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決着〈ヴァルナーガワンピ〉VS〈マイトレイルワンピ〉

 天水晴那 AP2530 VS 福山美祿 AP2200



「残った靴だけで、こっちの効果に刺さる迎撃用のエースを引っ張り出すどころかシリーズのフルコーデで盛り返すとは。このしぶとさ、マジで鼈みたいだな」


「前のターンで、靴だけになったからって迂闊にスタンバイにしなくて正解だったね」



 笑顔になるほど全力でこの対決を楽しんでいた美祿も、最後に与えられたターン中の勝負になると真剣な面もちになる。



「相手の総APが微妙だからって、急ぎすぎるなよ!」


「分かってる! あたしのターン、ドロー!」



 迎えるドローフェイズ。


 美祿がデッキからドローしたことで、本当のラストターンが始まった。



「あたしは手札からミュージックカード〈ワシュワシュブラッシュ〉を発動!」



 ドローした直後に確認して直ぐに美祿が読み込ませたのは、塗料で斑に汚れた筆洗い用の黄色いバケツの中に、透き通った水が溜まっているノスタルジーあふれるイラストジャケットのミュージックカードだった。



「このカードは手札一枚をランドリーに送ることで、〈グラフィティーカンバス〉ブランドのコスチュームを一着手札に加える! あたしは、手札のアクセサリー〈コレクションホワイトクィルペン〉を捨てて、デッキから〈ブルーリンクシューズ〉を手札に加える!」



 この状況で活用できない低APのアクセサリーをコストにして美祿が呼び寄せたのは、効果を代償に800という高いAPを持つノーマルコスチューム。



「シューズを選んだってことは、美祿の奴はもうAPのレースに切り替えるようだな」



 既に着ているコスチュームの下に重ねてAPだけをあげる手段――アンダーコーデをするための条件には、まずカテゴリーが同じでないと行けないルールがある。


 ビャコの読み通りなら、美祿は一ターンに一度だけ与えられた通常コーデの権利をアンダーコーデに回すつもりだが、アンダーが加わった途端に一掃効果を発動させる〈マイトレイルワンピ〉用にではなく、ただAPをあげるためとしてシューズを準備していた。



「今の美祿のAPは2200! 今加えたシューズをアンダーコーデすればジャスト3000!」


「見え見えなのを承知で罠を張った覚悟は買うが、そんなの無視させてもらうぜ!」


「いいや、そのワンピにはもうひと暴れさせてもらう!」



 マスコット同士の煽り合いに割り込むように、私は一枚の伏せカードを起こした。



「アクシデント発生! 〈二粒のべっこう飴〉! お互いがコスチュームを一着以上着ている場合、私は自分と相手コスチューム一着ずつを対象に〈シェルベッコ・チャーム・トークン〉を一つずつつける!」


「ここで強制アンダーだと!」


「私の側には〈ヴァルナーガワンピ〉。そして、あんたの方には当然〈マイトレイルワンピ〉に〈シェルベッコ・チャーム・トークン〉をつける!」



 べっこう飴と鼈甲とは、単に飴の色が鼈甲に似ているから付けられたという語源の関係なだけであって両者は全く違う物。


 だが、イラストに描かれたのと同じ、透明な包装にくるまれた二個のべっこう飴を二人に分け与えるように、効果を発動させたカードが、甘いお菓子と同じ色の飾りがついたチャームを、私達のエースであるワンピに一ずつ配った。



「トークンが〈マイトレイルワンピ〉にッ!」


「やべぇ、この効果は止められねぇ!」



 色だけ似ているが喰えない飴がつけられたことで癪に障ったのか、こちらの予測通り、発動させたくなかった着者の意志を無視して、〈マイトレイルワンピ〉が効果の起動準備に入った。


 背面の翼型パーツに光が一回り大きい羽になるまで集結し、限界に達した直後に無数の光の針となってスタジオ中に発射された。



「来たぞ、アサルト・アイオン!」



 降り注ぐ針の雨に全ての衣装が葬られる前に、ビャコが合図する。



「この瞬間! 〈ヴァルナーガワンピ〉の効果! 相手の効果によってランドリーに送られる効果が発動した時、〈RDティアーズ〉ブランドの衣装を脱ぎ捨てることで無効にし、そのコスチュームをランドリーに送る!」



 コストとして脱ぎ捨てるのは、既にワンピにつけられた〈シェルベッコ・チャーム〉。


 豪雨の如く降り注がれる光槍の群が着主に刺さる前に、自ら泡となって消滅する。


 生け贄として捧げたチャームの力を得た〈ヴァルナーガワンピ〉が、着主を守るために巨大なシャボン玉のドームで私を包みこむ。


 針でも刺せば壊れそうなその透明な膜は、全てを滅ぼす閃光を当てられても破れないどころか、そよ風に当てられているかのように膜が揺れるだけで確実に無効化してゆく。



「これで返り討ちだ!」


「行けッ! カラミティ・ドレイン!」



〈マイトレイルワンピ〉が放出させたエネルギーの波動が止んだのを合図に、そのお返しだと言わんばかりに私の〈ヴァルナーガワンピ〉が張ったシャボン玉の膜から、逆再生をするかのように受け止めていた光槍の雨を放ち返した。



