物語は加速する
「よし、行くか、」
俺は全員が寝ていることを確認し、魔法を発動させた。
「〘次元超越転移〙」
調律者専用の超圧縮された世界を通って移動する特殊転移魔法、
専用と言っても、従者や秘書なども使用できる。
超高速、超長距離の移動に向くものの、特別な道具で記憶させなければ使えない、
そのため、帰還用に使われる。
真っ暗な空間で待つこと13秒、
いつもの会議室へと帰還した。
「ただい、、〘空間断絶〙!」
「〘超電導破砕砲〙!」
ドガァン!
早々にお迎えを受けた、さすが調律者、血の気が多くてかなわんわ、
「なんのつもりだ黄、」
黄は笑いながら言う、
「やだなぁ、いつものお迎えじゃん!」
「ハッハッハ、シバくぞ。」
「まだ、治らない?」
黄は真剣な面持ちでそう聞いた。
「、、あぁ、まだな。」
そう言うと、へぇ、とこぼした
「ばいばい、早く直してね」
手を軽く振って立ち去る黄、
「、、、ハァ、そう簡単に言ってくれるなよ、、」
ため息しか出ない、まぁ、帰ってきた感覚だな。
「さて、紫はどこにいるかな〜」
「…」
ふと後ろに気配を感じ振り返る。
「「…」」
居た、真後ろに
「あ、紫」
ジッと見つめてくる、、
「えっと、、」
無言でジッと見つめる紫
「、、紫?」
口をむくませ不服げに見つめてくる紫、
「、、、リズ」
顔がパァッと明るくなるリズ
何なのだろうこの間。
「薬を作ってほしい、この薬を頼む。」
そう言い薬のレシピを渡す
リファンピシン C₄₃H₅₈N₄O₁₂
イソニアジド C₆H₇N₃O
ストレプトマイシン C₂₁H₃₉N₇O₁₂
エタンブトール C₁₀H₂₄N₂O₂
ピラジナミド C₅H₅N₃O
「これらの薬の調合を頼む、報酬は金貨
「手作りのご飯、たくさん。」
「、、はいはい。」
さて、どれくらい作ればいいやら。
〜〜〜〜
その頃、アイリスは、
「お父さん!なんでこんなになるまで黙ってたの!?」
アイリスは、ベットの上で荒い呼吸をする父親に寄りすがって泣いていた。
「…」
アイリスの父親は、もう返事をする気力も無かった。
アイリスは涙を拭うと、
「お父さん、薬、持ってくるから、待ってて、」
そう言い自分の実家を飛び出した、
(皆には迷惑をかけられない!自分でどうにかするんだ!)
、、仲間たちにも相談せず。
「エリクサー、エリクサーなら、、!」
アイリスは街のあらゆる薬屋に駆け込んだ。
しかし、薬屋のほとんどが、
「すまない、うちにエリクサーは売ってない、」
「ごめんねぇ、置いてないわ、、」
「力にはなりてぇが、最近は材料が全く出回ってないんだ。」
「最近はめっきりないねぇ、他を当たってくれ。」
アイリスは聞いて回った、エリクサー以外の治療法を、
「不治の病と名高い病気をエリクサー以外で、、知らないなぁ、」
「さぁ?皆目検討もつかんなぁ。」
何十件回っただろう、
、、結果は散々だった。
あらゆる店を、あらゆるツテも使った。
でもだめだった。
売っていない物は無いのでは無いかという商会も当たった、
世界樹の薬屋という薬局も当たった、
結局高すぎて手は出せなかった。
アイリスの実家、アスティール侯爵家は、公共事業を行い、領民に快適に過ごしてほしい
そういう願いで努力していたため、税収もほとんど無く、懐が厳しかった、
そう、いわゆる貧乏貴族であった。
アイリスは悩んだ、どうすれば大量のお金が稼げるのだろう、
ギルドのクエストを受けようとしたものの、
大抵がパーティークエスト、自分一人では厳しかった、
(レイに相談しようかな、、)
レイ、自分が人生初一目惚れしてしまった男性、
尋常では無いほど強かった、彼に頼めば、、
(レイはすごく優しい、きっと頼めば受けてくれるかも、、)
そう思い家に帰ろうとする、しかし、だめだと頭を振る、
(だめ、レイに迷惑かもしれない、、)
彼ならきっとどうにかしてくれる、アイリスはここ1年でそう確信していた、
なんせ世界最強を無傷で討ち取るくらいだ、
ドラゴンくらい数分とかからず狩って来るだろう、でも
自分はレイに甘えてばかりじゃないのか?
頼り過ぎじゃないのか?
(駄目、、自分でどうにかする!)
