再び戦いの舞台へ+新しい戦力投入
拠点である〈アクアクラウン〉を構えている都心部から車で一時間。
隣の県までまたいだクロッシュYNという県立のコンベンション施設は、特撮のロケ地に使われたというだけあって田舎町に建設されたにしてはなかなかの規模を誇る会館であった。
クロッシュとは高級料理店でよく見る料理などの鮮度を保つために被せられる銀色のドーム型をした蓋のこと。
ビャコ曰くフランス語で鐘を意味するらしい。
実際の建物をみる限りでは、鐘というよりかは食器の方のクロッシュに見立てたような名前の付け方をしている。
『ココ・ナタデー』がレッスンを開始するのは夕方から。
流石にこんな町まで平日に赴いて見に、こっそり練習を見に行こうとする空気の読めないファンや厄介な雑誌記者らしい人影も車もなく、駐車場は至ってガラガラ。
とはいえ、相手から誘った決闘の場所。
安易に駐車せず、警戒している間に夕闇が東から茜色の空を浸食しつつある時間まで経った。
「そろそろ、いいだろう」
前回、登坂しおりを撃破した草薙さんの曲奪還戦の時と同様に、クロッシュYNからそこそこ近い有料パーキングに車を止めて、いよいよ襲撃が決行される。
「準備はいいな?」
「大丈夫」
コスチュームカードを利用した変装は既に完了済み。
尋ねる勇作Pに、私はパーカーのフードを頭にかぶせてから目を合わせる。
「何度も車で回ってみたから覚えたとは思うが、位置はビャコにも覚えさせている。迷うことはないと思うが、念のため会館の見取り図も頭に入れさせた。後は徒歩で向かうしかない」
カーナビが真下にあるダッシュボードで瞑想するように胡座をかいていたビャコがすっと開眼し、ひょいと私の頭に飛び移る。
「見たところ相手は卑怯な真似をせず、正々堂々とした勝負をご所望の用だが用心しろよ」
「わかってる」
「ビャコ、澄香のことを頼んだぞ」
「任せなさいな!」
作戦の再確認と見送る言葉を勇作Pと草薙さんから貰い、私は車を降りた。
「澄香!」
まっすぐクロッシュYNのある方向へ歩みかけたとき、勇作Pが名前を呼んだ。
ふっと踵を返したとき、カードが投げ渡された。
受け取ったカードは新しいコスチュームカードとミュージックカードだった。
「急拵えだが新しいコスチュームだ。こいつを持って行け」
「ありがとう。こっちのミュージックも?」
「ああ、お前が取り返した曲を大急ぎで改変したんだ。使うかどうかは任せるが、お守り代わりに持って行け」
白波勇作の隠しブランド〈RDティアーズ〉の〈ヴァルナーガ〉シリーズの新しい衣装と、草薙亮が既存曲を改変させた新曲。
これほど頼りになる戦力はない。
どうやっても笑顔を顔に出すことができないが、しっかりと勇気は貰えた。
「できてんなら出発前に渡せばいいのに」
「急いで作ったもんだから、最後まで渡そうか迷ったんだ。許してくれ」
茶々を入れるビャコの突っ込みに、草薙さんは苦笑いしながら掌を立てる。
「できれば常に一緒にいてやりたいが、要の支援者が安易に正体を明かすわけには行かないから同行ができない。せめてもの俺達からの思いだ」
「大丈夫。それはこのデッキからしっかり伝わってるよ」
運営に奪われた遊生澄香のデッキがない今、代わりに戦力になっているこのデッキは、打倒Q-key.333に向けて勇作Pと草薙さんの二人が一から作ったもの。
受け取った二枚のカードを腰部のデッキホルダーに入れて、私は改めてクロッシュYNを目指して駆けた。
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