魔王ちゃんは絶体絶命のピンチ⁉️
ダンジョン内は妾たちの笑い声が響き渡っている。
きっとその声で起きてしまったのだろう。
このダンジョンの主を。
妾たちの背後に巨大な影が迫っており、
あっという間に妾は投げ飛ばされてしまった。
ダンジョンの主は、通常のスライムの一回りも二回りも大きく、狂暴な性格を持つ紫色のポイズンスライムだった。
油断していた!普段だったら避けられていた攻撃も全身にうけてしまい、
ポイズンスライムの毒で体が痺れて動かない…早く、早く、動かねければ!
ルーミアが危険な目にあってしまう!
…あ
ほんのコンマ数秒…
それだけの遅れが命取りだった。
ポイズンスライムは、すでに次の攻撃動作に入っていた。
「ルーミア!!避けるのじゃ!!」
その瞬間、妾は目を閉じた。
「いたあぁぁあぁぁぁ」
次に目を開けたとき、目の前の光景に息を呑んだ。
ルーミアが妾たちをかばうように立ちはばかり、
その身でポイズンスライムの猛毒を受けていた。
彼女のワンピースは、毒液によって無惨にも溶け落ち、白い肌に痛々しい傷が浮かび上がっている。
そこから立ち上る蒸気とかすかに漂う焼けた匂いが、残酷さを突きつけた。
「精霊よ、妾に力をかしたまえ」
妾は咄嗟に氷結魔法を使いポイズンスライムを凍らせて渾身の一撃で破壊する。
「ルーミア!…どうしてそんなに無茶するのじゃ!!」
「えへへ…でもアリスが無事で良かったよ…」
「何をバカなことを言っていおる!」
妾はバックにある薬品を取り出して、ルーミアの傷口に塗る
「なぜじゃ…薬品が効果がないではないか…」
いくら傷口に薬品を塗っても効果がなく徐々に傷が広がっていく
彼女は、今にも途切れそうな声で呟いた。
「私さぁ、いつも助けられてばかりの足手まといだったけど…世界で一番大切なあなたを守れたからそれだけで嬉しいんだ」
その言葉を最後に、彼女はニッコリ笑い、そして、そっと目を閉じた。まるで感情のない人形のように
「おい!!妾こそ助けられてばっかりだし、ルーミアのことが好きじゃ!!」
妾は声を震わせながら思わず叫ぶ。しかしその声は届くことがなかった。
そして何度も、何度も、彼女の方を揺らした。
どうか、目を開けてほしい。
もう一度、あの笑顔を見たい。
そして何より
「お願いだ…妾を一人にしないでくれ…」
大粒の涙が溢れ出し、ルーミアの体に優しくハグをする。
「…いや弱気になってどうする。妾はルーミアを守ると決めたのじゃ」
妾は涙を拭い、ルーミアをお姫様抱っこし早々にダンジョンをあとにする。
ルーミアを助けられるのはやつしかいない…
見知らぬ天井をぼんやりと見つめながら、私は目を覚ました。
ベッドの感触はやわらかく、部屋には木の香りが漂っている。
ログハウスの一室だろうか。
そして、私のすぐそばでは
アリスが小さな寝息を立てている。
けれど、その小さな手は、かじかんでいた。
こんなになるまで、私のそばにいてくれたんだ。
何が起きたのか思い出そう…
見知らぬ天井をぼんやりと見つめながら、私は目を覚ました。
ベッドの感触はやわらかく、部屋には木の香りが漂っている。
ログハウスの一室だろうか。
そして、私のすぐそばでは
アリスが小さな寝息を立てている。
けれど、その小さな手は、かじかんでいた。
こんなになるまで、私のそばにいてくれたんだ。
何が起きたのか思い出そう…
たしか、魔法の練習をするために、ダンジョンに行って、道中で子犬に会って
それから、ダンジョンの主と戦ったけど負けちゃって…
「…そう、私、攻撃されたんだった…でもどうしてここに…?」
「アリスが、あなたを連れてきたのです」
ふいに奥から声がして、現れたのは、以前、湖で出会った魔王軍の幹部・ユキだった。
どうやら私は、どんな薬を使っても治らなくて、かなり危ない状態だったらしく。
アリスは必死で助けを求め、回復魔法が使えるユキのもとへ走ったのだという。
その後、私は丸一日寝たきりで、アリスがずっとそばで看病してくれてたらしい。
「……ありがとう、アリス」
私は感謝の言葉を述べてそっと毛布をかけた。
「ご無沙汰してます。ユキです。お体の方は大丈夫ですか?」
彼女は心配そうに、私を見つめてくる。
「う…うん」
コクリと頷くと彼女は安心したように表情を緩めて、手に持っていたマグカップを差し出してきた。
「少し温まりますよ。ココアです。」
私は一口飲む…
「あちぃ!」
「 大丈夫ですか!? 今、あたらしいものをお入れしますね」
「い、いいの… 私、猫舌なだけだから」
慌ててそう弁解する。せっかく介抱してもらっているのに、これ以上迷惑はかけられない
「少し、よろしいでしょうか?」
そう言うと、彼女は私の手にあるマグカップにそっと手をかざした。
次の瞬間、ふわりと光が灯り、ココアの中に小さな氷がいくつか浮かぶ。魔法で冷やしてくれたのだ。
私はもう一度、そっとココアを口に運ぶ。
さっきまで熱くて飲めなかったのが嘘のように、ちょうどいい温度。
思わず夢中になって飲み干した。
「ありがとうね~」
「おやおや、もうなくなっちゃいましたか。新しいのをお持ちしないといけませんね」
ユキはクスクス笑っている。
そんな私達の声に気がついたのかアリスは目覚める。
「むにゃむにゃ……ルーミアは、妾が守る……っ、がはっ!」
跳ね起きた彼女は、焦点の定まらない目で辺りを見回した。
そして、私に気づいた瞬間
「ルーミア!? ルーミアなのか!? る~みあ~~~っ!!」
私の存在に気がついたのか思いっきり抱きつく。
今度は絶対に離れ離れにならないという強い意志を感じた。
「わらわ〜 ルーミアがいなくなちゃうと思って…思って!」
「うん、うん…ありがとう、アリス。私も、あなたが無事でほんとうに、よかったよ」
私達の顔は涙でグチャグチャになりながら一晩中泣いた。
そしてそのまま抱き合う形で眠ってしまった。




