え!私が統治なんて無理なんですけど!?
ついに……この時が来てしまったか。
大丈夫…さっきユキと練習したから…多分…
目の前には、村人たちが熱狂的な声援を送る。
「魔王様!こちらを向いてください!!」
「魔王様は希望だ!」
荷が重すぎる!!
ただでさえ人前に出るのが苦手なのにこんなに期待されるなんて…
私の緊張を察したのか、アリスがそっと肩をさすってくれる。
「いつも通りでいいのじゃ。緊張することはない!」
「…アリス」
この場面でのアリスの言葉は涙が出るほどうれしかった。
すると突然、案内役のモンスターが大声を張り上げた。
「静まれ~~~~~!!」
その瞬間、辺りは一気に静寂に包まれる。
「この方こそ、先代魔王様の血を引く、唯一の新たなる魔王様だ!!」
その叫びに、村人たちの熱気が一気に爆発する。
「うおおおおおおおおおお!!!!」
そして役目を終えたかのように案内役のモンスターは私に向かい…
「会場は盛り上げておきましたよ!あとはよろしくおねがいします!!」
彼は、さわやかな笑顔で親指をつきたてた。
「いや頼んでないんだけど!?どうするのこの状況!」
「そこは魔王様のカリスマ性で…ね!」
「ね!じゃないよ!?もうさっきまで、ユキと練習していたセリフ、ド忘れしちゃったじゃん!?」
すると、ユキがそっと耳打ちしてくれた。
「吾輩こそがルーミア・エル・ガーデン、天からさずかった。この大地をすべりし存在。魔王の遺志を継ぐ、世界の終焉なり。です!頑張ってください!」
そう言って、彼女は、小さくガッツポーズをする。
私も、すかさずガッツポーズで返した。
でも思ったよりガッツリやっていたらしく
アリスはやれやれといった表情を浮かべていた。
村人たちの視線が……熱い。重い。痛い。
そんなすごい人じゃないんだよ、私…。
もともと男のか弱い少女なのに……。
でも、とにかく! 意を決して、言う!
「わ、わがはいっ……!こそがルーミア・エル・ガーデン!
か、神様よりさずかった……こにょ大地をすべりし…ま、魔王のい、いしをつぐ……せ、せかいのしゅうえんっ……にゃ、にゃり!!」
……うん!
めちゃくちゃ噛んだけど!
それっぽいかっこいい決めポーズで誤魔化した!!
一瞬の静寂があったが、すぐに村人の喚声が上がる
「うおおおおおおおおおお!!!」
「新しい魔王様だ!! これで我らも安泰だ!!」
「魔王の決めポーズかっこよかったな!」
「そうだな!でもやっぱり…」
・・・・・・・かわいい
どうやら決めポーズのうけが良かったらしい。かくして、演説も終えて
ほっと胸をなでおろし、その場を後にして、村長と変わる。
「ありがとうございました!!魔王様!それでは次に村長からの挨拶です!!さあ!こちらへどうぞ!」
ほんと、何とかなってよかった~~!
あとは、村長の話を聞くだけ!
緊張したけど、アリスとユキのおかげでここまで乗り越えられた!
村長は、一つ咳ばらいをすると、静かに口を開いた。
「……わし、村長やめるから。よろしくな~!!」
「え~~~~~~~~!?」
当然の出来事でなにがおこったのかわからない…
村人たちもざわついていており、みんな困惑しているのが伝わってきた。
「もう、わしも年だから 若い者に村長の座をゆずろうとおもってな」
すると、ひとりの村人がすかさず声を上げる。
「あの! じゃあ、新しい村長って……誰なんですか!?」
村長は、にっこりと笑いながら
「そんなのは、決まっておるだろう」
そう言って、まっすぐ私を指さした。
「魔王様!よろしくたのんだぞ」
…え?
新しい村長って……この私!?
こうして、長かったパレードの幕は、
予想外の展開とともに閉じたのであった。
「ね!どうゆうことなの!?」
「すまんかった。こうでもしないとこの村の村長を引き受けてくれないだろう。これは苦渋の決断なんだ…」
「なにが苦渋の決断なの!?もう!アリスもユキも言ってやって!」
「魔王様ならきっとこの国も圧倒的カリスマ性で統治できますよ!」
「そうじゃな!それになんだかおもしろい展開になってきたな!!」
…ダメだ。これ以上何を言ってもダメな気がする…
「とにかく!村長の件はうけられません!」
「それは困りますぞ!なにせこの村はかつてないほどのピンチをむかえております。」
「そこまでピンチってわけじゃないでしょ」
「いえ……このままだと、この村は滅びます」
一体、この村はどんなピンチに見舞われているのだろうか。
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