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Jardin miniature 神々の箱庭で、少女たちは軌跡を紡ぐ  作者: kitty
第2章 変わりゆく繋がりの中で
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揺れる温度

自室の扉を閉めると、外の気配が遠のいた。


寮の廊下に残っていた足音も、

誰かの話し声も、

扉一枚隔てただけで、嘘のように消えていく。


ジャミーラは、ゆっくりと息を吐いた。


——一日が、終わった。


試験が終わり、

生徒会室で話を聞き、

そして、ライルに寮まで送ってもらった。


どれも、特別な出来事ではない。

理由も説明も、すべて整っている。


(試験が終わって、休暇が来て……)


日常は、確かに前へ進んでいる。


机に鞄を置き、

外套を脱いで椅子に掛ける。


いつもと同じ動作。

いつもと同じ流れ。


けれど、その中で。


(自分の立ち位置だけが、少しずつ調整されていく)


気づかないふりをしていた変化が、

静かに、形を持ち始めている。


アルテリスが付き添いが減ること。

代わりに、ライルが隣に立つこと。


どちらも“当然”だ。


アルテリスは第一側近で、

殿下の直近に控えるべき人。


自分が彼の時間を占め続けることはできない。


必要なことだと、分かっている。


頭では、はっきり理解している。


むしろ、今までが優遇されすぎていたのだとさえ思う。


——それでも。


椅子に腰を下ろしたまま、

無意識のうちに、指先を握りしめていた。


胸の奥に残る、微かな温度。


名付けるには曖昧で、

無視するには、確かにそこにある感覚。


(……変わらない、はずだったのに)


言葉も、態度も、何も変わっていない。

アルテリスは、これまで通り静かで、

ライルは、変わらず丁寧だった。


それなのに。


一緒に歩く距離。

声をかけられるタイミング。

隣に立つ“当たり前”が、すり替わっている。


(寂しい、なんて)


そんな言葉で片づけてはいけない。

そう思おうとして、思いきれずにいる。


ふと、別の言葉が脳裏をよぎった。


——焦らなくていい。

——話しかけ続ければいい。


先日、ライルに言われた言葉。


無理に距離を詰めなくていい。

答えを急がなくていい。

ただ、関わることをやめなければいいのだと。


(……そう、だったわね)


アルテリスは、話さない人だ。

自分から多くを語らない。


でもそれは、

拒んでいるわけでも、

遠ざけようとしているわけでもない。


(なら)


距離が少し遠くなったとしても、

関係が終わったわけではない。


今はただ、

立ち位置が整理されただけ。


(焦る必要はないわ)


言い聞かせるように、心の中で繰り返す。


話しかけること。

隣に立つこと。

言葉を交わすこと。


それを、やめなければいい。


窓辺に立ち、夜の学園を見下ろす。


長期休暇を前に、

灯りはいつもより多く、

どこか浮き足立った空気が残っている。


騎士見習いとしての、巡回任務。

その後は、帰省の準備。


時間は、確かに前へ進んでいく。


(……大丈夫)


胸の奥に残る温度は、

まだ、うまく言葉にできないけれど。


それでも、

立ち止まる理由にはならなかった。


ジャミーラは、そっと目を閉じ、

静かに息を整える。


——今は、それでいい。


答えを出すのは、先でいい。

焦らず、話しかけ続ければいい。


そう、自分に言い聞かせながら。

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