「これでオレ達の勝ちだ!」


「――まだ終わってない! 返しのアクシデント発生! 〈ショックアブソーバー〉!」



 苦渋を舐めさせられた〈マイトレイルワンピ〉の退場から勝ちを確信して叫ぶビャコに、美祿が割り込んで伏せていた最後の一枚を起きあがらせた。



「――なにッ!」


「〈ショックアブソーバー〉は、相手が自分の衣装を対象に脱衣させる送る効果を発動させたとき、その効果では脱衣されない代わりに、効果を発動させた相手コスチュームの持つAPの半分だけコスチュームのAPをアップさせる!」



 要するに、そのアクシデントが発生したことで、〈マイトレイルワンピ〉は脱がされないどころか、効果を発動させた〈ヴァルナーガワンピ〉の持つAP1330の半分の数値だけ返ってアップしてしまうという、相手の効果を逆手に使用してAPを上げる効果。



 効果そのものの無効ではく、脱衣だけを免れる効果だが、それによって〈マイトレイルワンピ〉に〈ヴァルナーガワンピ〉の持つAP1330の半分であるAP665が加算されてしまう。



「まさか! APアップの本命は、こっちのカードだったのか!」


「こちらが〈マイトレイルワンピ〉を効果で脱衣させることを既に読んでいた……?」



 天水晴那 AP2530 VS 福山美祿 AP2200→2865


 

 効果を発動させた〈ヴァルナーガワンピ〉の持つAPの半分を、〈マイトレイルワンピ〉が吸収したことで逆転されてしまう。


 この洞察力や戦略にいたるセンスはきっと天部の才能。


 この娘は、きっと私達が感じている以上にすごいアイドルになる予感がする。


 福山美祿。


 遊生澄香に憧れて同じ世界に入ろうとしたアイドルの卵。


 前から強いとは思っていたが、感心する一方で歯をきしませてしまうほどの悔しさを覚えた。


 私でさえ、先輩の艶井鼎に加えて、元『サーキット・トライブ』の白波勇作という二人の伝説達に師事をうけて、やっと『ディーヴァス神姫』と対等に渡り合えるようになったのに。


 美祿が天水晴那――元ランク9遊生澄香の一手先を越えかけるレベルまで掛け上がれたのは、勇作Pと同じく幸神Pによる師事もあるのだろうが、あとは彼女自身が持っていた才能によるものだと認めざるを得ない。


 もしも、アートマンストラが腐敗せず彼女をちゃんとQ-key.333のメンバーとして迎えられていたら。


 または、私がアートマンストラの謀略によって追放されず、どこかのオーディションで対戦相手として立ち塞がっていたなら。


 彼女はまぎれもなく、私の――いやQ-key.333にとって最大のライバルになっていただろう。



「美祿ちゃん。あんたはさっき、私を笑顔にさせるくらい、強いアイドルになるって言ってたわよね?」


「え? う、うん! もちろん!」


「――その言葉……期待しているわ」



 いつか、美祿の前で自分がちゃんと遊生澄香として名乗れるように。


 私達が奪われたものを全て取り返して、平穏に戻れるそのときまで。


 潔白を証明する力を得るために私が支払ってしまった笑顔の感情を、福山美祿ならきっと蘇らせてくれるだろう。


 それを信じて、その前に必ずこの界隈に纏わり付く邪な闇を私達だけで払ってみせる誓いを立てて、私は伏せていた最後のカードを起こした。



「アクシデント発生! 〈誤謬の天秤〉!」


「お、お前! そのカードはッ!」



 誤謬。


 あやまりや間違いを意味する語句を冠したカードが、古く怪しげな天秤のイラストを見せながら起きあがった途端、ビャコどころかこのスタジオにいる全員が戦慄しはじめた。



「このカードは、APが変動する効果が発動した時、お互いのプレイヤーは、その上昇した分だけAPをアップさせる!」


「そ、そんなことをしたら!」



 手元でビャコが騒ぎ立てるとおり、これによって私にも美祿がアップさせた665ポイントのAPが直接入る。


 だが、それと同時に美祿の方にも同じポイントが再度入ることになる。


 本当はできれば使いたくなかったが、相手が実力を認めた美祿だからこそ、この場であっさり自分が負けるのだけは絶対に嫌だった。


 狭いスタジオの中に吹き込んだプリズムストリームが再び舞い込み、私達が向かい合うちょうど中間地点に風の固まりを成す。


〈プリズムドロー〉の時とは違う、カラフルな毛糸を玉にするように濃度の濃い虹色の空気が塊となり、綺麗を通り越して不気味な色合いの物体になるまで集合してゆく。


 今回の戦いはやけに溜めるカードと縁があるようで、カードの効果によって十分にプリズムストリームが溜まりきった途端、元々ほの暗かったスタジオの中がもう一段階暗くなった。



「次は負けないわよ」


「うん! あたしも負けない!」



 無表情で期待する天水晴那に、福山美祿がほの暗い空間の中でも光って見えるくらい眩しい笑顔で返した。


 その直後、交わし切った言葉を皮切りに、床の上で密集していたプリズムストリームが暴発し、私の視界が虹色に染まった。



 天水晴那 AP2530→3015→BURST VS 福山美祿 AP2865→3530→BURST

次回から(一時的な)最終章


ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「いいから早く決闘しろよ」


と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。

また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、

思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。


あとブックマークもいただけるとうれしいです。


細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!

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