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危機一髪の飴玉

 天水晴那 AP1230 VS 葉鳥朔真 AP450



「ターンを迎える前に、君に一つ質問してもいいかな?」


「できれば勘弁してもらいたいんだけど」


「まぁそう冷たくしないでおくれよ。すぐに済む質問だから」



 相手はこちらのマスコットと同様、話し出すと長い奴だからやんわり断ったつもりだが、強引にも押し切られてしまった。



「キミが使用しているのは〈RDティアーズ〉と言う聞いたことのないブランドのようだが、キミはもしかしてそのブランドのモデルアイドルなのかい?」



 モデルアイドル。


 それを聞かされて最初に思い浮かんだのは、アクアクラウンのモデルアイドル、大葉璃玖のこと。


 成り行きとはいえ、白波勇作Pという専属デザイナーが作ったデッキと、彼の側を拠点にして動いているわけだから、一応自分も同じモデルアイドルの分類なのか、一瞬だけ疑問が浮かんだ。



「いいや、こいつはモデルじゃねぇ」



 しかし、それはビャコが即答で否定した。


 だがいつもの軽口ではなく、何か癪にさわったのか妙に不機嫌な語勢で答えた。



「勝つためなら使えるカードはブランドを越えてなんでも使う。お前達Q-key.333をぶちのめすためにな」


「なるほど、急とはいえ時間を取らせて申し訳ないね」



 代理とはいえあれだけ無駄話が好きなビャコが、珍しく吐き捨てる用に答える。


 不躾だが満足のいく回答を得られたのか、【紫智天】も短く会話を切り上げた。



「なんか意味ありげな質問だな。もしも、オレたちが勝ったら、今の質問した意図ごとこちらの質問に答えて貰うぞ!」


「いいだろう。でも、もし私が勝ったら、キミにはそこの観客席へダイブしてもらおうか。ラフスタイルのロックバンドみたいに潔く頼むよ」



 ケタケタ笑いながら交換条件を言い伝える【紫智天】が、ふと舞台の下に集っているギャラリー席へと顔を向ける。


 私も釣られて首を横に向けると、そこには天水晴那によって夢と希望を蔑ろにされ、絶望のあまり般若よりもおっかない顔になってこちらを凝視する参加者達が、暴徒となってステージ前にひしめき合っていた。



「あの中に身投げしたら、正体がばれるどころかよけいに誰だかわからなくなりそうだな」


「まぁ事実、殺されても文句いえないことばかりしてきたからね」



 自分で撒いた種とはいえ、この乱闘一歩手前の状態になっていた参加者達のなれの果てに、さすがの私も引いた。



「では改めて私のターン、ドロー!」



 ドローフェイズを経て手札を一枚加え、【紫智天】は小脇に抱えていた魔導書を手に持ち直す。



「私はミュージックカード〈アルテミ・ストラ〈ソクリ〉〉を発動。手札のカードを、デッキの一番上か一番下以外で任意の場所に戻す。私は手札の〈アルテミ・ストラ〈パスラ〉〉をデッキの中央に戻す。その後、私はカードを一枚ドローする」



 一枚のミュージックを発動させると、手札にあった一枚のカードに、ワンピを無効化させた梵字とは異なる文字の魔方陣が現れる。


 効果はデッキの中で戻るはずだが、吸い込まれた場所は手の中の魔導書の中だった。



「そして〈アブソーマトップス〉の効果。フラグメント・プラナによってデッキから発動させるのは〈アルテミ・ストラ〈パスラ〉〉!」


「ん? 〈アルテミ・ストラ〈パスラ〉〉は手札にあったカードだろ? なんでデッキに戻してわざわざトップスの効果で使うんだ?」



 端から見れば、あのミュージックカードは特段発動が難しいわけでもなく、手札から簡単に発動できる。


 そのはずなのに、わざわざデッキに戻す行程を経てトップスの効果として使うなんて、明らかに無駄どころか利点を損にしているプレイングかもしれない。



「むしろ逆よ。【紫智天】の持つ〈アルテミ・ストラ〉は、フラグメント・プラナによる発動でないと真価を発揮しないの」


「――流石は神姫殺し。私のことは研究済みということか」



 そう答える【紫智天】の指には、魔導書から千切り取ったであろう〈パスラ〉に当たるページが掴まれていた。



「〈アルテミ・ストラ〈パスラ〉〉の基本効果は、相手のコスチュームをランドリーに送る破壊効果を備えている。だが、発動自体が〈ハオマネクト〉ブランドの効果によるものだった場合、その後で相手ステージに伏せられたカードを一枚手札に戻す効果が追加されるのだ!」


