童のために洋服を仕立ててくれたのか!!
あれから準備も終わり、まったり時間が流れて、夜も更け、朝に来た。
「う~~んむにゃむにゃ もう食べられないぞ~……ハァッ!」
童はそんな夢を見ながら、のそのそと目を覚ます。
部屋の中はまだ薄暗い。
けれど、廊下の先、裁縫室からは小さな灯りと、なにやら気になる音が漏れてきていた。
「……?」
気になったアリスは、そ〜っと裁縫室の扉に耳を当てる。
「…ユキ これであっている?」
「少しやりすぎです。魔王様、お手を貸してください」
「え⁉ちょっと、待って!私、初めてだからさ…」
「大丈夫です!私に任せてください!何回もやっていますので!」
なんんじゃ!童に内緒でまたユキはルーミアに誘惑しているのかけしからん!
そんなアリスの妄想が膨らむなか
バンッ!
突然、扉が勢いよく開いてしまった。
「きゃあっ!」
ルーミアが小さく悲鳴をあげ、それをユキがとっさにかばうように抱き寄せる。
「…なんだ、アリスですか、驚かさないでくださいよ」
「もう!怖かったんだから!!」
「す、すまん……いやそれよりっ!!」
アリスはびしっとユキを指差し、
「またルーミアを誘惑しておるのか!? このサキュバスめぇぇぇ!!」
「し、してませんよ!? ちょっと誤解しないでくださいっ、本当にっ!」
(……しておるだろ。今の流れ、完全に怪しいやつじゃないか)
疑いが晴れないアリスの視線に、ルーミアが慌てて割って入る。
「ち、違うの! 私が呼んで手伝ってもらっただけで!」
「なんと……童を差し置いて、まさかの浮気か!?」
「だから違うってばっ! 本当は後で見せたかったんだけど…もう仕方ないな…」
彼女は、手にあるワンピースを見せる
「これは、童がルーミアに貸したワンピースじゃないか」
そこには、つぎはぎでボロボロなアリスのワンピースがあった。
「そう!ユキに手伝ってもらって、手直ししたの」
「そうじゃったのか!!…ルーミアありがとう~~!!」
「ちょっと!?帆をこすりつけないでよ~~!」
「童は、ルーミアが縫い直してくれたことがうれしいぞ!」
「あの…私も手伝ったのですが…まぁ、いいでしょう。出発の準備をしましょうか」
童たちは早速、出発の準備を整える。
ユキは朝ご飯を持ってきており、準備万端だ。
「さあ!いくぞ童についてこい!」
「まって~~!」
「そんなに急がないでください!パレードまで、まだ時間はありますよ」
童は手招きする。
ルーミアはルンルン気分で、ユキは呆れ顔ながらも、しっかりルーミアと手をつないでいる。
「あっ!ユキ、またルーミアを誘惑しておる!」
「してませんよ!私はただ、魔王様をお守りしているだけです!」
「うそじゃ!えい!童が手をつなぐから、ユキは下がれ!」
「ちょっと!アリス!横暴ですよ!!」
「うるさい!!」
こうして、童たちによるルーミアの“取り合い合戦”が始まった。
右手にユキ、左手に童。お互いににらみ合い、手を放す気などさらさらない。
ルーミアは左右から引っ張られる。
「アリスは危なっかしいので私が、魔王様を守りますので、あなたは、後衛でも守っておいてください」
「なに!?そっちこそ、またよからぬことをするじゃろ!ユキこそ、後衛でも守って童たちのイチャイチャでも眺めておれ!」
「なんですって!?」
「なにを!?」
ルーミアが困ったように、割って入る。
「ちょっと!?二人とも私のために争わないで~~!!」
結局、左右一人ずつがルーミアを守ることで話はまとまった。
(まったく……童は二人で歩きたかったのに!まぁ、恋人つなぎできてるから、よしとするか。ルーミアの手は真っ白で、小さくて、かわいいな~
でも、ユキも恋人つなぎしてるのは気に食わん……)
童は何とか心を落ち着かせようとする。
道中、旅をしているとモンスターに遭遇した。
よし!童の出番じゃな!
「精霊よ童に力を貸せ!ファイヤエンブレム!」
「精霊よ私にお力をお貸しください。アイスボール!」
童とユキは、同時に魔法で攻撃を仕掛ける。
予想外のことに、二人の魔法は相乗効果を生み、より強力な攻撃となった。
「なっ!?なにをする!」
「そっちこそ、何をするんですか!?危ないじゃないですか!」
ルーミアが仲裁に入る。
「まぁまぁ 落ち着いて!ほら、二人の攻撃で魔物倒せたじゃん!!」
本当にそうなのか?童の手柄だと思うんだが…
そんなことをかんがえつつ、一行は再び歩き出す。
道中、いろいろな出来事があったが
ついに、村らしき建物が見えてきた。




