ねぇ!!私はきせかえにんぎょうじゃないんだからね!!
「どうゆうこと!?」
開幕そんな一言から始まる。
ユキは何事もなかったように口を開く。
「はい、喜んでましたよ。新しい魔王の誕生だってパレードの準備をしてました。」
‥‥!
頭がくらくらしてくる、魔王誕生?パレード?
私そんなに大層な人でもないんですけど!!
「ちょっとアリス何とか言ってよ~!」
私は、アリスに助け舟を求める。
「パレード!? いつぶりだ!? こりゃ楽しみじゃ!」
ダメだアルスはもうパレードのことで浮かれている…
「というわけで……ご参加、お願いしてもよろしいですね、魔王様?」
「えっ…あ…うん」
気が弱い私が断れるわけもなく。
勢いに流れるまま、了承してしまう
「よかったです…パレードは明日なので準備をよろしくお願いしまね!」
「えっ!?ちょっと待って、パレード明日なの!?」
「はい、明日ですね。」
「や、やっぱり無理!!」
「どうしてですか!?サポートは万全にいたします!」
「いや…そういう問題じゃなくて、私、人前に出るのが怖くて」
「そうなのか!なら童がずっとそばにおって、面倒を見てやるから安心するがよいぞ!!」
……ありがとうアリス。でも、そういうことじゃないんだよ。
これじゃ私が本当にパレードに出演することになるじゃん!!
そんなことを考えているとユキは私に頭を下げてくる。
「お願いします魔王様!あなたは、この国の希望なのですどうかどうかお願いします」
そこまでしてもらったら、断れなく、再び了承することになった。
「わかった…でも、あんまり期待しないでね…」
「そんなめっそうもございません」
「でも、私魔力0だから他の人が見たらわかるんじゃない?」
「そこは、任せてください、とっておきの道具があるんので」
そう言って彼女は、奥の戸棚からペンダントを取り出す。
「わあ、きれいなペンダント」
私は思わずそう口にした。
「少しじっとしていてください…うん! 可愛くなりました!!」
ユキは、そっと私の首元にペンダントをつける。
「ほんとじゃな!可愛いルーミアが、さらに可愛くなったぞ!!」
そしてアリスは、まるで私を着せ替え人形にするように髪を撫でてくる。
「も、もう! アリス、やめてよ~~!!」
ユキは愛らしそうに私を見つめ、そして思い出したかのように
「ふふふっ これは、魔力が詰まったペンダントでこれをつけた者は相手から見ると莫大な魔力量を持っているように見えるます。ただし、あくまで見せかけなので、実際の魔力量は変化しないので注意してください。」
「うん!わかった~~!!」
私は上機嫌であまり話の内容を聞いていなかったけど
つまり最強のペンダントってことでしょ!!
「それはよかったです!では、私は魔王様のパレード衣装を仕立てますので、これで失礼します。何かあったら、すぐお申し付けくださいね!」
私の返事に満足したのか、ユキは小さく一礼してから
ゆっくりと裁縫室へと向かっていった。
その背中を見送りながら、私たちもそろそろ席を立とうとした、そのとき
…トン・トン
玄関の扉から、小さくノックの音が響いた。
「…誰だろう?」
そう呟いて、私はそっと扉を開ける。
そこにいたのは
「えっ…あの子犬!?」
玄関の先には、ダンジョンで出会ったあの子犬が、ちょこんと座っていた。
「ついてきたのか!!こやつ、可愛いな!!」
アリスは大喜びで子犬を抱き上げ、よしよし撫でまくる。
すると、ぺろぺろと顔中を舐められていた。
「うひゃっ、くすぐったいっ!」
もちろん私も、同じようにぺろぺろされる。
「きゃあっ!やめてよ~~~!!」
私たちは子犬と会えたことに心底喜ぶ。
「そいえばこやつの名前は何というのじゃ?」
アリスがふと思い出したように尋ねる。
そうだ。ここまで一緒にいたのに、まだ名前をつけてなかった。
「う~ん、ぺろぺろするからペロでいいじゃない?」
「安直だな…でもペロいいじゃないか!よし!今日から子犬はペロじゃ!」
そんなやり取りをしていると
奥の方から、ユキの声が聞こえてきた。
「仕立てができましたので、こちらへどうぞ!」
「えっ、もうできたの!?」
どうやらもともと作っていたらしい。
あまりの早さに少し驚きつつ、私はユキに案内されるまま裁縫室へ足を運んだ。
部屋の中には、ずらりと並ぶ衣装の数々。
ふわふわのドレスに、タキシード、軍服……そして、ちょっと目のやり場に困るような露出多めの衣装まで。
「こちらです!」
ユキは自信満々の様子で、一着の洋服を差し出す。
それは、ぴちぴちの黒いスーツであった。
それとマントと、どこか軍帽のような帽子がセットだ。
ぱっと見、露出がちょっと多めで、これは……着るのに勇気がいるやつだ。
でも、せっかくだし。
そーっと腕を通して、恐る恐る着てみると
「あ、意外と着心地いいかも……」
たぶん、胸が控えめだから、変にキツくないんだろうな。
……うん、これはこれでちょっと悲しいけど。
マントを羽織り、帽子をかぶって鏡を見た瞬間
思わず、ニヤッとしてしまった。
(……うわ、中二心くすぐられるなコレ)
「うん!にやっていますよ魔王様!」
「そうかな…ちょっと恥ずかしんだけど…」
「そんなことないですよ!めちゃくちゃかっこいいです!」
ユキが慌ててフォローしてくれる横で、アリスはぶつぶつと何かつぶやいている。
「可愛いのもいいのだが、かっこいい姿もそれはそれでにやっているな~」
かくして私たちは明日のパレードへの準備を万端にしたのであった
「可愛いのもいいのだが……ふむ、こういうカッコいい姿も、それはそれでニヤっておるな〜……」
アリスは、何を言っているんだろうか
そんなこんなで、私たちは、明日のパレードに向けて万全の準備を整えたのであった。




