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彼女の裏事情  作者: CORK
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第14話

 今回登場する新キャラクター『鈴四花』ちゃんの原案は『万事粉砕! ねこはんま〜!』などの作者、烏丸先生です! 烏丸先生、本当にありがとうございます!

 作中で鈴四花ちゃんは相当ないじられ役になっております。人様から預かったキャラクターなのに。

 烏丸先生、訴訟を起こす前に連絡をいただけたら助かります、はい。

「は? 豊南高校? 2年D組?」

 これはあたしの言葉。意外に思われるかもしれないけど、会話の相手は刃だ。

 前回の格闘の後、あたし達はどうせ暇だってことで、朱里も含めた3人でカフェに来たのだ。

 いつの間にか刃とも意気投合してしまっているあたしたちだった。

 ちなみに、さっきのあたしの台詞の意味は──って、そうだった! 忘れてた!

 刃は、何とあたし達と同じ豊南高校に通う、あたし達と同じ学年の生徒だと言うのだ。

「しかも、沙耶ちゃん☆ D組って、あっちんと同じクラスじゃない? 知ってる? 玉山新」

 そうなのだ。新は2年D組の生徒。つまり、刃と新は同級生ということだった。

「ああ、変人玉山だろ。知ってるぜ。一応メルアドも交換したしな。たまに遊んだりするし」

 たまに遊んだりする相手のことを躊躇いもなく変人呼ばわりってのはどうなんだろう。

 まあ、たまに遊んだりするからこそ叩ける軽口なのかもしれない。

「だから、沙耶のことも知ってたんだよ。新と話してるとたまに名前が出てくるからな」

 ……何となく、本当に何となくだけど、嫌な予感がした。

「……ちなみに、新のやつ、あたしのこと何て?」

「あぁ、見た目は可愛くて人前では猫被ってるけど、案外すぐボロが出る上に結構ドジで、怒らせるとヤクザより恐い狂暴腹黒女だって」

 ……。

 予感的中、である。

「刃。新はああ見えて虚言癖がある上に女教師好きで巨乳フェチな変態だから、アイツの言うことは信じないように」

「……どこまで信じていいんだかな」

「うん☆ 全部ホントだよっ♪」

 朱里の言葉に少し困ったように頭をポリポリと掻く刃。本当は大半が嘘、というか殆んど全てが既製事実である。



 そんな馬鹿な会話に花を咲かせていると、どこからかコンコンとガラスを叩くような音が聞こえた。

 そちらの方に目をやると、大きなガラス窓の向こうに見知った顔があるのを見つけた。

 あたしが手招きすると、彼女は嬉しそうに微笑みながらカフェの中に入ってきた。

「沙耶ちゃん! こんなトコロで会えるなんて、奇遇アル」

 ニッコリと可愛らしい笑みを浮かべる彼女。


「沙耶。……誰?」

 紹介を促す刃の声。強烈なキャラクターの登場に少し戸惑っているようだ。

「ああ、紹介するね。彼女の名前はリン、スウカ。風鈴の鈴に数字の四、それに花粉の花で鈴四花ちゃん。口調で分かる通り在日中国人で、今は日本に留学に来てるの」

「ちなみにわたしと沙耶ちゃんのクラスメイトだよっ☆」

「スゥって呼んでほしいアル! よろしくアル!」

 あたしと朱里に紹介されたのを受けて、人懐っこい笑みで自己紹介をするスゥ。

「……ああ、魁堂刃だ。よろしく。しかし絵に描いたような中国人口調だな……」

 刃はスゥのことを、さも珍しいものでも見ているかのように眺める。

 まあ、語尾にアルをつけて喋る中国人が本当に目の前にいたら、珍しくない訳がないけどね、実際。

「何を言ってるアルか? ニッポンではアルを語尾につけて喋らないと、在日中国人はタイホされてしまうアル! 刃は、ニッポンジンのクセにそんなコトも知らないアルか」

