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封殺の魔術衣〈ヴァルナーガジャケット〉

 天水晴那 AP2280 VS 雨羅刹那 AP2400



「ビャコ! このターンで決めるよ!」


「おう! 今から決定的な勝利を掴ませてやる!」



 ドローフェイズに入る直前に、私はビャコにスキルの発動を命じた。


 スキャナーのモニターが煌めき、それを合図にホール内という密閉された空間の中でうっすらと漂っていた虹色の風が、私を中心に集まってゆく。


 ザラメから綿菓子へと変わるように、私の周りを流れる虹色の風が徐々に密度を増し、やがて目の前が見えなくなるほどにまばゆい竜巻へと変貌してゆく。



「きゃー! カメラが! カメラがぁ!」



 演出ではない風はプレイヤー以外にも及び、撮影者である志帆がなんとかカメラの転倒を阻止すべく体を張る。



「な、なに? なにが起きてるの?」


『天水晴那のスキル〈プリズムドロー〉は、ドローフェイズ開始時、ドローを放棄する代わりに、プリズムストリームからトゥルーワード・ミュージックカードを一枚手札に加えられます』


「こ、この竜巻がプリズムストリームの集合体だって? こんなものを毎回扱えるのが、天水晴那のスキルだっていうの?」



 改めて自身の肉眼でみる天水晴那のスキルを目の当たりにして呆然とする刹那を余所に、私は聳え立つ風の壁に向かって手を突っ込む。


 そして轟風の勢いに耐えながら、その風の中に自分が強く願う気持ちを込める。



「希望を描け! 天水晴那!」



 もう黙ったままでいないこと。


 あらがうことに一人で背負いきらないこと。


 この勝負に必ず勝つこと。


 それら全ての思いを掌に込めていくうちに、風の中で一枚のカードが作られてゆく。



「完成だ!」


「〈プリズムドロー〉!」



 出来上がったカードを掴み、そのまま天を斬るように掲げ、その拍子に虹色の竜巻も両断されて瞬く間に消えた。



「今更どんなカードを引いたところでもう遅い! キミがそのカードを手に取った瞬間、〈メイガナードワンピ〉の効果を発動!」



 必死に割り込んでまで効果を発動させ、刹那の手にカードとなった〈メイガナードワンピ〉が戻った時には、問題の〈ラヴァーナトップス〉と〈マドゥラースカート〉がランドリーから舞い戻った。



「この瞬間! 〈ヴァルナーガスプリントスカート〉のフルコーデ効果を発動!」



 相手のトップスが発動しきる前に、コーデされた時にフルコーデだった場合のみ反応する〈ヴァルナーガスプリントスカート〉に、割り込んで効果を発動する権利が発生する。



「〈ヴァルナーガスプリントスカート〉は、一ターンに一度だけ、相手がコスチュームをコーデした時、そのコスチュームに〈シェルベッコ・チャーム・トークン〉を付ける!」


「間に合えええッ!」



 反応してオーラを放つ〈ヴァルナーガスプリントスカート〉が、なんとか〈ラヴァーナトップス〉にチャームをつけることに成功する。



「今更そんなものをつけても無駄だよ! コーデされた〈ラヴァーナトップス〉の効果で、キミの沈黙レベルは最大の3! これでキミは二度と声を出すこともできない!」



 一連の処理が終わり、刹那の体に〈ラヴァーナトップス〉が無事に着込まれる。


 本当に最大まで沈黙レベルが上がったのか、お互いに声をあげぬまま静かなときが数秒だけ流れていた。


 最大レベルの沈黙の影響は、このホール全体にも及んでいるのか、ずっと撮影しながらもおろおろしていた志保どころか、こういうときは騒がしくなるビャコも嘘みたいに静かになり、会館全体がシーンとしていた。


 スキャナーを持ち上げてモニターを見る。


 そして私は確信した。



「ミュージックカード〈ブルーマグノリア〉発動!」



 長い沈黙を破るように、私はミュージックカードを堂々と発動させた。



「え、なんで、発動できて……」



 もはや黙らせることができなくなった天水晴那に、雨羅刹那の顔に疑問と絶望が浮かぶ。



「ふぃー。どうやら間に合ったみたいだな」



 沈黙がなくなったのを悟ったビャコが、止めていた息を吐くようにため息と共に声を出す。



「ま、間に合ったって……」


「〈ヴァルナーガジャケット〉のフルコーデ効果。このコスチュームがフルコーデ状態の時、〈シェルベッコ・チャーム・トークン〉がつけられたコスチュームは効果を封じられる!」


「つまり! 沈黙レベルのアップも、それによる封印効果も全て無効だ!」



 沈黙レベルを付与するのも、それに応じて相手のカードを封印するのも、全てトップスの効果によるもの。


 それを逆に無効化することで封じ返してしまえば、沈黙レベルなどないも同然。



「あ、アハハハ。こりゃあ、結構やばいかも」



 今になって笑みを浮かべる【黄黙天】だが、冷や汗だらけの顔をみる限りでは、もはや笑うしかない様子だった。



「そして〈ブルーマグノリア〉は、ランドリーにおかれた〈RDティアーズ〉のコスチュームをデッキに戻し、その後で戻したカード三枚につきカードを一枚ドローできる!」



 このカードは草薙さんが璃玖さんの持ち歌〈青い木蓮〉を私の為にリメイクしてくれた曲。


 〈ヴァルナーガシューズ〉によるリンケージ・コーデは性能上たくさんランドリーに溜め込んでしまうため、戻すカードは選り取り見取りだが、この状況で戻すべきカードは決まっている。