そう決意し、路地を通り抜けようとしたその時、
「アイリス嬢、」
後ろから声をかけられた。
「、、ディゲス王子?こんなところでどうしましたか。」
私はこの男が嫌いだ、過去何度もストーカー紛いのことをされ、
体をさり気なく触ってくるこの男が大嫌いだ、
何度でも言ってやる、大嫌いだ。
王族の権力を振りかざし、幾度となくプロポーズをしてくる、
何度でも言おう、大大大大っっ嫌いだ。
するとその男がニタニタ笑いながら言う
「ここにエリクサーがあります。」
「エリクサー、、」
エリクサー、これを探していたのだ、
「このエリクサー、あなたに譲ってもいいですよただし!」
男は私の肩に触れ囁くように言う、
「私と結婚していただけるなら、、」
、、気持ち悪い、正直に言って無理だ。
顔も見たくない、近づきたくもない、手を振り払いたい、でも、、
「、、、その薬をお父様に飲ませて、治ったなら、、」
するとディゲス王子は、
「いいでしょう、」
そう言う
本当は嫌だ、生理的に受け付けない。
でも、、これでお父様が治るなら、、
アイリス公爵令嬢の婚約発表は、その翌日に発表された。
〜〜〜〜〜
「はぁ、やっと買えた♪」
俺の手には、限定シュークリームが3箱ある、
早朝から並び、4個入りシュークリーム3箱計12個、
毎日一人一箱を守るべく、わざわざ部下と一緒に並んで獲得した獲物だ。
ラーメンを奢るという約束をしたらあっさり釣れた。
「ただいま、、どうした?お前ら。」
リアとニーナが静かに座り込んでいた。
「電気くらいつけたら、、」
リアが顔を上げた、その顔はすごく悲しそうな顔をしていた。
「、、何があった。」
リアは、信じがたい、聞きたくなかったことを言った。
「アイリスが、、アイリスが、、隣国の第2王子と婚約発表をしたの、、
しかも、1週間後っていう急な予定で、」
目に涙を浮かべながら、、
ドサッ
「レイ、私達、どうしよう、、レイ?」
アイリスが、、、婚約、、
膝から崩れ落ちる体、なぜだ?
ポタッ、ポタッ、、
床に小さなシミができている、
リアか、先程まで泣いていた、きっとリアだろう、そうだろう、
そう思いたかった。
たかが一人の人間が婚約しただけではないか、
貴族が家のため娘を王族に売り込んだだけではないか、
王族が貴族の娘を娶っただけではないか、
一瞬で死に逝く人間が、その僅かな人生の伴侶を見つけただけではないか、
、、「なのになんで、この体は震えるんだ、なぜ力が抜け落ちるのだ、
なぜ、、」
ポタッ、、ポタッ、、
「なぜ、、涙がでてくるのだ、、」
泣いたのなんて、何兆年ぶりだろうか、
出会いは偶然だ、一生会わない人だっている。
だが、別れは必然だ。
出会ってしまったら、別れはいつか来る。
喧嘩で疎遠になる、引っ越してしまう、この世を去ってしまう、
いずれ別れは来る、それが今日、この時だっただけではないか。
わかっていただろう、覚悟していたであろう、
なぜ、、なぜ、、
「…」
ニーナが震えながら言う
「そうだ!レイ、アイリスを助けに行こうよ!ほら、昔っから好きな人が結婚式に乗り込んできて
婚約者に喧嘩売って花嫁を連れ去られるってのが女の子の夢、、」
しかし、レイの目を見て、黙り込んだ。
「駄目だ、アイリスが自分で決めた結婚だ。そもそも、
好きでもない男に乗り込まれても迷惑でしか無いだろう?」
リアとニーナは驚愕した、
(、、、嘘、アイリスが好きな人なんて、レイ以外居ないのに、、まだ、まだ、気づいていないの!?)
「レイ、、気づいてないの?アイリスが好きな人はレイ、、あなたなんだよ!」
しかし、レイは小さく笑って、こう言った。
「俺に恋してくれる人なんて、誰ひとり居ねぇさ、こんな、こんなに血濡れた手を見て、
誰が魔物の俺なんかを好きになってくれるんだ?」
リアたちは気がついた、
レイは、文字通り、愛されなかった、誰からも、、
そのせいで、相手の好意を、別の意味で捉えてしまうんだ。
「俺が女性の前を通るとな、視線が刺さってくるんだ、注視するような、怯えた目線を、」
「…レイ、」
そう言い残し立ち去ろうとするレイ
「レイ!」
レイは、少し動きを止めた。こちらを見ると、少し微笑み、
バタンと扉を閉めた。
レイは自分の部屋で考え込んでいた。
(この結婚は、アイリスが決めた結婚だ、俺に口出しする権利はない。)
外を見る、暗く、燻るような、暗い夜、
ふと、枕元に手紙が置いてあった。
アイリスの字だった。内容は、たった一言
「今までありがとう。」
、、、寝よう、
明日も仕事がある、今日はもう寝よう。
、、、はぁ、眠れない、月の光が差してくる。
すると、なにかに囲まれた。
ここでテイムした魔物たちだった
「なんだ、慰めてくれてるのか?」
、、返事はない、
「おやすみ、」




