表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/83

【毒殺事件編】姿を現した200年前の猫族の王エーレントと冷たくなったリヒト

挿絵(By みてみん)


僕は大神殿の祭壇に急いだ。


大神殿の祭壇には、天窓の緩い星明りだけが差し込んでいる。


僕は、そこに掲げられている石板を見上げ、

東90度に埋め込まれている神兎の赤い石と、

自分の刻印の両方に手をかざした。


しばらくすると、僕の頭に、直接、声が聞こえる。


「こんばんは。大王様。

今、良い子は寝ているお時間なんですよ。」


「聞け。

今、リヒトさんが危篤だ。」


「ハァ!?あの猫族(フェリス)が危篤?

なんで?」


やはり、食いついてくる。

本当のユーリなら、こんな反応はしないはずだ。


「毒の可能性が高い。

とにかく、リヒトさんは虫の息だ。

意識はない。

もって三日だ。」


「…シリウス様……僕なんかに直接連絡して、何をしてほしいわけ?」


「助けてほしい。リヒトさんを。」


「…僕が、野蛮な猫族(フェリス)なんか助けるわけ…」


「お前が猫族(フェリス)だからだ。」


「僕は、神兎のユーリ…」


「お前は、もう、ユーリではない。


お前は…【エーレント】だ。


200年前に、テレシウスに処刑された猫族(フェリス)の王だ。」


「…なんで、そう思うわけ?」


「リヒトさんが調査したんだ。

でも、詳しく話す時間はない。


今は、リヒトさんだ。


僕は、強力な治癒の神通力を持っている。

猫族(フェリス)の秘儀に、一時的に神鼠の神通力を猫族に通すものがあるだろう?


今、その秘儀を使って、リヒトさんに神鼠の神通力を通すようにしてもらいたい。

助けてくれ。

リヒトさんを。」


「へェ…よく知ってるねェ…

僕がエーレントだとしても、

なんで同族の女一匹を、わざわざ助けなきゃいけないわけ?」


「お前は、猫の天神(フェリステンプル)で、

ロベルトを使って、リヒトさんを襲おうとしただろう。


お前が、なぜ今、

ユーリに憑りついて復活し、

何をどう企んでいるか、

僕にもまだ、全部分からない。


でも、お前は、誘拐したリヒトさんを気に入ったんだろう?


今、リヒトさんを助ければ、

お前の計画が成功して、

猫族を復活させる暁にお前の伴侶にできるかもしれない。

そうすれば、純血種を増やすこともできる。」


「フゥゥゥゥン…イイねェ…

その頭の回転と器の大きさ…


秘儀【空間旅行(ラウムライゼ)】」


その声と同時に、

大神殿の祭壇に、黒い大きな渦が出現した。


僕は思わず吹き飛ばされそうになる。


その黒い渦の中からゆっくりと…

神兎ユーリの姿をしたエーレントが現れた。


「ハイ、正解。

俺は、200年前に神鼠(アンタら)に殺戮された猫族(フェリス)の王、

エーレントだ。」


美しいルビー色だったユーリの瞳は、

燃えるような夕日色に輝いている。


僕は、妖精のようなユーリの顔を…

今はユーリではなくなった、その顔を見て、拳を固く握りしめた。


黒い渦が一気に収束する。

と、そこは、祭壇ではなくリヒトさんの枕元だった。なんという恐るべき秘儀なのか。


僕は急いでリヒトさんの首に手を当てる。


「生きている!」


僕は、エーレントを向いた。


「この状態だ。」


「フゥゥゥ――ン…

…マズいね。」


エーレントは僕を押しのけて、リヒトさんの枕元に立った。

彼女の瞼を開けて瞳孔を覗き、

グッとうなじの刻印に指を差し込んで、少し考えている。


「…おい、この子の状態だと、

秘儀の効力は、もって数分だ。

それ以上はこの子も術ももたない。


…アンタ、救えるの?」


「そうだな。」


僕はまっすぐエーレントを向いた。


「お前は200年前の怨霊だが、

僕は1000年に一度の神通力だ。

心配せずに、よく見ておけ。」


「ハハハハハッ!!!」


エーレントはニヤリと笑って、

夕日色の瞳を僕に向けた。


「じゃ、アンタ、後ろ向いて、目を閉じてて。

秘儀の方法は見せられねェ。

…こっち向いたら、すぐに止めるからな。」


僕が後ろを向いた瞬間、寝台がギシギシと鳴る。

ガシャンと何かが落ちて、妙な匂いが漂う。


僕はゾッとした。

しかし、約束だ。

目を固くつぶって、振り向かない。

今は、エーレントを信じるしか、道はない。


エーレントが噛み殺すような声で詠唱した。


「秘儀【窮鼠噛猫(きゅうそしびょう)】」


何の物音もしない。

しかし、


ぐ…ぐふっ…


エーレントがうめき声を出した。

寝台がミシミシと音を立てる。

この秘儀は術者が…エーレントが苦しむ術なのか…


と、急にエーレントが叫んだ。


「あー、キタキタ!

今だ!術をかけろ!!!早く!!!!」


僕は振り向きざまに詠唱した。


「神路開放 神通力 【二鼠藤戻(にそふじのもどり)】」


ドッと青い光が僕を取り巻く。

僕は、リヒトさんの心臓に手をかざす。


ああ、なんて弱い。

僕は神通力を調整しながら、

彼女の身体で今や永遠の眠りにつこうとしている、

毒に対抗する力を蘇らせる。


「おい…早くしろ!…この子、持たねぇぞ!!!」


エーレントの苦しそうな声。

ハッと見ると、エーレントは、目鼻口から血を噴き出しながら、リヒトさんの刻印と頭を掴んでいる。

このままではエーレントももたない。


僕はありったけの神通力を注ぎ込む。


助かるなら…そろそろ反応があってもいいはずだ!!!

助かるなら…

【助かるなら】。


「何やってるんですか!!!

リヒトさん!!!

起きてください!!!!!!」


僕は神通力を全力で注ぎこみながら、リヒトさんの耳元で叫んだ。


「聞こえますか!?

聞こえないの!?

バカリヒト!!

バカリヒト!!!

バカ!

バカ!!

バカリヒト!!!!!」


「もう、限界だ…」エーレント


僕は、最後の力を振り絞った。

煌々と青い光がリヒトさんを包む。


「死ぬなら…

死ぬ前に言います!!!!


僕と!!!


…僕と、


結婚してください!!!!!!!!!」


その瞬間、青い光がフッと消えた。

燭台の光だけが部屋を浮かび上がらせている。


僕は、倒れ込むようにリヒトさんに触れたが…


リヒトさんは、

氷のように冷たくなっていた。



続きは今日か明日に投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