「さらに手札に戻した〈ヴァルナーガシューズ〉をもう一度コーデ!」



 片足を上げながら黒のブーツをもう一度履き直し、そのまま地を踏んで効果を機動させる。



「煌方陣展開!」



 青白い線で描かれた方陣がトップスとボトムスを液体化させ、一つの衣装へと融合してゆく。



「リンケージ・コーデ! 再び現れよ! 〈ヴァルナーガワンピ〉!」



 ビャコの知恵が草薙さんの曲を奏でさせ、勇作Pの作った私のエース衣装を蘇らせる。


 例えここにみんなが揃っていなくても、込められた意志が全てを一つに繋いでゆく。



「ついさっき勇作や草薙から手渡されたってのに、それらを瞬時に理解して状況を整え直すまで運ばせるとは……。流石は天水晴那だな」



 確かに沈黙レベルによる封殺は誰の目から見ても圧倒的に不利だったのは明らか。


 だが、それすらも掻い潜って尚も【黄黙天】に追いつく私に、ビャコが思わず感嘆の言葉を吐露した。



「そして手札から、〈シンデレラリトライ〉を発動!」



 スキルでドローしたカードを除く最後の一枚は、登坂しおり戦でも使用した「ランドリーからどんな衣装でも一着まで何でも蘇生できる」汎用カード。


 その効果で呼び戻すのは、アクセサリーカードの〈ヴァルナーガカチューシャ〉。



「続けて〈ヴァルナーガワンピ〉のコスチューム効果を発動! ステージ上のコスチュームに〈シェルベッコ・チャーム・トークン〉を一つアンダーコーデさせる!」



 チャームをつける先として対象に選んだのは、もちろん〈ヴァルナーガワンピ〉。


 それによって、〈ヴァルナーガワンピ〉の持つ、同ブランドの数だけAPが上がる効果も作動する。



「再び煌方陣展開!」



 靴の底をキュッと音が鳴るほど擦り、まるで捻られたスイッチのように方陣が広がる。



「〈ヴァルナーガカチューシャ〉と〈シェルベッコ・チャーム・トークン〉を素材にリンケージ・コーデ!」



 水となって弾けた二つのアクセサリーが、こんどは私の掌に集まり、全く別の物体へと形を変え始めた。



「現れろ! レアリティSR〈RDティアーズ メリフヴァルナーガホン〉!」



 呼び出したのはアクセサリーの一種だが、今までの身につけるのとは異なり、小物として常備するタイプ。


 小物というか、最近のパンクロック系かラフバンドがPVとかでマイク代わりに使っている拡声器。


 もちろん、単なる髪飾りよりも単純にでかい故にAPは300と大きい。



「さらに手札からトゥルーワードミュージック〈因果の常海マリンパニッシュメント〉を発動!」



 握る拡声器に声を入れ、ホール内に反響させながら、私はついに切り札の発動を宣言する。


 どこからか勢いよく飛沫をあげる波の音が耳朶に触れた途端、瞬きをしている間に人気もなにもなかったはずのホールが、色とりどりの珊瑚や海藻が踊り、水族館でよく見る熱帯魚の群が目の前を通り過ぎる美しい海底へと変貌した。



「わあ、すごい……」



 対峙している二人とは別に撮影に来ているだけの唯一の観客である志帆が、撮影中であることを忘れて、今自分を包み込むほどの豪華な立体映像に直接触れられていることに感動する。



「これがトゥルーワードミュージック……? たった一枚のミュージックカードで、このレベルの表現ができるなんて……」



 重力を失った服が水中に浮かされ、喋る度に口から泡が吹き、腕を動かせば小泡が天井を目指し、魚の群に手を伸ばせば逃げられる。


 ホールを丸々巻き込むほどの演出に、さすがの『ディーヴァス神姫』の一天ですら、このカード演出には度肝を抜かれていた。



「〈因果の常海マリンパニッシュメント〉は、相手のコスチューム一着につき、〈シェルベッコ・チャーム・トークン〉を一つずつ装飾させる!」



 効果の説明をしている間に、天井のどこからかウミガメの群がホール中を旋回しながら私達がいる海底を目指す。


 そして白砂の広がる地表まで降りてくると、刹那をめがけて一瞬だけ姿が見えなくなるほど密集した群が横切った。


 立体映像だとわかっても押し寄せるウミガメの軍勢に体を守る。



「このウミガメ達は……これが彼女のッ!」



 横切るウミガメの群れが演出の機転になっているのか、やっと大群の壁が消えたときには美しい海の景色から一瞬のフェードアウトを経て質素なホールに戻っていた。


 そして、雨羅刹那両の衣装に鼈甲色のチャームが所々ついている。



「これで〈RDティアーズ〉ブランドのコスチュームが増えたことで、晴那の〈ヴァルナーガワンピ〉のAPがさらにアップだ!」


「私はこれでスタンバイ!」



 準備は整った。


 今のトゥルーワードミュージックの発動を持って手札は空になり、これ以上のコーデをする必要もなく、十分にAPも貯めきったことで、私は先にスタンバイを宣言した。



 天水晴那 AP2880 VS 雨羅刹那 AP2400


ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「いいから早く決闘しろよ」


と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。

また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、

思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。


あとブックマークもいただけるとうれしいです。


細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!

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