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復讐落涙〈RDティアーズ〉VS月光美酒〈ハオマネクト〉

 天水晴那 AP0 VS 葉鳥朔真 AP450



「ふふ、あの神姫殺しが緊急とはいえ随分と可愛らしい格好になっているじゃないか」


「それはどうも」



 そもそもキュート分類の〈スイーツリパブリック〉は、私の趣味ではない。


 頭頂部にでかく鎮座するキャンディー型の大きな青いリボンが、笑顔になれない私の鉄面皮のせいで、自分でもコメントに困るほど似合っていない。


 舞台外にいるギャラリーから放たれるヤジの中にも、ふつうに似合ってない、見ててキツいなどのコメントまで飛んでくる始末。


 そもそも、今みたいに絶体絶命の状況を返すために必要だからデッキに入れていたわけで、実際に着たところでまるで似合ってないのは重々承知だ。



「ビャコ! スキルを発動するわ!」


「よし! このターンで決めるつもりで行くぜ!」



 スキャナーの円形モニターが輝き、ビャコが再びアリーナに虹色の突風を呼び込んだ。


 如月梢との時とはちがって、今は身を縛るものがないため、いつも通り私を中心に渦巻く竜巻となってステージ上に虹色の風柱がそびえ立つ。


 虹色の風の密度は十分。


 自分の願いと伝えたい思いを胸に、私は竜巻の中へ手を突っ込んだ。



「希望を思い描け! 天水晴那!」



 強く願いながら胸に抱いた思いが、文字通り手の中で完全なカードの形となる。


 完成を感じた私は、それを掴んだ。



「〈プリズムドロー〉!」



 天に掲げた拍子にカードで空を斬り、周り囲っていた虹色の竜巻をかき消した。


 かなり強い風が吹き荒れていたのか、強風を真っ向から浴びたギャラリー側が、風で頭まで冷やされたのか随分と大人しくなり、もっとも近くで風を浴びていた【紫智天】もスタンドマイクが倒れないよう懸命に支え続けていた。



「やれやれ、発動する度に災害を起こすなんてはた迷惑なスキルだ。それにしても、随分と早いスキルの発動だね」



 強風で乱れた髪を手櫛で整えながら、【紫智天】が苦言をぼやいた。



「しかし、貴重なドローフェイズでのドローを犠牲にしてまで、そんな僅かな手札でどうするつもりなんだい?」


「本当の勝負はここからだ!」



 スキルで手に入れたトゥルーワード・ミュージックカードを手札に加え、私は改めて自分のターンを進めた。



「〈ラスタキャンディーディフィニ〉の効果! このカードが追加コーデされた次のターンのメインフェイズ時、自分のAPが0以下の場合、このカードを脱ぐことで、デッキから二枚カードをドローできる!」



 ターンを引き延ばす重要な役割を終えた〈ラスタキャンディーディフィニ〉が飴の様に解けて退場したことで置きみやげとして二枚のカードが加わる。


 幸運なことに、その効果で加えた手札の中に、更に使えるカードが来ていた。



「さらにミュージックカード〈ガーディアンエンジェルソング〉を発動! 手札のアクシデントカードを捨てることで、更にデッキから二枚ドローできる!」



 手札には丁度、相手によって発動できぬまま手札に戻されたアクシデントカード〈脱甲皮剥離〉がある。


 それをコストにして、私は更に手札を増強させる。



「これでトゥルーワードミュージックを除いたら、合計四枚の手札だ!」


「更に相手だけがコスチュームを着ている時、〈RDティアーズ サーフフェイスワンピ〉は追加コーデできる!」



 起死回生の一手として出したのは、小さい円鏡が鱗のように散りばめられた青いワンピース。



「APが0……。どうも、有力な効果と引き替えに魅力を失っているとみた!」



 私が出したワンピのAPが0であることに何かを察した【紫智天】が、ここで魔導書を開く。



「〈アブソーマトップス〉のコスチューム効果! フラグメント・プラナ!」



 トップスの効果――もといフラグメント・プラナが発動したことで、デッキからは一枚のカードが落ち、【紫智天】の持つ魔導書から一枚のページが破りとられる。



「発動されるのは〈アルテミ・ストラ〈スパゲ〉〉! その効果によって、〈サーフフェイスワンピ〉は効果が無効になり、ランドリーに送られる! これでキミは再び一糸も纏えまい!」


