鼈甲の魔術衣〈ヴァルナーガワンピ〉
天水晴那 AP2880 VS 登坂しおり AP2750
劣勢のまま与えられたラストターンから、まさかの大逆転。
状況が変わったのは、戦いの場だけではない。
今のカード演出をともに体感してからか、それともこちらの逆転劇をみてからなのか、試合開始からずっとブーイング一色だった観客達の歓声が、歓喜と怒号の二つに混じりつつあった。
「〈プリズムドロー〉で引いたカードを瞬時に使いこなすとは、流石は元ランク9――いでっ!」
感嘆するあまり、私の正体をもらしかけるビャコをチョップで黙らせる。
聞こえたかと思い、冷や汗がどっと出かけたが、幸いにもマスコットの声はマイクで拾われてないのか、しおりや赤眼鏡の司会者含め、周りが異様にざわついた感はない。
ばれてない安心とビャコの緩い口への閉口のため息をつく。
これで互いにスタンバイを宣言すれば、この時点で高めたAPの合計値で勝敗が決する。
両者の数値はすでに明白。
この場にいる観客やカメラを経由して遠方で見ているQーkey.333のファン達が、憎き天水晴那の勝利となってしまった確信していた時だった。
「――アクシデント発生! 〈バイツアムーベリー〉!」
私がスタンバイを宣言しきる寸前に、登坂しおりが足下にあらかじめ伏せていたカードをたたき起こして、高らかに発動を宣言した。
「わたしの〈シルキーモッスワンピ〉の成長段階を一つ下げることで、相手コスチュームをランドリーに送る! わたしは、あんたの〈ヴァルナーガワンピ〉をランドリーに送る!」
喰われる桑を意味する虫食いの青葉の痛々しい絵が描かれたカードが効果を発動させた途端、私の着ているワンピースに、細くて白い芋虫がわき始めた。
腐肉にたかる様はウジの様だが、彼女の着る衣装のコンセプト通りだと、この沸いた虫は蚕の幼虫。
本物ではなく立体映像だが、どっちにしても反射で払い除けたくなるほど不愉快ではある。
「これであんたの衣装はなくなった!」
「私があんたの伏せていたカードを警戒していなかったと思う?」
「――え?」
逆転の逆転を勝ち取った気になっているしおりに私は冷めたように返した。
「〈ヴァルナーガワンピ〉の更なる効果! このコスチュームが相手によって狙われた時、ステージ上の〈RDティアーズ〉ブランドのコスチュームをランドリーに送ることで、その効果を無効にする!」
無論、この効果でコストにするカードは自分か相手の場は問わない。
だが、この状況でコストにしなければならないのは――私は頭からチャーム付きのカチューシャをはずした。
「私は〈ヴァルナーガカチューシャ〉をコストに〈バイツアムーベリー〉の効果を無効にする!」
取り外したカチューシャが握られた途端、衣装から効果としての力に変換され、ブーメランのごとく思いっきり投げつける。
光る半円としてまっすぐ飛んだカチューシャは、しおりのそばで看板の如く佇むカードに突き刺さって起動をくい止める。
「カラミティ・ドレイン!」
グッサリと刺さるカードの穴から一瞬の電撃が走ると、発動を止められたカードが黒煙を上げて派手に爆発した。
「そ、そんな……ッ! いやあああ!」
悲鳴を虚しく途切れるほど、その威力はもろに登坂しおりへとひっかぶり、敗北者らしく舞台の外へ吹き飛ばされた。
宙を舞いながら〈ヴァルナーガワンピ〉の効果通り、爆発によって切り札の〈シルキーモッスワンピ〉が霧散。
靴とヘアアクセだけを残して霰もない姿になったまま、登坂しおりは黒煙で放物線を描きながらステージの外へ落ちていった。
天水晴那 AP2830 VS 登坂しおり AP1450
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
「面白かった!」
「続きが気になる!」
「いいから早く決闘しろよ」
と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。
また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、
思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。
あとブックマークもいただけるとうれしいです。
細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!




