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Jardin miniature 神々の箱庭で、少女たちは軌跡を紡ぐ  作者: kitty
第2章 変わりゆく繋がりの中で
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五芒星

講義室の窓から柔らかな朝日が差し込み、微かな風がカーテンを揺らしていた。

インクと羊皮紙の香りが漂い、静けさの中に学びの空気が満ちている。


「——それでは、前回の試験範囲の要点を復習しましょう」


講壇に立つのは長い耳に白髪交じりの男性教師、精霊術理論を担当するルサージュ教授である。


教授が筆をひと振りすると、黒板上に淡い光文字が浮かび上がった。


『マナ』


中央から伸びるように五芒星が描かれ、さらにその外側に二つの属性が追加される。


『火・風・土・雷・水 光⇔闇』


「皆さん。生命に宿る神秘的な力を、我らジャルダンの民は“マナ”と呼びます。


そしてこの五芒星は、“マナの循環”、同時に“属性の相性”を象徴しているのです。」


筆が軽やかに動く。


「火は風に強く、風は土に劣り、土は雷を制し、雷は水を打ち、水は火を鎮める。

——この循環があるからこそ、世界の均衡は保たれているのです」


続いて筆先は、星の外側をなぞった。


「そして、この循環から外れた二つ——“光”と“闇”。

この二属性は自然の理には含まれず、世界の均衡そのものを司る“特異点”とされています」


黒板に新たな文字が浮かぶ。


『精霊術』『神聖術』『闇術』


「では、ここから新しい内容に入りましょう。

“精霊術・神聖術・闇術”——この三つの違いは、何でしょうか」


静寂。学生たちは教本をめくり、思案する。


やがて、一人の男子生徒が手を挙げた。


「……“誰から力を借りるか”の違い、ですか?」


教授は満足げに頷き、筆で文字を指す。


「その通り。

“精霊術”は精霊から。

“神聖術”は神々から。

そして“闇術”は——悪魔から力を借りる術です」


五芒星が再び光を帯びた。


「火・風・土・雷・水の五属性は精霊術の根幹。

光は神聖術と深く結びつき、闇は闇術に呼応する。

この二属性が特別視される理由はそこにあります」


教授は声を落とし、言葉の温度が変わる。


「“精霊術”——自然界の精霊と契約し、信頼を築くことで力を引き出す術。

“神聖術”——信仰を媒介に、祝福・治癒・浄化をつかさどる生命の術。

“闇術”——己の魂を対価に悪魔と契約し、闇の力を操る禁忌の術です」


教室が僅かにざわめく。


「闇術は強大ですが、常に“自己喪失”の危険を伴う。

心を闇に呑まれた者はやがて“悪魔化”し、人の姿を失うのです」


その言葉は、昨夜の記憶を抱えたジャミーラの胸に、静かに沈んだ。


教授は光文字を消しながら締めくくった。


「つまり、三術の違いは“媒介”と“目的”。

自然と共に在る精霊術。

信仰をもって光を扱う神聖術。

己の闇に触れ、そこから力を得る闇術。


どれも源は“マナ”ですが——辿り着く先は全く異なります。


——さて、質問のある者は?」


静寂が訪れ、そのまま講義終了の鐘が響いた。


「——では今日はここまで。課題を忘れぬように」


椅子の軋み、教本を閉じる音が広がり、生徒たちが出口へ向かう。


その時——


「……シャマル嬢。少し残りなさい」


ジャミーラは、はっとして顔を上げる。


他の学生たちが彼女を横目に見ながら退室し、教室に静けさが戻った。


彼女は席を立ち、教授のもとへ歩み寄る。


「ルサージュ教授、ご講義ありがとうございました。何か御用でしょうか?」


「聖騎士団からの伝達が届いています。本日の講義が終わり次第、支部へ出向くように、とのことです」


「……聖騎士団、支部へ……?」


驚きが胸に走る。しかしジャミーラは息を整え、姿勢を正した。


「承知いたしました」


だが、胸の奥には小さな不安が残ったままだった。

彼女は静かに教室を後にした。

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