リベンジマッチ!!
平原の奥の方からオーク軍が行進しているのが見える。
「ついに来たね……《例のとっておきの秘策》はちゃんと起動するかな…」
私は心配そうな顔をして、ユキを見つめる。
「もちろんです!もう少ししたら起動します!」
彼女の自信満々な様子に、私は少し安心する。
近づいてくるオーク軍の声は徐々に大きくなり、現実を突きつけてくる。
「列を崩すな!隊列を乱すな!奴らは我らオーク軍の敵ではないぞ!……って、おい!どうなっている、これは!?」
オーク軍の足取りが重くなり、投石機も完全に動きを止める。
「よし!《とっておきの秘策》が成功した!!」
私たちは、前日にユキの魔法で平原一面を水浸しにし、地面をドロドロにしておいたのだった!!この平原は障害物のない地形で、このままでは前回のように悲惨な結果になってしまう。そこで私は、前日に一つの提案をしてみた。
「ねぇユキ、この地形って戦いに向いてないよね……」
「そうですね。潜伏場所も少なくて、最終兵器の格好の的になってしまいます」
「そこで考えたんだけど、平原を水浸しにしたら、進行を遅らせられるんじゃない?」
「たしかに、それなら最終兵器も、オーク軍の行軍も遅らせられる……素晴らしいですよ、魔王様!」
「えっ、そうかな〜」
逆に平原を生かした戦い方は、功を奏した。
「クソッ、なんだこれは!? 動けないじゃないか!」
オークはガタイが大きく、装備もほぼ重装備。これによって、オーク軍の機動力を奪うことができた。予想外の展開に、オーク軍の大将は度肝を抜かれる。
「なんなんだよ!? 前回とぜんぜん違うじゃないか! クソッ! おい、最終兵器の準備をしろ!」
「大将!!ここからでは、最終兵器の射程外です!!」
「なにっ!?」
どんなに強力な武器でも、使えなければガラクタに等しい。
これによりオーク軍の戦力を大幅に弱体化させたと言っても過言ではない。
「これでも止まらないか……」
それでも、オーク軍の歩兵の数は多い。機動力を失っても、圧倒的な体格でゆっくりと進軍してくる。
「奇襲部隊!準備して!」
その掛け声とともに塹壕に隠れていた村人たちが顔を出す。
「魔王様の合図があったぞ!オメェら!攻撃をするぞ!」
「こいつらどこから出てきた!?」
あたり一帯は泥だらけとなり、伝達部隊を失ったオーク軍の指揮系統は完全に麻痺していた。
そこを狙ったのだ。
小柄な者が多いため、奇襲にはうってつけだった。
さらに、アリスの熱血指導を受けた村人たちは、一味も二味も違う!
小さな体を活かし、オーク軍の意表を突く攻撃を仕掛け、戦力を奪っていく。
「よし!これもうまくいった!!アリス!!頼んだ!!」
混戦状態の中、アリスは投石機に向かって攻撃を始める。
動かない投石機はアリスにとって格好の的である次々と破壊する。
「前回のお返しじゃ!!」
さすがアリス……軽々と次々に破壊していく……
「やばい!オーク軍が撤退する!」
戦力的にも余力がなくなったのかオーク軍は撤退を始める。
これでは、また増援されて長期戦になってしまう……
これ以上は、長続きしてしまうと村の戦力的にも物資的にも余力がない。
そしてなによりも村を強化する時間が足りない……
「まかせてください!魔王様! アイスローゼ!!」
その声とともに、ユキは撤退するオーク軍の退路を氷の壁で塞いだ。
動揺したオーク兵たちはバラバラに散って逃げようとするが、さすがはユキ。
散開した敵をも見逃さず、次々と氷柱で貫いていく。
これには、さすがのオーク軍大将も――。
「降参だ!!我々の負けだ」
こうして私達はリベンジマッチに勝利した。




