ダンジョンボスを張り倒そう
スタッ
「10点満点の着地、フッ、我ながら素晴らしい」
レイが自画自賛する。
そして上を見上げ構えを取る
「キャァァァァァ!」
落ちてくるあいつらを受け止める為だ。
ヒョイ
「〘反重力〙」
レイはアイリスをしっかり抱きとめ、
リアとニーナは魔法で受け止める。
スライム達はこの程度では死なないので放って置く
スタスタッ
ドガッズガン!
「あ、ありがとう、、」
「ちょっと私達だけ雑じゃない!?」
「ていうか後ろのスライム達平気なの!?
凄い音したよ!?」
プルプル
「あ、平気そう。」
ニーナがしゃがみ込みタンスラをツンツンする。
ダイスラは僕も僕もと言うかのごとくニーナに近寄る
「、、、何か、意外と可愛いわね、こいつら。」
ニーナがお気楽な事を言っているが、
レイはボスを見やる
「、、ほう、悪魔公か。」
すると、黒いコウモリの様な翼の間から、
鬼の様な顔を見せる。
「ほう、私の種族を当てるとは、見事な物だ。」
2mはあるだろう悪魔公を見て、思わずこう言う
「後ろに何体も悪魔居たら何となく分かるだろ。」
悪魔公は振り返り悪魔達を見ると
「、、、ふむ、確かにそうだな。」
『、、、』
「模倣〘裁きの聖鎌〙!」
ズガァァァァン!!!
「ぬあ!!!?」
静寂を急に斬り裂いたのはレイが昔会った知人の
式神の持っていたスキルの裁きの聖鎌
を模倣した物だった。
「、、、チィ、、」
悪魔公の部下であろう数体の悪魔は、
今の魔法で消滅してしまった。
『えぇぇぇぇ、、、』
それを見て絶句するリア達
「これ私達要らなかったんじゃない?」
そういうアイリスにレイは
「そうはいかないんだな、、おい、悪魔公よ、」
レイはアイリス達を指差し、
「今から5分間、こいつらに相手させる!」
『えぇ!?』
悪魔公はアイリス達を見ると
「ほう、貴様はどうするのだ?」
悪魔公はそう問う。
レイはニヤリと笑い
「俺がお前と戦えば、
こいつらの経験にならんしな、レベ上げだレベ上げ」
「ちょっとレイ!私達に死ねって!?」
「大丈夫大丈夫、
ヤバそうだったら転移で回収するから。」
ニーナの猛抗議をスルーし、
「しょうがないな、そのスライム達使っていいから。」
「何、『譲歩してやろう』見たいな言い方なのよ!?」
するとレイは悪魔公を見やり
「5分間で己の一生でも振り返ってな。」
レイが挑発的に嗤うと、
「ふふ、笑止!こいつらをなぶり殺し、お前も殺してやろう!」
悪魔公はアイリス達に魔法を放つ
「〘黒矢〙!」
悪魔公の背後に黒い矢の様な不定形な魔力が集まり、
アイリス達に飛ぶ
「〘プロテクション!〙」
ズガン!バキィン!
「え、、嘘、」
アイリスの防護魔法が木っ端微塵に砕ける
「アイリス、
黒矢は防御貫通術式が魔法陣に刻まれている、
防御魔法はよほどの物でなければ防げない、
物陰に隠れるか、避けるかしろ、」
レイがそう言うと
「なら貴様ならどうする!〘黒矢〙」
悪魔公がレイに黒矢を撃つ
「〘プロテクション〙」
すると、黒矢がまるでただの埃を払うように
雲散霧消する。
「な、!?」
驚愕する悪魔公を差し置きレイが口を開く
「同じプロテクションでも、術式の精密さ、
経験で強度はかなり上下する、
勉強になったな、え?、模倣〘黒矢〙」
なんとレイはそっくりそのまま、
同じ魔法を悪魔公に放つ。
ズガガガガガ!
「チッ、貴様は相手するだけ無駄だな、」
ヒュン!カツン
「矢が通らない!」
ニーナが叫ぶ
「ニーナ、ただの矢がそうそう刺さるか、
スライムを使え。」
「スライム?」
ニーナが足元を見るとタンスラがプルプルと震える
「、、、あ、まさか?」
ニーナが矢の先を差し出すと、
タングステンススライム(タンスラ)は、
矢の先を包み、離すと、
「、、何か少し重い、、」
「えい!」
ヒュン!グサッ
「グァ!?何故!?」
「へぇ、使えるね、コーティング」
そう、タングステンはかなり硬い、
表面をタングステンでコーティングし、
強度、威力を上げる。
「これならどうだ!〘獄火球〙」
しかし、その間にダイスラが割り込むと、
キィン!カァン!