「破壊からの手札帰還ですか!」


「破壊の対象は〈ヴァルナーガワンピ〉だ!」



 唱えられた呪文のように手の中のページが再びトップスに新たな力を付与させると、今度はやけにおぞましい色をした梵字がワンピースのすぐそばに出現し始めた。



「まずいぞ! これでワンピがランドリーに送られたらスッポンポンだぞ!」


「わかってる! アクシデント発生〈水槽決壊〉!」



 破壊を与える梵字の魔方陣が完成する前に、私は伏せていた一枚を起動させた。



「相手が自分コスチュームにランドリー行きの効果を発動させた時、その効果を無効にする!」


「わざわざ無効化されたコスチュームを意地でも守るなんて涙ぐましいねぇ」


「ただ防ぐだけの効果じゃねぇ! 〈水槽決壊〉にはお前の〈アルテミ・ストラ〉の様に、状況次第で効果が追加されるのさ!」



 したり顔ができないのに、ビャコはずいぶんと偉そうにもったいぶった解説をする。



「〈水槽決壊〉は、効果の対象になったコスチュームが〈RDティアーズ〉の場合、相手コスチュームを全てランドリーに送る!」



 起き上がらせたカードに描かれたイラストの通り、プリズムストリームが演出として私を水いっぱいの水槽に入れて外敵から身を守らせる。


 この状態で水槽を壊そうとするなら、中を満たす水が流れ出して悲惨なことになる。



「そのまま無効にするだけならまだ良かったのに、返り討ち効果とは好都合だねぇ」


「好都合?」



 私がそう返している間に、【紫智天】は既に魔導書の一枚をちぎり取っていた。



「〈アブソーマスカート〉のフルコーデ効果! 一ターンに一度、相手がコスチュームをランドリーに送る効果を発動したとき、デッキからミュージックカード一枚をランドリーに送ることで、その効果を無効にする! 私はデッキの〈アルテミ・ストラ〈ソワカ〉〉を捨てて、キミの〈水槽決壊〉を無効にする!」


「「――なにッ!」」



 効果を付与する時と違って、コストにされたことで手にした一ページが発火して燃える。


 その塵が【紫智天】の腰に降りかかると、スカートは喜ぶようにオーラを放ち始めた。


 スカートが放つ効果によって、私の側で看板の如く佇む〈水槽決壊〉の前に、妙に神々しい光を帯びた梵字が出現し、災厄を沈めるように眩く発光しながらアクシデントカードを消した。



「これで邪魔者は全て消えた。キミの一張羅と伏せたカードにはご退場を願おう!」



 改めて現れたドス黒い梵字がワンピースと足下で寝ているカードに纏わり付く。


 そして方陣の完成と共にワンピースを脱がされ、伏せていたカードまで手札に戻された。



「これでキミに纏われた衣装や身を守る衣装は全て消えた! 次のターン、キミは私の低いAPをどうやって覆す気かな? 最後のターンで奇跡を起こしてみたまえ!」


「最後のターンって、まさか!」


「私はこれでスタンバイだ!」



 ビャコが予感するとおり、勝ちを確信した【紫智天】はAPの数値で煽るように、わずか450ポイントという少なさで終わりを宣言した。


 詰められる神殺しを前に、舞台の淵でべったり詰め寄っていたギャラリー達から無念が晴らされる歓声が起こる。


 それも乙女らしい黄色い歓声ではなく、デスメタルロックバンドのライブを思わせるほど下品な単語のコールを混ぜて。



「おい! どうするんだよ、晴那! このまま負けちまうと、脱落者達のリンチでミンチにされて、焼き目がつくほど炎上しちまうぞ!」



 真っ先に終わりを宣言され、人肉ハンバーグにリーチが掛かったことでビャコが一番焦って私に訴える。


 確かにあんな牽制力が強いカードを前に、ドローを含めて四枚になったとしても、実質三枚しかないこの手札だけで一ターンで逆転勝利するのは至難の業。


 それならば、無理に逆転勝利を狙わなければいいだけのこと。


 私は【紫智天】のスタンバイ宣言にあわせて、手札にある一枚を摘まみ上げた。



「相手が先にスタンバイを宣言した時、手札より〈スイーツリパブリック ラスタキャンディーディフィニ〉を追加コーデ!」



 状況は依然不利のままとは言え、条件が整ったことで、私はこの土壇場で一着のコスチュームを身にまとった。



「この効果で追加コーデされた〈ラスタキャンディーディフィニ〉は、相手が宣言したスタンバイを強制的にチェンジに変える!」


 ディフィニ。


 それはファッションの都フランスの言葉で一式を意味する。


 一枚で全てのカテゴリーをかねる便利なカードではあるが、このカードのように効果と引き替えにAPがないカードもあるため、主戦力として使うには向いていない上に、これ一枚で全てのカテゴリーが埋まってしまうため、他の衣装を続けて出すことができなくなってしまうなど欠点が多い。


 モニターに写るスタンバイの字が強制的にチェンジに代わる。


 憎き敵のピンチがチャンスにかわったことで、それまでご機嫌だったギャラリーから当然の様にブーイングが起こる。



「〈スイーツリパブリック〉だって!」



 海洋生物とゴシックを組み合わせた〈RDティアーズ〉ブランドから、拳よりも大きいキャンディーの飾りをふんだんに使った〈スイーツリパブリック〉ブランドの衣装を急遽纏った天水晴那の姿に、【紫智天】はスタンバイをチェンジに変えられたこと以上に驚いていた。



「だから言っただろ。こいつは勝つためにブランドを選ばないってな!」



 ビャコが私をモデルアイドルではないと否定した意味がようやく理解できた。


 カード効果によってルールによる終了宣言を強引に切り替えられたとはいえ、何とかゲームを続行できるようにはなった。



 天水晴那 AP0 VS 葉鳥朔真 AP450

ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「いいから早く決闘しろよ」


と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。

また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、

思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。


あとブックマークもいただけるとうれしいです。


細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!

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