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アイドル達の祭典『アルカナカップ』シリーズ

「どうかな? 草薙さん」



 祝杯に挙げられた月見酒の酔いが醒めた。


 オーディションという激戦の連続による疲労と酷い乗り物酔いによって丸一日寝込んだことですっかり全快した私は、宿直室から出て早々に草薙さんから手渡された服に着替えた。


 その服は、どこかの学校が指定する学生服に似た服飾セット。


「学生服に似た」と表現したのは、トップスがブレザーともセーラーでもなく、ケープを羽織った様な独特なデザインをしているから。


 ぱっと見はフォーマルな礼服だが、デザインそのものや柄にチェックを用いているそれは、どちらかとカジュアルに寄せている。少なくとも、こんな制服を指定している学校は、この近辺にはない。


 デザインがかわいいことに加えて特筆すべきはこの着心地。


 どうもこの服を構成する素材は本来の学生服で使われている布をいっさい使ってなく、まるでスウェットを着ているかのように全身が自由に動かせられる。



「似合ってるじゃないか。肝心の着心地はどうだ?」


「学校の制服っぽいのに、レッスン着みたいにすごく動きやすい。このままパフォーマンスができるくらい。でも、このコスチューム、カードにはしないんだね」


「制服ってのは正解だな。そいつは戦力用じゃなくて、ユニフォームとしてデザインしたものだ。名付けるならそうだな……〈RDティアーズチェックユニフォーム〉だな」


「ユニフォーム? 私、〈RDティアーズ〉のモデルアイドルになった覚えはないんだけど……」



 〈RDティアーズ〉は、白波勇作が妥当Q-key.333を目的として復讐の使者である天水晴那専用として開発された極秘ブランドであり、商用として展開などされていない。


 むしろ、現在はQーkey.333を葬る曰く付きのブランドとして世間に売り出すどころか逆に顰蹙を買っていた。


 あくまで私が天水晴那と名乗り勇作達〈アクアクラウン〉と手を組んでいるのは、Q-key.333への復讐が完了するまで。


 私は自分の名誉が元通りになって無事に故郷に帰れるようになったところで、再びアイドルと名の付く職業を続けるかは考えてない。


 肝心の制作者である勇作自身も、全てが終わった後で復讐のために編み出した〈RDティアーズ〉を公開して、改めて商業用に展開していくのかどうかさえわからない。



「まぁ、そう冷たいことを言うなよ、勇作がしょんぼりするぞ。前まで闇討ち用に拵えていた奴はお前が吐いてダメにしたわけだし」



 不可抗力とはいえ、せっかく勇作Pがくれたパーカーがゴミ袋行きになってしまったことを改めて告げられて、私は罰が悪くなった。



「た、確かに学校の制服やQ-key.333のユニフォームよりも断然可愛いし、いつでも着ていいなら喜んで着るけど……」


「それに、この梅雨があけたら、いよいよアルカナカップシリーズが開催されるんだ。いつまでも、あんな地味なパーカーとジーパンだけじゃあ、今話題の天水晴那に泊がつかないだろ?」



 アルカナカップシリーズ。


 それはプリズム協会が主催する六月から一二月の半年間にかけて定期的に開催される大型エンプリス公認大会の総称。


 冠するアルカナの名前の通り、タロットカードの大アルカナと同じ名称を冠した大会が数日に渡って開かれており、年の瀬に用意されたシリーズの最終戦にあたる女帝杯での優勝こそが、この年の最強アイドルに与えられる〈女帝〉の称号を得ることができる。


 ただし最後の女帝杯への出場条件は、主催者であるプリズム協会によって点数つけられた評価ポイントが規定以上あれば、誰でも最終戦に望めるシステムになっており、一連のアルアナカップに出場して優勝することはあくまでポイントを加算するための一つの手段であり、絶対の必須ではない。


 たとえば、この一年で大ヒットソングを上げたり、ドラマや番組で優秀な活躍を果たすなど、大会に出ずとも普通に仕事などを頑張るだけで加点する要素は多々ある。


 だけど、今の私みたいにアイドルを名乗りながら仕事とは無縁の活動をしている者や、雨羅刹那や葉鳥朔真など業界から干されたアイドルがエンプレス杯に望むためには、今月から定期的に開催されるアルカナ杯での優勝を繰り返して、点数を稼がなければならない。