 当然のような顔でそう主張するスゥに、完全に困惑しきってしまっている刃。

 そんな彼を横目に、あたしはスゥに笑顔で話しかけた。

「そうだよ、スゥ。日本では在日中国人は語尾にアルをつけて喋らないと禁固刑にされるからね」

「ほらアル! 沙耶ちゃんが教えてくれたアル! 刃はもう少しニッポンのホーリツをベンキョーした方がいいアル」

 お前が日本の法律を勉強しろ、と思いながら、あたしは内心の笑いを噛み殺すのに必死だった。

 んもう、スゥったら。IQ低いぞ、お・バ・カ・さん。

「……なるほど、そう言うことな。可哀想に」

 全てを理解したように小さく頷く刃。あたしは刃に

「余計なことは言わない方が身のためだよ」

という意味の激しくプリチーな視線を送った。

「うわ、なんか今、体に悪寒が」

 そう言って小さく身震いをする刃。あたしは短く、気のせいよ、とだけ彼に伝えた。


 スゥは口調こそモロに中国人だが、服装や見た目はそこら辺の日本人と何ら変わりはない。

 髪の毛をお団子にしてまとめていることもなければ、チャイナ服を着ている訳でもない。頭頂部は禿げているのに何故か後ろは長い三つ編みということもなければ、ラーメンを食べながら自転車に乗ってキョ○シーと戦ったりもしない(偏見120%)。

 まあ、例によってスゥも可愛いけどね。あたしの周りって可愛い子多いのよね。

 まあそこはほら、なんて言うか、類は友を呼ぶってやつ?

 今え〜って思った人、出て来なさい。今なら特別に紐なしバンジーで勘弁してあげるから。

 別名飛び降り自殺とも言うんだけど。


 そんな彼女の今日の服装はファーのついた暖かそうな白いダウンに、ピンク色のタートルネック。首からはクロスのネックレスを下げ、それに黒いショートパンツとストッキングを合わせていた。

 髪型は、ウルフって言えばいいのかな?

 トップが短めに立ち上がったメリハリのついた感じのミディアムヘアーで、サイドと襟足は肩につくかつかないかくらい。

 元気な彼女によく似合った髪型である。


「あれ? 朱里ちゃん、どうしたアル? ケガしてるみたいアル」

 その時、スゥが朱里のケガに気付いた。

 まずい。この子は昔っから早トチリが癖で、そのせいでいらない事態を巻き起こすことが頻繁にあった。

「ああ、その怪我は俺が」

「刃! アナタアルか! 女の子を殴るなんてサイテーアル! おとなしくお縄をチョーダイするアル!」

 遅かった。スゥは完全に暴走を始めた。

「いや、そうじゃなくて、俺が」

「問答無用アル! お国のお母さんは泣いているぞアル! 覚悟するアルよ!」

「こらっ」

 そう言ってスゥにチョップを喰らわせる朱里。スゥはキョトンとした表情を浮かべた。

「いい、アルアル探検隊っ? 刃ちゃんは不良グループにやられてたわたしを助けてくれたんだからねっ」

「アルアル探検隊はヒドイアル! ワタシはそんなに不細工じゃ……って、え? 何アルか?」

 ようやく自分の暴走に気付いた様子のスゥ。次第に彼女の頬が紅潮していく。

「ま、また早トチリをしてしまったアル! 刃、申し訳ないアル! この上は腹を切ってお詫びするアル」

「いいって。つーかヤメロ」

 そう言って苦笑いを浮かべる刃。

「腹切って詫びなんて、今日び日本人でも言わねぇぞ」

 至極もっともなツッコミを入れる刃。

 うん、あたしもそう思う。

 スゥは昔から変なところで日本びいきである。今みたいに切腹に対して

「カッコいいアル! 武士道とは死ぬことと見つけたりアル!」

とか言って感銘を受けていたり、尊敬する人物が坂本竜馬と千利休だったり、彼女の誕生日に冗談でチョンマゲのカツラを贈ったら本気で喜ばれたり、スゥの好きな言葉は? って訊いたら笑顔で『刀狩りアル』って答えられたり。

