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珊瑚の慈装〈ヴァルナーガコーラルワンピ〉

「それはどうかな」



 催促される降参を一蹴し、私はフラフラになりながらも【紫智天】との勝負に戻る。



「――私は、この時を待っていた!」


「…………ッ!」



 宣言したのは願っていた敗北ではなく確信した勝利。


 私の放ったこの一声はアリーナ中に轟き、【紫智天】は目を丸くするほど驚愕し、同時に騒いでいたギャラリーもぽかんとしていた。


 誰しもの頭の中によぎる疑問によって静まり返ったこの空気の最中、私はついに最後の手札をビャコに読みとらせた。



「私はミュージックカード〈シンデレラリトライ〉を発動!」


「ランドリーから任意のコスチュームを復活させるカード。でも彼女のランドリーには……」


「蘇れ、〈ヴァルナーガワンピ〉!」



 絶対に勝利へ導く二足目のガラスの靴となって、私のエースコスチュームが再び洗濯籠を経てステージ上に復活した。



「〈ヴァルナーガワンピ〉の効果! このコスチュームに〈シェルベッコ・チャーム・トークン〉を一つつける!」



 この決戦での初登場時は相手によって無効にされたが、それをする術を使い切ったことで、今度こそ邪魔されることなく鼈甲のチャームがワンピにつけられる。



「〈ヴァルナーガワンピ〉の効果! このコスチュームのAPは両者の場にある〈RDティアーズ〉の数だけ一〇〇ポイントアップする!」


「しかし、それを使ったところでキミのAPは1780ポイント! 無駄な努力だ!」


「これで終わりじゃないわ」


「なんだと?」



 次々と自身の予想が外れる展開が迫ることで、【紫智天】の顔が歪む。



「――煌方陣展開!」



 舞台を踏んで靴音を鳴らし、私はシューズの効果を起動させた。



「私は、ワンピとシューズに付いた二つの〈シェルベッコ・チャーム・トークン〉を素材にして、リンケージ・コーデ!」


「ワンピの火力源をここで使うだと!」



 驚く【紫智天】の反応などお構いなしに、衣装についた二つの鼈甲の飾りが液状化して結合し、一つの物体へと変化してゆく。



「現れろ、レリティSR〈RDティアーズ ヴァルナーガベル〉!」



 呼び出したのは衣装ではなく、敬虔な彫刻を施された小さい木槌型をした小物。



「ガベル……。裁判官の持つあの木槌?」


「いや、それを模しただけのハンドベルさ」



 普通のトンカチみたいに持ったそれをベルとして柄を持ち直すと、カランとベルらしい音がなる。


 槌の部分が空洞になっており、少しでも傾けると中身のクラッパーが外郭を鳴らす。



「〈ヴァルナーガベル〉の効果! このカードを捨離することで、ランドリーのトゥルーワードミュージックを手札に加える。ただし、この効果を使用したターンの終わりに自分はスタンバイを宣言しなければならない」



 摘んだ柄を軽くふるって改めてベルを鳴らすと、役目を果たしたベルそのものは消え、代わりにトゥルーワードミュージックとなって私の手に納められた。



「強制スタンバイと引き替えにトゥルーワードミュージックの再利用だと? しかし、そのカードを使って私に最大三個の〈RDティアーズ〉を送りつけたところで、その合計APは2000すら届かないはず……。一体、何の意味が?」


「あるんだなぁ、それがッ!」



 ブツブツと思考を口に出す【紫智天】に、ビャコが煽るように言葉を拾った。



「これが、最後のリンケージ・コーデだ! 煌方陣展開!」



 爪先で地表を捻るように引き絞り、私は舞台を豪快に蹴って煌方陣を広げた。



「な、何をする気だ!」


「私は〈ヴァルナーガワンピ〉と〈ヴァルナーガシューズ〉の二着を素材に、デッキから新たな〈RDティアーズ〉コスチュームを追加コーデする!」


「エースとエンジンを素材にするだと!」



 復活したエースと今までずっと盤面を支えてきたシューズが役目を終えて水に変わる。



「コスチューム・ディゾリューション!」



 そして、新たな力となるべく互いが繋がり、一着の衣装へと生まれ変わってゆく。



「見せてあげるわ! これが、あんたが蔑んだ〈RDティアーズ〉の可能性だ!」



 変形を終えた水達が弾けたその下から、桃色と白のグラデーションカラーを携えたワンピースが姿を現した。



「現れろ! レアリティPR〈RDティアーズ ヴァルナーガコーラルワンピ〉!」



 同じブランドから出た〈ヴァルナーガワンピ〉が、魚類の鰭を彷彿とさせるフリルで飾られたゴシック調に対して、全体の装飾が海底で授枝状の群体を成す八捨珊瑚を模したような華やかなデザインを施したガーリーテイスト系に寄った新作コスチューム。