「アルカナカップシリーズ……。本当は出たいんだけど、今の私達にそんな余裕はないよ」



 Q-key.333に所属していた頃は、いつも規定までポイントが足りなくて最終戦にすら出られなかったが、それでも毎年〈女帝〉の称号を夢見て、今年こそはと意気込んでいた。


 だけど、今の私はそんな最強の称号以前に、仕組まれて着せられた自分の汚名を晴らすことと、浚われた大葉リクを取り戻すという重大な使命を抱えている。


 のんびりと強さを求める余裕なんてあるはずがなかった。



「いや、むしろ逆だ」



 使命を理由に出場を控えるつもりだった私に、草薙さんがきっぱりと言い切った。



「お前がQ-key.333にダメージを与え、さらには今年の〈女帝〉候補であった『ディーヴァス神姫』から二天も落とした。天水晴那の快進撃によって、アートマンストラは確実に痛手を被っている。さらには脱退した紫智天の例の爆弾発言によって、一時的だが業界内でアートマンストラの信用も落ちかけている。こうなっては、前以上にQ-key.333の活動を自粛せざるを得ないだろう」


「前みたいに襲撃の場を相手が設けられなくなっているってわけね」


「ただし、アルカナカップシリーズの開催になると、そうは言ってられないはずだ。アルカナカップは、エンプリスによる最強のアイドル――女帝を決定する王座決定戦。まさに全事務所やアイドル本人達の名誉をかけた年に一度の祭典だ。Q-key.333はたとえ歯抜けになろうとも、残ったメンバーをフル投入してまで出場させて、最終戦に出せる目玉を意地でも投入しないと、国内最強のアイドルグループの名が廃るからな」



 確かに、一匹のアイドルにおびえてせっかくの女帝決定戦にQ-key.333の出場を停止させることはアートマンストラの誇りが許さないだろう。


 ただでさえ、天水晴那による損害や畏怖もあって売りにしていたフルオープンな活動を自粛している以上、Q-key.333各メンバーの評価をあげるにはアルカナカップに出場するしかない。


 国内最強の称号は伊達じゃなく、Q-key.333は10年間連続で女帝を排出しているのも事実。


 野良アイドルに負けた汚名を注ぐためにも、出場は避けられないだろう。



「大会という場で正々堂々と公の場で戦える。そうすれば、いずれ私達が欲しい情報を持っている奴と当たるかもしれない」


「少なくとも、ナガタマホ本人か知り合いが出る可能性は高いはずだ」



 幸いにも、アートマンストラをのぞく芸能事務所はアイドル産業で叶わないと悟っているのか、アルカナ杯への出場を諦念しており、ここ数年は出場者がQ-key.333一色だけで占められている。


 一部からアルカナカップとは名ばかりのQ-key.333だらけのイベントだと揶揄されている状況が毎年恒例になりつつあるが、こちらからしてみれば、Q-key.333のメンバーのみを無駄なく狩れる好都合にもなっている。


 そして、今の自分達には「ナガタマホ」という手がかりがある。


 負けて強制脱退された元メンバーに聞き込めば、運良く手掛かりが手に入るか、無くても天水晴那の目的が拡散される。


 当面の目的は決まった。


 今まで霞を掴む思いで文字通り闇雲にQ-key.333に挑んでいた最中に、唯一の手掛かりともいえる光明が指したのだ。



「――ん?」



 草薙さんとの話の最中、私は妙な違和感を覚えた。


 アルカナカップ出場の利点に納得ができるほど話が進んでいるのが逆に違和感だと思うくらい、何かが足りない。


 だが、その「足りない何が」の正体が何なのかがわからない。


 私はついその「足りない何かの」正体を探すべくあたりを見回した。


ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「いいから早く決闘しろよ」


と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。

また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、

思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。


あとブックマークもいただけるとうれしいです。


細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!

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