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小学生の安岡信吾の父親は経営者で、地元のテレビへの出演歴がある。そういうわけで信吾の父親は地元では有名人だった。ところが信吾の父親がテレビに出演した際、
「やっぱり男は結婚しても浮気してなんぼですよ」
と発言したことがきっかけでSNS上であっという間に炎上してしまう。不倫社長という言葉がSNSでトレンド入りしてしまうほどだ。
それをきっかけに信吾は、不倫社長の息子だといじめられるようになる。帰り道、背中に「僕のお父さんは不倫社長です」と書かれた貼り紙を貼られたこともあった。駄菓子屋のおばちゃんが気づいて貼り紙を剥がし、信吾に優しく声をかけてくれたのだ。
時が過ぎ、信吾は高校生になった。駄菓子屋のおばちゃんの孫娘である多喜桃七と同じクラスになり、信吾は世間の狭さに驚く。
「小学生の頃いじめられて、お前んとこのおばちゃんが励ましてくれたんだ」
信吾が打ち明けると、桃七本人も世間の狭さに驚いていた。