「〈RDティアーズ〉の新作だと! まさか〈RDティアーズ〉はまだ進化する可能性を秘めているとでもいうのか!」



【紫智天】のデータにないのも当然だ。


 この色と意匠が変化した新しい〈ヴァルナーガワンピ〉は、勇作Pが、Q-key.333に奪われたデッキを取り戻すために作ってくれた新しい力なのだから。



「〈ヴァルナーガコーラルワンピ〉の効果! 私がこのカードを着ている限り、場にある〈RDティアーズ〉ブランドコスチュームは、APが100ポイントアップする!」



 お披露目できた〈ヴァルナーガコーラルワンピ〉のAPは、ベースである〈ヴァルナーガワンピ〉と同じく1230。


 そして、このコスチュームの効果の影響は自身も含まれるため、普通に出すだけでAP1330へとアップする。



「フン、新作を意気揚々と公開したようだが、随分と高い買い物だったじゃないか。折角、エースと軸を素材にして出したものがそんな効果では、とても私に追いつくことはできない。ましてや、ここでトゥルーワードミュージックを出してAPアップを図ろうとも――」


「いいや、私が〈ヴァルナーガコーラルワンピ〉を出せた時点で、あんたはもう詰んでいる!」


「なんだって?」


「物分かりが悪いなぁ、俺がもう一度説明してやる。こいつが〈ヴァルナーガコーラルワンピ〉を着続けている限り、APが100アップするのは、〈RDティアーズ〉ブランドの方。つまり、ワンピの効果が適用されたこの状況で、こいつがもう一度トゥルーワードミュージックを発動すると、どうなると思う?」



 トゥルーワードミュージック〈因果の常海マリンパニッシュメント〉の効果。


 それは相手が着ているコスチューム一着につき、〈RDティアーズ〉ブランドである〈シェルベッコ・チャーム・トークン〉を一つずつつけることができる。



「な、な、まさかッ!」



 解説をされてから全てを察した【紫智天】が、目を見開いたまま青ざめる。


 着せかえ型アイドル系カードゲーム、《エンプリス》。


 その勝利条件には、自分が出したコスチュームによってAPの高さを競うのと平行して、もう一つ守らなければならないルールがある。



「もう一度発動! トゥルーワードミュージック〈因果の常海マリンパニッシュメント〉!」



 再び手にしたトゥルーワードミュージックをスキャナーに叩き付ける。


 もうプリズムストリームに派手な演出を披露する余裕がなくなったのか、発動してすぐに【紫智天】の着ている3つの衣装に同じ数だけのチャームを出現させた。



「そして〈ヴァルナーガコーラルワンピ〉の効果発動! コーラルガーデン!」



 着主の命に従い、〈ヴァルナーガコーラルワンピ〉が柔らかい桃色のオーラを纏いながら、効果を発動させる。



「AP数値のレースで勝てないなら、代わりにバーストを狙わせてもらったぜ!」



 お互いのアイドルはAPの合計値が3000を越えない範囲内で高さを競い合わなければならない。


 すなわちAPが3000を越えてしまったプレイヤーは、その時点で強制的に敗北となる。


【紫智天】の場に新しい〈RDティアーズ〉ブランドが現れたことで、同じブランドのコスチュームのAPが100ずつアップされ、元々APを持たない〈シェルベッコ・チャーム〉が効果によってAPが上がったことで、既にAP2800もあった【紫智天】にも余分なAPが合計300も加算される。



「そ、そんなッ! この私がッ!」



 鉄壁を誇る四枚のBGMにはバーストを止める効果もなく、頼みのワンピの効果ですら使い切ってしまったことで完全に成す術をなくした【紫智天】が慌てふためく最中、それぞれの衣装に付いていた三個のチャームがAPを与えられた途端、目を劈くほどの閃光を放った。



「う、うわああああああ!」



 天水晴那 AP730 VS 葉鳥朔真 AP3100→BURST

ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「いいから早く決闘しろよ」


と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。

また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、

思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。


あとブックマークもいただけるとうれしいです。


細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!

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