自決プログラム
デスクの上で胡座をかいているビャコが、えらく真剣な語調で割り込んできた。
「なんでだ? 負けた後、運営に戻ってないからスキャナーはまだ手元にあるはずだろ?」
「ところがよぉ、実際はそうはいかねぇんだ」
腕と足を組んだ胡座の状態から半身を倒して猫らしく四脚でデスクに立て直ると、ビャコはその体制から私の右肩をめがけて軽やかに飛び移る。
「澄香、Q-key.333の鉄の掟『他所属アイドルに負けた場合、強制的に脱退させられる』とあるが、それがどういう仕組みで脱退させられると思うよ?」
「契約の終了?」
苦い記憶だが、とりあえず自分が強制的にされた脱退の方法を思い出して答える。
終了というよりかは、届け出に無理矢理サインさせられたようなものだったが。
「そんなアナログな方法じゃない」
「もったいぶらずに教えろ。手短にな」
早く正解を求めるあまり、勇作が厳しい口調で催促する。
「聞いて驚くなよ、マイク型ハンディスキャナーの自決プログラムだ」
「自決プログラム?」
「プレイヤーであるアイドルが敗北した瞬間、スキャナーの機能を全て自動削除される――文字通り自決するプログラムだ。確かあいつらが使うマイク型スキャナーは自社製だったよな。掟をその場で実行させるプログラムを入れるなんて、お茶の子歳々だろう」
自決という名前だけで不穏なのは明らか。
だけど、私もQ-key.333専用のスキャナーを愛用していたが、そんなプログラムが中に搭載されていたのは初耳だった。
最も、その物騒なプログラムが発動することがないほど、Q-key.333が別事務所のアイドルと関わる機会がなかったのはいうまでもないが。
「なんでお前がそんなことを知ってるんだ?」
元メンバーですら知らなかった隠し機能の存在を唯一知っていたビャコに草薙さんが尋ねる。
「おいおい、対戦する上で常に奴らのスキャナーと接続してんのはオレだぞ? ケーブルはなくなっても、オレたちマスコットのやってることは昔の携帯ゲーム機同士の通信対戦と代わらない。ただ、俺は自由意志があるから、奴らが独自で作ったシステムがどんなものか、自分の気まぐれで拝めるし、気に入ったのがあれば自作することもできたわけだがなぁ~」
「それで、あんたもスキルが使えるようになったのね」
「まぁな~」
「本当に抜け目のない奴ね、あんたって」
普段からもうちょっと真面目で大人しかったら良かったのに。
とはいえ、性格はともかくやるときにはやってくれるこの優秀なマスコットの頭は撫でるに値する。
思い返せば、本来スキルとはQ-key.333同士の対決を盛り上げる為に実装されたQ-key.333によるQ-key.333ためだけの特殊能力のはず。
それが登坂しおり戦の時、ビャコが私専用のスキルを発動することが出来るようになったのも、あらかじめQ-key.333のスキャナーを調べたからと言っていた。
あの時はちょいとレベルで語っていたが、あれほどの金星を上げてくれた強力なスキルをプログラムとしてゼロから生成できるのは、やはり腐ってもオリジナルマスコット故なのだろう。
「ということは、元ランク5は、新しいスキャナーを入手しない限り、戦力としては期待できないってことかぁ」
負担が減ると思ったのにまた苦労をかける羽目になると言いたげに、草薙さんは落胆しながら今度は私の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「あの性格だから、どっか別のプロダクションにちゃっかり移籍しているといいなぁ」
「それはまず無理ね。脱退させられたとはいえ、『ディーヴァス神姫』は全員殿堂入りしているから。強すぎてオーディションすら受けられない彼女たちを入れるような事務所はまずないでしょうね」
「はぁ?」
「殿堂入り?」
相槌が帰ってくるかと思ったら、草薙さんと勇作Pから予想外の反応が帰ってきた。
まるで、その情報が初耳だと言わんばかりに。
「おい、『ディーヴァス神姫』の一天が生放送で緊急記者会見をしてるぞ!」
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