「やっぱりAP0につられて貴重なフラグメント・プラナを使ったわね」


「なんだって?」



 既に【紫智天】は発動の宣言を終えて、効果を帯びた梵字がまた私のワンピに纏わり付くが、それに呼応して〈サーフフェイスワンピ〉が青いオーラを纏い始めた。



「〈サーフフェイスワンピ〉が相手から効果の対象になったとき、その効果を無効にする!」



 梵字の魔方陣が完成しきる前に、ワンピについた小さい鏡が光を放って文字をかき消した。



「その後、〈サーフフェイスワンピ〉は〈サーフフェイストップス〉としてカテゴリーがトップスになり、同時に〈サーフフェイススカート・トークン〉をボトムスとして出現させる。そのAPは、相手の着ているAPと同じになる」



 マイク型スキャナーでの盤面では、ワンピースはルール上トップスへと変更され、隣にはトークンであるスカートが並んでいるが、肝心の着者の方には特に変更はない。


 それどころか真正面にある相手衣装の魅力を鏡に取り込んだことで、前よりも輝きが増していた。



「まさか、このために私にフラグメント・プラナを発動させたというのかい?」



 警戒するあまり、自身の効果発動のタイミングを見誤ったところでもう遅い。



「そして〈RDティアーズ ヴァルナーガシューズ〉をコーデ!」



 エースコーデは開幕から退場してしまったが、後続を出すために必要なエンジンとなる魔法の靴はここに残っている。



「そしてミュージックカード〈湖畔の恋人~重影~〉を発動!」



 発動させたのは、水面の側で二人の男女の影が向かうあうイラストが描かれたラブソングらしいジャケットの描かれたミュージックカード。



「自分の着ているコスチュームを二着まで選び、その下にAP0の〈シャドウトークン〉を生み出す! そのブランドとカテゴリーは重ねられたコスチュームと同じになる! 私はシャドウトークンの作成先に〈サーフフェイス〉のトップスとスカートを選択!」



 見た目はぜんぜん変わらなくとも、これで私の着ているコスチュームカードがシューズを除いて合計四枚も集まった。



「反撃への布石はこれで十分だ!」


「よし、〈ヴァルナーガシューズ〉の効果! 煌方陣展開!」



 キーを回してイグニションを灯すように、私はシューズを履いた右脚を持ち上げて鎚の如く地表を踏みしめた。


 カツンと音を鳴らし、爪先から青白い文字が並ぶ魔方陣が広がる。


 まずは〈サーフフェイススカート〉と〈シャドウトークン〉の二着を新たなコスチュームへと結合させる。



「リンケージ・コーデ! 現れろ、レアリティPR〈RDティアーズ ヴァルナーガパンツ〉!」



 新たに呼び出したのは、黒艶の光沢を帯びた皮製のホットパンツ型のコスチューム。



「〈ヴァルナーガパンツ〉のコスチューム効果! 一ターンに一度、コスチューム一着に〈シェルベッコ・チャーム・トークン〉をつける。この効果で付けられた〈シェルベッコ・チャーム・トークン〉をつけられたコスチュームには、相手が発動したカード効果でランドリーに送られない効果が付く! 私は〈ヴァルナーガシューズ〉に、防御効果付きの〈シェルベッコ・チャーム〉をつける!」