 日本人よりもよっぽど日本びいきな中国人が彼女なのである。

 まあ、それなら簡単な法律くらい知っておくべきだとは思うけど、どうも彼女の興味をひくものは戦国時代以前に多くあるらしい。


「沙耶。お前の友達って、面白いヤツ多いのな」

 刃は苦笑いだ。あたしもつられて苦笑いを浮かべる。

「面白いとは何アル! ただちょっとだけ頭が可哀想なだけアル!」

 あたし達の会話が気に障ったのか、とても自己弁護とは思えない自己弁護をするスゥ。なんと言うか、脳みそがツルツルな娘である。

「そうそうっ☆ スゥはただ単に脳みそがタルタルソースと同じ材料で出来てるだけだもんね?」

「そうアル! ワタシはただ単におおみそかがダルダルジョーズと同じ愛称で出来てるだけアル!」

「うんもう訳分かんねぇ。あと誤解してるようだけど朱里は別にお前のフォローしてるわけじゃないから」

「刃ちゃん、可哀想だよっ! スゥは脳みそがツルツルだから気付かないんだもんね〜♪」

「そうアル! 恐れいったアルか!」

「うんまあ色んな意味で。あと誤解してるようだけど朱里は別にお前のフォローしてるわけじゃないから」

 この状況を無邪気に楽しんでチャチャを入れる朱里と、ボケ倒しまくりのスゥ。そしてさらにそれに鋭いツッコミを入れる刃。

 まるで漫才か何かを見ているようだ。

 朱里の腹黒さとスゥのボケ倒し癖は知っていたけど、地味に刃にはツッコミ癖があるようだ。いいね〜、ツッコミがいてくれると助かるよ。

 ていうか単純に作者が書いていて楽しいらしいので、しばらくこの漫才もどきをご笑覧ください。どれが誰のセリフかは口調でご判断いただければ幸いです。あたしは一言も口を挟まないので。

 興味のない方は下まで飛ばしちゃえば? ま、見たい人は見れば? すいませんでした本当は見ていただきたいです私めは格好をつけておりました。

 え〜、それではご覧くださいませ。



「へへ〜っアル、やっぱりワタシは脳みそがツルツルなだけあって天才アルね」

「うん、いっそ公害だな」

「やめなよっ、刃ちゃんっ☆ こう見えてもスゥは意外とデリケートなんだからっ☆」

「そうアル! こう見えてもワタシは死体とマジデートアル!」

「すごい恐怖体験だな。意外とデリケートな?」

「そ、そうアル! こう見えてもワタシは死骸のバリケードアル!」

「わざと言ってんだろお前」

「刃ちゃんひどいっ☆ スゥにそんな脳みそあるワケないじゃないっ」

「そうアルよ! ワタシの脳みそはツルツルで、それはそれは綺麗アル!」

「朱里の方がひでぇよ。つーかお前も自分の主要器官を見せ物みたいに言うな」

「も、もう怒ったアル! ワタシ怒るととても怖いアルよ」

「何でそこでキレるんだよ」

「当たり前でしょっ☆ 女の子が自分の脳みそをバカにされて黙っていられるワケないじゃないっ」

「そっか、そうだよな。ごめん。脳みそは女の命だもんな、ってバカ! そんな気持ち悪い自己主張あるか! つーか脳みそ脳みそって連呼すんな気分悪い」



 あたしはしばらく大笑いしながら聞いていたんだけど、なんか長時間聞いていて食傷気味になってきた気がするのは気のせいだろうか。

 延々漫才もどきを続けたんじゃ読者も納得しないだろうし、そろそろ止めないと多分読者からクレームがくる。まさか皆さんがここまで暴走なさるとは思いませんでした。

 スゥにしたって、登場一話目にして読者に飽きられるのは本意ではないだろう。

 なんか、タイトル通り裏事情の話が多くなってきた気がするけど、そこもスルーでお願いします。

 とにかく、あたしはそろそろ3人を止めることにした。

「はいはいそこまで。ここ、公衆の面前だから、騒ぐのはやめてね」

「そうアル! ここは幼虫の宣伝アル! 騒ぐのはやめるアル」

「黙れチャイニーズ。殺すぞ」

「……調子こいてすいませんでした」

 あたしの威圧に対して、思いっきり標準語で謝るスゥ。

 元々あたしに捏造されたキャラクターなのだから、仕方ないと言えば仕方ない。

「ホントにこの脳みそツルツルチャイナ娘はっ☆ 干物にして食べちゃうぞっ?」

「お前も黙れ妄想中毒小娘。社会的に抹殺するぞ」

「……誠に申し訳ありませんでした」

 珍しくしおらしい態度で素直に謝る朱里。まるであたしが怖い人みたいじゃない。もう、プンプン。うわキモっ。

「ったく、あんた達が騒ぐから注目浴びちゃってるじゃない」

「沙耶の暴言も原因のひとつだと思うぜ?」

「う、うっさいわねっ。とにかくさっさと会計済ませてここ出るわよっ」

 話を続けるとキリがないので、あたしは半ば強引に話を終わらせて席を立つように皆を促す。

 店の外で、不吉な黒い影があたし達を待ち構えているとも知らずに。



※※※※※※※※※※※※※※※※※


◇有村沙耶の裏事情ファイル・その14◇


・威圧感◎。

 読者の皆さんや協力していただいている皆さん、評価や感想をくださる皆さんには本当に感謝感謝でございます。

 皆さんには本当に多大な力をいただいています。感謝の言葉もありません。

 ちなみに、今回の話は前後編となっております。後編も見ていただけたら幸いです。

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