『はぁ!?』
ドォン!
なんと獄火球の軌道が180°回転、
意表を突かれた悪魔公に直撃する
「今の上級魔法だよね!?」
そう、ダイヤモンドスライムは、
打撃を食らうと簡単に砕けるが、
魔法を反射するという厄介な性質を持つ。
最上級の範囲魔法ならそうでもないが、
めんどくさい事この上ない。
俺なら踵落としで砕く。
そう考えているとダイスラがビクッと跳ねた。
(、、、殺気が漏れたか。)
「ハハハハハハ!」
悪魔公が瓦礫から体を起こす。
「ここまでコケにされたのは初めてだ!
〘いでよ、悪魔の剣〙!」
悪魔公が高らかに魔剣を召喚した。
「この剣は、ミスリルをも断ち斬り、
アダマンタイト級の強度を持つ!」
(ふむ、ただのアダマンタイトか。)
「喰らえ!」
悪魔公がリアに剣を振り下ろす、
しかし、
ガキィィン!
タンスラが間に入り、壁の様に変形、防いでみせた。
反動で魔剣は後方に吹っ飛んだ。
「バカな、、バカなバカなバカなぁぁぁぁぁ!!」
悪魔公が激怒する
「この魔剣は、ミスリルを断ち切るのだぞ!」
悪魔公は切れ散らかしているが、当然だ。
タングステンは通常のアダマンタイトに
匹敵する強度を持つ、では
何故アダマンタイトが武器に使われるか、
軽く、魔力の通りが良く、魔力を通すと更に硬化する
アダマンタイトに比べ、
タングステンは強度こそ同じだが、
重く、魔力の通りが悪い上、
一般に流通しているタングステンは、
鉄が混ざっており、錆びやすい。
アダマンタイト製のグレートソードは
およそ4kgだが、
タングステン製なら
およそ8kgにまでなり、まず振り回せないのだ。
だが、タングステンスライムは純度100%、
滅多に錆びず、錆びても自己再生で修復される、
更にタングステンスライムは変形硬化スキルがあり、
強度は一時的にアダマンタイトをも
超えるかもしれない。
「こんな、こんなはずでは、、、魔剣よ!」
そう言いながら振り返った悪魔公が崩れ落ちる、
後ろには、ダイスラのダイヤモンドカッターで
バラバラにされた魔剣だったものが散らかっていた。
「あ、あぁ、、魔剣が、、」
「トドメ、行きます!〘聖光穿」
「〘魔導暴走〙!」
アイリスが光攻撃魔法を加えようとした瞬間、
悪魔公が切り札を切る
〘魔導暴走〙
魔力を暴走させ、10分戦闘能力を引き上げる、
悪魔の切り札、
ただし、代償としてその後1時間魔法行使が
出来なくなる。
でも、、
「〘大気断裂〙」
バスッ!
「ガ、ハッ、、」
ドサッ
悪魔公が地面に崩れ落ちる。
「丁度5分、時間切れだ。」
レイの魔法であっさり斬り伏せられた。
「さて、帰ろうか。」
レイがそう言うと
「そうね、」とアイリス
「結局私あまり役に立たなかったな、、」と、リア
「まぁまぁ、」とニーナ
「お腹すいた、黒、ご飯」
「、、、」
レイはゆっくりと目線をそちらにやる
紫色の紋様が刻まれた黒い外套、
胸についている、
調律者ということを証明する公認識別旗。
「、、、なぁ、もう少し待てなかったか、紫」
すると、フードをとり、頰をむくませ言う
「いつもみたいに呼んでくれないの?」
紫がそう言うと、レイは半分呆れながら
「はいはい、帰ったらご飯食べような、リズ」
「え?」
アイリスは、レイが言った名に疑問を持っていると、
後ろで立ち上がる悪魔公、
「、、ガァァァァ!!」
紫に向かって走る。だが、
「邪魔、」
すると、悪魔公がピタリと動きを止める。
レイが笑いながら言う
「アイリス、ニーナ、リア、よく見てろ、
これが調律者第七議席、紫の実力の一端だ。」
「〘結界糸の領域〙」
よく目を凝らすと、太さ1μmも無い糸が
ビッシリと張り巡らされていた。
「さようなら、【断】」
紫が右手で縦と横にヒュッと切る動きをした瞬間、
パスン、という微かな音と共に
悪魔公が文字通り、十字に切り裂かれた。
死体が灰になると宝箱が出現した。
「宝箱だ、どれどれ、、」
レイが開けると、中には、
「悪魔公の魔剣、、の残骸、、、」
