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天敵の閃光〈アサルトアイオン〉

 天水晴那 AP1555 VS 福山美祿 AP2200



「ほう? 我が傑作の〈マイトレイルワンピ〉の殲滅効果を完全に凌ぎきった上に、追撃のダウン効果すら相殺して現状を保ち続けられるとは。そのしぶとさと臨機応変さは、流石は二人の大物アイドルを師に持つ、恵まれた弟子というべきか」



 感心する幸神Pの意味深な語末の口振りから、彼自身は私の正体を知っているらしい。


 だが、今はそんなことを気にかけている場合じゃない。


 傲岸不屈でいて豪快奔放な幸神Pの性格をそのまんま衣装に落とし込んだような性能を持つ〈ミトロニオス マイトレイルワンピ〉。


 着主である美祿ですらまともに扱いきれていない化け物みたいな衣装に搭載された効果は、もはや魔法を通り越して兵器そのもの。



「やばいなぁ、あの総一郎が作ったコスチュームは、どうにもこちらの戦略と相性が悪い」


「特殊なアクセサリーを敵味方問わずにつける〈RDティアーズ〉と、逆に全てを拒絶する〈ミトロニオス〉。確かに対照的ね。相性悪いを通り越して天敵レベルだわ」


「だが、どんなに凄まじくてもしょせんは同じ効果を持つコスチュームだ! 封じられてしまえば、こっちのもんだ!」


「わかってる!」



 何よりも、こちらのデッキは勝つために入れた汎用カードをのぞけば、事実上は〈RDティアーズ〉のみの純構築。


 カード同士にシナジーがあるブランド単位なら、カードプールの面でこちらの方が多い。



「反撃だ、天水晴那! 勇作の作ったコスチュームの真価をあいつらに見せてやれ!」


「私のターン! ドロー!」



 我ながら感心してしまうほど、あの猛攻から無傷のままやり過ごした末に、やっと私のターンが巡る。



「私は〈ヴァルナーガコーラルワンピ〉の効果発動! 一ターンに一度、自身に〈シェルベッコ・チャーム・トークン〉をつける!」



 あの猛攻を凌ぎきったからなのか、心なしかヨレヨレになった珊瑚色のワンピースに、真新しいチャームがぶら下げられる。



「煌方陣展開! 〈ヴァルナーガコーラルワンピ〉と〈シェルベッコ・チャーム〉の二着を素材に、リンケージコーデ! 現れろ、レアリティSR〈RDティアーズ ヴァルナーガスカート〉!」



 今回の対決で初めて出したであろう赤い煌方陣に対して、本家であるこちらが広げた青い煌方陣の光に当てられたワンピースとチャームが一つになり、一着のスカートへと生まれ変わる。



「〈ヴァルナーガスカート〉の効果! 一ターンに一度、コスチュームに〈シェルベッコ・チャーム〉をつける! この効果でチャームをつけられたコスチュームは、チャームが外れるまで効果によってランドリーに送られない効果が付与される! 私は〈ヴァルナーガスカート〉自身にチャームをつける!」



 魅力を半減されたワンピと交代して、おろしたてとして舞台に立ったスカートに、いかなる災厄からも守る神聖さを表しているようなターコイズ色のオーラを纏ったチャームが飾られた。



「そして〈RDティアーズ ミルタニートップス〉を通常コーデ!」



 次いで上半身に着せたのは、鰭のようなフリルを多めに使用しているヴァルナーガシリーズと意匠は似ているが、深海に対して浅瀬を表すかのような空色のトップスだ。



「〈ミルタニートップス〉の効果! このカードがコーデされた時、自身に〈シェルベッコ・チャーム〉をつける!」


「ワンピースを崩して、スカートを出したってことは、次に呼ぶのはトップス!」


「この状況で残るヴァルナーガシリーズといえば、あいつか!」



 美祿とリユがこの展開に何かを悟って声を出す最中、私はかまわず靴のつま先で床を踏みつけるように効果を起動させる。



「再び、煌方陣展開! 〈ミルタニートップス〉と〈シェルベッコ・チャーム〉を素材にリンケージコーデ! 現れろ、レアリティPR〈RDティアーズ ヴァルナーガジャケット〉!」



 清涼色をしたフリルいっぱいの正統派アイドル衣装が煌方陣によって、鯨か鯱を思わせる黒艶の皮ジャケットを羽織ったパンクロック調のトップスへと生まれ変わる。



「〈ヴァルナーガジャケット〉! あのトップスの持つ効果って、たしか……!」


「フルコーデ状態でつけられたチャームの追加効果は厄介だ! あれによって二人の『ディーヴァス神姫』に致命的な一手を与えたといっても過言じゃない!」



 アイドルの卵から孵化するための準備をしながらも、黄黙天と戦った動画や紫智天との生放送決戦をちゃんとチェックしていたのか、美祿やリウも私がやろうとする戦術が読めたらしい。



「こいつは、【黄黙天】の沈黙を破り、【紫智天】のお気に入りブランド〈ハオマネクト〉春の新作を封じた番狂わせ専門のMVPトップスだ! こいつさえ着ていれば、そのじゃじゃ馬ワンピだろうが、もはや次弾装填役に成り下がったシューズだろうが、なんだって発動することができなくなるぞ!」



 本来は着るだけでは効果事態は適用されず、一定の条件を満たす必要がある。


 強い効果故に条件は少し重いが、既にヴァルナーガシリーズのフルコーデという条件は満たした。


 私がほかのヴァルナーガシリーズと一緒に、このジャケットを着ている限り、新たにチャームをつけられたコスチュームは、問答無用で効果が無効にされる。



「〈ヴァルナーガジャケット〉の効果――」


「そうはさせない!」



 発動を宣言しきる直前に、美祿が割り込んで伏せていたカードを立ち上げた。



「アクシデント発生! 〈モノクローム・ジャミング〉! このターン、二色以上の色を持っていないコスチュームは効果を発動できない!」


「――なッ! ここで色彩操作の効果!」



 衣装を作成する上で、普通なら色取り取りの素材が使われるが、ゲーム上――すなわちカードになる際は基本色もとい最も使用された色が情報としてカードに記載される。


 この色による分類は、美祿の使う〈グラフィティーキャンバス〉の効果から見る通り、効果の対象になる一種の識別として使われている。



「今着ているヴァルナーガシリーズは黒一色! このターンだけだが、フルコーデ効果も発動不能! 残念だったな!」


「くっそお! なんつー逆メタ効果だ! まさにアクシデントだな!」



 ギリギリの回避に勝ち誇るリユに対して、今まで以上に悔しがる声を出すビャコ。


 こいつもこいつで、久しぶりにあう同僚にしてライバルと対峙することで、何か思うところがあるのだろうか。


 警戒されてないと思っていたわけではないが、逆にこちらの効果が見事に封じ返されては、これ以上どうしようもない。



「私はカードを二枚準備してターンチェンジ」



 天水晴那 AP2400 VS 福山美祿 AP2200


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