8話 いない!いない!ガブなんていない!
【8話】いない!いない!ガブなんていない!
【不思議サークルで、あのヒロシの家の喫茶店に集まった花とふうりだったけど、なれない話の中で話題はやっぱりこのくらーいくらーい喫茶店から連想されたお化けの話。そんな中、わたしは幽霊がいるとおもうのか?と質問されたけど、天使のガブリエルを見ながら、聞かれたわけで・・・。わたしは、いるとおもうかな?・・・って自然にいっちゃった。その理由を聞かれても仕方ないでしょ;。目の前に天使がいるんだから・・・。でも、みんなには天使がいるからなんて絶対に言えないし、言いたくない・・・。】
「花ちゃんは、どうして幽霊がいるとおもうの?」
「だ・・・だって・・・」
≪こ・・こまった>< なんて言おう・・・≫
「目に見えないからって、いないとは限らないかな・・・みたいな・・・」
麗は、そんな花の言葉を聞いて、笑顔で言った。
「花ちゃんは、面白いよね。」
「そ・・そう?・・・」
「うん。おれは自分と違う考え方をしてる子をみると、楽しく思えるんだ。」
花は、麗の目がほんとうに素直に、花を見ていて、その綺麗な顔と声から出る言葉が自分に向けられ、しかも、花のこと興味を持ってくれたように思えて、うれしさから顔が火照った。花も麗に聞いてみた。
「もし・・・もしもの話だけど・・・幽霊とか見えちゃってる人がいたとして、理屈は分からないけど、そういう人は見えてるから、いるって信じるよね?」
麗は少し考えてから答えた。
「うーん。でも、その状態だったとしても、それはその人の精神状態が不安定だったり、光の屈折で見えるんじゃないかな?特に、テレビで出てくる霊媒師みたいなのは、おれは信じないかな。」
花は、ガブリエルを見た。ガブは、さっきと同じ体操座りのように隅に座っていて、その羽も小さく折りたたまれてる。上半身は、ほとんど裸で髪の毛は白のような銀色のようだった。
≪ガブは、もしかしたらわたしの作りだした想像なのかもしれい・・・。≫
花はそうおもって、自分の目を擦ってみたけど、ガブの姿はそのままだった。花は、麗に聞いてみた。
「その見える人って、自分が不安定だって気づいてるのかな?」
「うーん。たぶん、本人は気付いてないんじゃない?自分は正常だって、普通みんな思ってるんじゃない?」
≪やっぱりそうだ・・・ガブは、わたしの頭の中の想像なんだ・・・!わたし病気かも・・・。≫
≪ぼくは、幻じゃないよ。花ちゃん。≫
≪ああ・・・。また、声も聞える・・・。わたし・・・相当やばいかも・・≫
ガブは、両手を胸で組みながら、仕方ないなーという顔で話した。
≪じゃー。麗くんに、スフィンクスの高さは40キュビットで、長さは152キュビットかどうか、聞いてごらん。≫
花は、スフィンクスのことは知ってたけど、キュビットって何なのか分からなかった。でも、麗におそるおそる聞いてみた。
「スフィンクスの高さは40キュビット、長さは152キュビットなの?」
「え!?・・えーっと・・・キュービットのことだね。」
麗は、テーブルに置いてあったナフキンに自分のペンで計算をはじめた。
「うん。そうだよ。花ちゃん。40キュービットと152キュービットだよ。」
ヒロシが聞いた。
「キュービットってなんだ?」
「キュービットっていうのは、古代文明で使われていた測り方で、今で言うとmだね。腕の肘から手首までの長さを1キュービットにしてるんだ。でもどうしてか、昔のひとのキュービットは、長いんだよね。それで計算すると花ちゃんの言っていた長さ通りだね。」
≪わたしが、スフィンクスの高さと長さを知ってるわけがない。それに、キュビットが何なのかも知らなかった。自分が知らない事を頭で想像してる天使が知ってるのかな・・・≫
その天使がテレパった。
≪頭にない事をとっさに、想像できるわけないよ。花ちゃん。ぼくはちゃんと目の前にいるよ。≫
麗は、そんな質問をする花になおさら興味を持ったように、その目を向けた。花にさらに話しかけようとした。
そんな時に、ふうりがいつもとは違う大きなっと、いっても普通の音量で少し前の話を戻してきた。
「わたしも幽霊いるとおもう!」
横から話に入ってきた、ふうりの言葉にすこし間があいた。
「えと・・・それは・・ふうりちゃんは、どうしていると思うの?」
麗は、ふうりの気持ちも考えながら優しく聞いた。
「それはわからないけど・・・なんとなくいる気がするの」
「なるほどね。でも、考えることや想像することは、自由だからいいだろうけど、なんとなくと感じたことにも何か理由がある気が僕はするんだ。その理由を追及していきたいからこの不思議サークルを作ったんだ。ふうりちゃんのその何となくの理由が少しでも分かったら教えてね。」
ふうりは、明るい雰囲気で答えた。
「うん。」
そんなタイミングで、喫茶店のドアが開いて大勢が入ってくる気配がした。数人の1年生の女の子と同級生の男の子たちだった。たぶん、部活で遅れて来た不思議サークルの人たちだ。花は、このテーブルの席と隣のテーブルの席を数えて、たぶん座れないだろうと思った。
「あ。わたし今日は、これで帰るね。」
「え!帰えるの?」
「うん。だって、今日は少しだけ見ようと思ってただけだったし、みんなが座れないと、話し進まないだろうから。」
ふうりも、花がいなくなるならと一緒に帰ることにした。
「じゃー。花たちがいなくなるなら、おれも」
と、なぜかヒロシも便乗しようとしてきたから花は言った。
「なんで、あんたがいなくなるよ!あんたがいなくなったらみんな喫茶店に居ずらくなるでしょ。」
ヒロシは、少し悲しそうに席に座りなおした。
「いくらになりますか?」
花がヒロシのお母さんに聞いた。
「いいのよ。ヒロシのともだちなら無料だから。」
「いえ。一杯ぐらいのコーヒー代は払います。」
ヒロシの母は少しこまった顔で
「そう?じゃー360エンポイントになります。」
花はうれしそうに携帯を出して会計をすませた。
花とふうりは、ふたりで20分の道のりを自転車で帰った。海岸線沿いを走らせるが、いつも暗くなった時に見る海は真っ暗で底がないように思える。何かを連想させるからか分からないけど、なぜか夜の海は冷たく感じる。そんな時、急に突風が襲った。
ゴォォォー!
花はあまりの風にバランスを崩し、なんとかブレーキをかけてスピードを落とせたが、転んでしまった。不思議なことに、ふうりは気付かずにそのまま走り去ってしまった。すると、ガブリエルが倒れた花の目と耳に手を当てると、花の目の前には前以上に巨大な黒い影が圧迫感を放ちながら宙に浮いていた。そして、叫んでいた。
「させるか!!させるものかー!」
【8話】完