恐らく本来は悪魔公の魔剣が手に入ったのだろうが、
ダイスラにバラされたためこうなったのだろう。
「、、、帰るか。」
『そうだね、、』
アイリス達はそう言って階層移動の魔法陣に触れる。
レイは、
「先に行ってくれ、俺は用事がある。」
そう言い単独で転移した。
〜〜〜
「ただいま〜!」
ニーナがそう言いながらソファーにダイブする
「疲れた、、」
リアがそう言いつつソファーに腰掛ける
「ただいま、帰ったぞ。」
レイが言う。
「えっと、、レイ?2つ聞いていい?」
アイリスは恐る恐る聞く
「どうした?」
アイリスは、ゆっくりと口を開く
「何そのスライム軍団」
そこには、先刻までいたダンジョンにいた
スライム各種だった。
「いいだろ?全部俺の従魔だ。」
「、、要件ってそれ?」
「こいつらを片っ端からテイムして、
ギルドに登録してきた。
受付嬢が後半目が死んでたがな。」
アイリスは後ろにいる、
少なく見積もっても
50匹は居るであろうスライムを見て
数え切った受付嬢に敬意を持った。
「後もう一つ聞いていい?」
「なんだ?」
「、、、なんで紫さんをおんぶしてるの?」
レイが困った様に言う
「自分で歩けと言ったんだが、聞かなくてな、、」
リアが口を挟む
「と言うかリズって誰?」
レイが後ろにおぶった紫を見ながら言う
「こいつの名前だ、仕事の名前
ではない、こいつの本名だ。」
レイがそう言いながらウトウトしている紫をソファーに下ろす。
「さて、飯をやらねぇと、」
レイの言葉にアイリスが言う
「私が作ろうか?」
レイが困った様に言う
「すまんな、こいつの食事は、俺以外が作ってもあまり意味が無いんだ。まぁ、料理を見たら分かる。」
10分後
「リズ、ご飯だぞ。」
レイが置いたのは、
アイリス達もレイが作ったのを食べたことのある
ごく普通の炒飯だった。
「食べる。」
リズがモグモグ食べていると、ニーナが、
「私も食べる!それ美味しいよね!」
しかしレイが言う
「わかった、今新しく作るよ。」
だがリアが言う
「まだ余っているし、それでいいぞ?」
レイがため息をつきながら言う
「じゃあ、1杯出すから食べてみな?」
そう言いながらレイが出した炒飯をニーナが食べる
「いただきま〜す」
そう言い一口食べたニーナが、飲み込むと、
カタン、とスプーンを置く
「、、、???」
「ニーナ?」
ニーナが口を開く
「、、、ごめん、お腹いっぱい、、」
リアが困った様に言う
「はぁ、じゃあ私が食べるから頂戴。」
そう言い一口食べたリアは、
同じ様にスプーンを置く
「、、、お腹いっぱいだ、、」
「え?え?一口食べただけだよね?」
アイリスが困った様に言うと、
レイが口を開く
「この料理はな、特殊な魔法が掛かっているんだ。
それが、満腹感×100という特殊な魔法だ、
つまり、スプーン1杯がスプーン100杯分に
感じるだけの魔法だ、栄養も、量も変わらない。
そうしないと、
こいつはお腹いっぱいになれないんだ。」
アイリスが、思い出したようにこぼす
「、、〘暴食〙、、なの?」
レイが頷く
「スキル暴食、アイリスは知ってるな、
凄まじい戦闘能力を付与し、
相手のスキルや魂さえも喰らい、奪うスキルだ。
代償に、決して満たされない空腹を感じるんだ。
そして、その空腹は、ある物をかけ続けると
紛れるんだ。」
リアが聞く
「それは?」
「それは、、」
レイが紫の隣に座ると、
食べ終わったらしい紫がレイの膝を枕に
寝息を立て始める。
「、、両親の愛情、愛に飢えるが故、
それを紛らわすための食欲なんだ。
だから俺が入ってからは、こいつは俺を家族だと、
そう思い込み、失った実の両親を思い出さないようにしている。」
レイが紫の頭を優しく撫でる、
少しどころか、完全にただの少女の
彼女を見ながら、レイは語る
「こいつの種族は劇毒悪魔蜘蛛。今は、な。」
レイはポツポツ語る
「これは、こいつがまだ、人間だった頃の話だ」
アイリス達は、その言葉に、ただただ絶句した
それは、紫と言う少女の、過酷な人生だった。




