・あと、ちょっとひとりで考えたいから少し離れててよ。≫


花は、いつも通りに家に帰り、リビングのテレビをつけて、JKエンジェルの出ているアイドル番組を見始めた。


【JKエンジェルは、背中に小さい羽を付けた国民的アイドルで、(青)ランちゃん・(赤)えっちゃん・(ピンク)トマジー・(黄)しょうちゃんの4人グループ。ピンクのトマジーだけが、何故かお笑いに走ってる。毎週金曜日の19時からは、“こんにちは、アイドル”という番組でJKエンジェルが司会やゲームなどのMCをする。】


花は、JKエンジェルの音楽とダンスにあわせて、リビングで踊り始めた。お母さんはそんな花をみて笑いながら、料理を作っていた。すると、お父さんが、


「31チャンネル」


と、言うとテレビの番組が切り替わって、“キング”という番組に変わってしまった。花は、立ち尽くした。


「お父さん!!やめてよ!」


お父さんは、花をあしらうように、目を細くし、にくらしい顔を横に何度も振った。花も負けずに、歯を出してイーっとした。


【“キング”という番組は、色々な話題について専門家が集まって討論を繰り広げるという番組で、視聴者しちょうしゃ得票数とくひょうすうによって、その時の討論の勝敗を決める対戦型たいせんがた討論番組とうろんばんぐみ。今ジパングで一番人気のある番組で、キングは、人気占い師の太木一子ふとぎかずこ。その重厚な雰囲気と生きてきた知識を使って、対戦者を倒してきた。今回の討論の内容は、どうして学校教師には、犯罪者に走る人が多いのかという物だった。ラストの20分は、太木一子ふとぎかずこが色々な芸能人の人生相談にのって終わるという番組が“キング”だった。お父さんもキングが好きだった。】


花は、夕食を済ませお風呂に入り、部屋に戻るとパソコンを開いて、ネットでJKエンジェルの音楽映像をみながら、踊り勉強もせずに寝ようとした。

そして、花は思った。


≪そういえば、今朝の子猫はもうダンボールごといなくなっていたな・・・≫

ガブは、寝る花を何も言わずに離れて見守りながら、また小さく歌を歌っていた。今回は、寝静まっていたので、花にも内容が聴こえた。その歌は、「かごめかごめ」だった。


【9話】完


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