沈黙が破られる瞬間
天水晴那 AP2280 VS 雨羅刹那 AP2600
「まったくキミは本当に勇気があるね。ここまで沈黙レベルを上げられたってのに、なおもカードを伏せようとするなんて」
「勇気がなきゃ、今頃あんたらに挑もうとしないわ」
「それもそうか――〈メイガナードワンピ〉を追加コーデ」
陽気な声から一瞬でドスが入るほど冷淡に、刹那は〈メイガナードワンピ〉へ着替える。
笑顔はない。
さっきまでウケ狙いのためと言っていたのが嘘みたいに、雷光の如く肉薄するのと同時にあの大剣を握りしめ、居合いをするかの如く身を屈めて迫ってきた。
「コーデ時効果でランドリーに送るのは、その〈ヴァルナーガシューズ〉だ!」
靴どころか両脚を持って行きそうな気迫を醸し出しながら、思いっきり引き絞った大剣が脚を目掛けて斬り迫る。
「ライトニング・ジット!」
「アクシデント発生! 〈ウォーターベッド・トランポリン〉!」
寸前のところで伏せたカードを起こすと、発動と同時に私の足下が小さいウォーターベッドとなり、それを踏み台に私は高く飛び上がった。
「――な!」
「〈ウォーターベッド・トランポリン〉は、相手がコスチュームを退場させる効果を発動させたとき、それを手札に戻す!」
大振りな一閃を飛んで回避した後、〈ヴァルナーガシューズ〉は一枚のカードに戻って私の手札へと戻っていった。
一見はせっかく出したカードを自分で戻してしまう意味のない効果にも思えるが、手札へ逃がすことでランドリー送りを免れるという緊急脱出としての役割もある。
何よりも、今は軸となる貴重なシューズを失うのはどうしてもさけなければならない。
「ま、まさかッ!」
会心の一撃をアクシデントによって外されたことに、刹那の目が丸くなる。
「流石は【黄黙天】だ。名前の通り、ここまでよく黙りと通したな」
雨羅刹那が今抱いている心情を見透かしたビャコが賞賛を送る。
「沈黙レベルの影響が及ぶのは〈ラヴァーナトップス〉を着ている時だけ。でも、あんたがそれを着ていない今、こちらは沈黙レベルに関係なくカードを発動させることができる!」
効果で出現したトランポリンは消えて、結局素足のまま冷たい床に脚をつける一方、自身の必殺コンボに絶対の弱点を見透かされてしまった雨羅刹那はフラフラと後退してゆく。
「お前は今まで沈黙レベルという、聞き慣れないルール効果を相手に与え、レベルがある限り封印効果が適用されると相手に思わせていたけだ。
言わなかったのも無理はない。
弱点を親切に教えてやるマヌケはいないからな。
ついでに今までの相手も聞いてこなかったし。
それにしても封殺なんて驚異的な効果ではあったが、自身の弱点をよくここまで黙り通せたもんだ。ただ、お前が肝心な事に口を閉ざしても、冷静にカードを分析すれば綻びは見えてしまったがな」
そうだ、弱点は至ってシンプルだった。
でもそれは、ビャコという「やるときは弱点を見破るほどやってくれる」最大の功労者がいたからこそだ。
「…………っ!」
沈黙を司る【黄黙天】が逆に黙り込む。
今まで破られたことがないわけじゃあないのだろうが、『ディーヴァス神姫』の上位ランカー以外の、しかも仲間の敵でもある野良アイドルに見破られてしまったことがよほどショックのようで、初めてみるほど焦燥している。
「で、でも、次のターンでキミは完全に沈黙する! もうそのシューズの力にすら頼り切ることはできない! ボクはカードを一枚準備してチェンジだ!」
天水晴那 AP2280 VS 雨羅刹那 AP2400
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