 真っ黒な本皮のロングブーツに、鼈甲色のチャームがつけられる。色合い的にチャームが嫌に目立っているが、お守りの役を担っている以上は仕方がない。



「再び煌方陣展開!」



 シューズ、ボトムスに次いで残る箇所は一つ。


 当然、素材にするコスチュームは、トップスとその影となっているトークンの二着。



「リンケージ・コーデ! 現れろ、レリティPR〈RDティアーズ ヴァルナーガジャケット〉!」


「――刹那の効果を封じ返したトップスか!」



 黄黙天との戦いで勝因となったトップスを目にした【紫智天】が、まさに因縁のある目で私の上半身に着られた衣装を睨む。


 相手が記憶しているとおり、このトップスはフルコーデ状態の時、新しく作成された〈シェルベッコ・トークン〉には、飾られたコスチュームの効果そのものを無効化するという封印効果が付与される。



「そしてヴァルナーガと名の付くコスチュームは、これで一式揃ったぜ!」


「さらにトゥルーワードミュージック〈因果の常海マリンパニッシュメント〉を発動!」



 スキルで作成したトゥルーワードミュージックを読みとらせると、本日二度目として再び私の足下から間欠泉の如く海水の水柱が聳え立つ。


 海水だけじゃない。


 まるで生き物の行進か百鬼夜行の如く、源泉から海洋生物までもが吹き出して噴きだす水と共に夜空の満月を目指した。


 天井が開かれたドームを突き抜けて、真っ直ぐに月まで延びた水柱は途中で湾曲し、一匹の竜か蟒蛇となって【紫智天】を飲み込むように大量の水をおっ被せた。


 もちろん、その中を昇るように泳いでいた海洋生物達も、【紫智天】に向かって突進する。


 罰ゲームで濡らされる量よりも遙かに大量の水を頭から被った【紫智天】だが、あいにく立体映像による演出のためズブ濡れにはならない。


 そのかわりに、彼女の着ている衣装一つ一つに、大きなチャームがつけられていた。



「鼈甲のチャーム……これが!」



 自分の服に意図せず送られたチャームを忌々しく掴み上げた【紫智天】が顔を顰めた。



「そういえば、お前につけてあげるのは今回が初めてだったなぁ~」


「トゥルーワードミュージックの効果で相手コスチュームにつけられた〈シェルベッコ・チャーム・トークン〉は効果もなくAPも0。でも、私が〈ヴァルナーガジャケット〉をフルコーデ状態で着ている時に作成されたトークンは、つけたコスチュームの効果そのものを無効化させる効果を得る!」


「つまりぃ~、お前さんがこの場でお披露目した〈ハオマネクト〉春の新作は、チャームのせいでAPが低いだけの布切れになったってことさ!」



 効果機動のオーラを放つジャケットに連動して、【紫智天】の服につけられたチャーム達も同じオーラを纏い始める。


 それによって効果を得たチャーム達は、【紫智天】の着る〈アブソーマ〉シリーズを蝕むように灰色へと変色させていった。



「これが刹那の敗因となった呪いの装飾品というわけかッ!」



 トップスの効果無効によって魔導書が霞となって消える。


 空いてしまった手を忌々しく握りしめながら、珍しく冷や汗まで流し始めた【紫智天】が苦虫を噛み潰したように歯をきしませる。


 元々強い効果と引き替えにAPが低かったのが幸いして簡単に数値が逆転できた上に、厄介な効果を持つコスチュームも封じることができた。


 ここでスタンバイを宣言すれば、仮にアクシデントを伏せられたとしても間に合わず、純粋に私のAPの高さによって勝敗が決まる。



「よし! このままこっちもスタンバイを――」


「それはできない」


「へ? なんでーよ!」


「相手のスタンバイ宣言時に〈スイーツリパブリック ラスタキャンディディフィニ〉を追加コーデさせたプレイヤーは、次のターンで必ずチェンジを宣言しなければならない」



 ここで締めれば理想的な終わらせ方になる。


 だが、残念ながら悪足掻きのために強引にルールを変えた代償は、ここで払わないといけない。



「私はカードを一枚準備してターンをチェンジする!」



 天水晴那 AP2200 VS 葉鳥朔真 AP450

ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「いいから早く決闘しろよ」


と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。

また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、

思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。


あとブックマークもいただけるとうれしいです。


細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!

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