表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/83

もう一つのチート効果「リンケージコーデ」

「私のターン!」



 硬直し続けるこの状況を打破するように、私はドーム中に轟かせるように手番の開始を宣言した。


 その声にはっとしたのか、しおりは乱れた髪を直すまもなく構える。



「私は〈RDティアーズ ヴァルナーガシューズ〉をコーデ!」



 トップスに次いで履いたコスチュームのカテゴリーはシューズ。


 靴というよりかはブーツ並の丈があり、黒地にひだ飾りが施されたゴシック調っぽいデザイン。


 だが、そのひだ飾りはよく見るフリルとは異なり、まるで水溶生物の鰭か水掻きを思わせる形をしていた。



「今更どんなコスチュームを着ても手遅れだよ! 私が〈シルキーモッスホワイトワンピ〉を着ている限り、あんたのコスチュームは強制的に200ポイント下がるんだから!」



 あまりの出来事の連続に呆然としているかと思ったが、流石は元仲間。


 相手の状況に合わせて、自身の場に働くカードの効果を見落とさない。


 おかげでせっかく履いた〈ヴァルナーガシューズ〉のフリルに、いらないラメがふりかかり、その重さでひだが下がり、750ポイントもあったレアなコスチュームだが、相手の効果で550まで下げられてしまった。



「むやみに相手のAPの差をあけすぎると墓穴を掘るわよ」


「なッ!? ま、負け惜しみを!」


「本当に負け惜しみだと思う? それなら、アクシデント発生〈水桶の天秤〉!」



 しおりの言葉に対する答えとして、私は最後に伏せていたアクシデントカードを立ち上げた。



「自分が〈RDティアーズ〉ブランドを二着以上着ている状態で相手よりもAPが低い場合、その差の数値以内のAPを持つ同名ブランドのコスチューム一着をデッキから手札に加える」



 スキルの副作用でデッキからドローはできなかったが、カード効果によるドローはできる。


 現在しおりと私とのAP差は2000。


 その気になれば何でも呼べる数値だ。



「そして、たった今手札に加えた〈ヴァルナーガカチューシャ〉をそのまま追加コーデ!」



 シューズに次いで頭に飾ったのは、人魚の鰭を彷彿とさせる透明なフリルのリボンがあしらわれた黒い留め具のカチューシャ。



「このカードは、自分が〈ヴァルナーガ〉シリーズを着ている時、手札から追加でコーデできる!」



 シューズと同じ名前を冠する故に、効果が連鎖する。


 いわゆるシリーズ同士が結ぶシナジーがもたらす恩恵は、何も登坂しおりだけに与えられたものじゃあない。


 ただし、連続で着ることができたからといっても、しおりがもたらすワンピの効果を受けないわけではないが。



「今更急ピッチで衣装を揃えたところで、わたしの〈シルキーモッスホワイトワンピ〉の効果があんたの着るコスチュームを片っ端から下げちゃうわよ」


「それはどうかな? 私が切り札を着るのはこれからよ!」


「切り札だって? 負け惜しみを! どんな衣装がでたって、〈シルキーモッスホワイトワンピ〉が効果でAPを下げるし、すでに2750もある私のAPに追いつけるわけが!」


「〈ヴァルナーガシューズ〉の効果発動!」



 逆転不可能と言わんばかりに自信にみちたしおりの言葉を遮るように、私は履いている〈ヴァルナーガシューズ〉で舞台の床を踏みつけた。


 カツーンと乾いた音が響きわたった直後、爪先から青白く光る無数の線が走り始めた。



煌方陣(しょうほうじん)展開!」



 様々な青色の煌めく線達は、私を中心に大きく広がり、やがて曼荼羅ともいえる幾何学模様――煌方陣と名付けられたそれを描き走り、最後に走る二本の線同士が重なり合うことで完成した。



「私は〈RDティアーズ〉の〈リットルパズルトップス〉と〈ヴァルナーガカチューシャ〉の二枚を素材にする!」



 足下で燦然と不思議な輝きを放つ方陣の光に当てられながら、着主の命令に従って頭部の飾りと胸の衣装が、まるで脱色したかのように一瞬だけ形を保ったまま透明の水に変わる。



「コスチューム・ディゾリューション!」



 その直後に手中で握り潰した水風船の如く飛沫をあげて私の体から離れたかと思うと、今度は巻き戻された映像のように着主の体に戻っていく。


 ただし、元の形には戻らず、液状になった二つの衣装が解け合って、一つの衣装へと結合して形を変えてゆく。



「リンケージ・コーデ!」



 ヘアアクセとトップスであった衣装が、やがて胸から股まで届く一着の衣装になるまで私の体を被うと、波打つ液体らしく不定形だった形から、目的の形を目指して徐々に変形してゆく。



「現れろ! レアリティPR! 〈RDティアーズ ヴァルナーガワンピ〉!」



 変形を終えた合図として、それまで透明だった液体達が再び水飛沫をあげて再び弾けたその下には、全くの別の衣装が纏われていた。



 二つの衣装を元に出現した一着のワンピース。


 それは、これまでに出したブーツとアクセサリーと同じ名前を冠するシリーズの一つ。


 ぱっと見はモノクロカラーのいわゆるゴシックロリータ調。


 だが、黒地の隙間に施された多様のフリルはブーツ達と同様に青白い色を帯びた透明で魚類の鰭を思わせる水曜生物のよう。


 暗くミステリアスなゴシックファッションと、神秘に満ちた海中に住む悲壮な人魚のモチーフを取り組んだこの衣装が、名デザイナー森勇作の新しく、そして隠されたブランドのエース〈ヴァルガーガ〉シリーズの特徴だ。



「二枚脱いだと思ったら、代わりにデッキから追加コーデだって!?」


「〈ヴァルナーガシューズ〉は、同じブランドのコスチューム二枚を素材にすることで、デッキから〈RDティアーズ〉のコスチューム一着をデッキから追加コーデすることができる!」



 小さい二枚を素材に大きな一枚のカードを呼び出して己を強めるリンケージ・コーデ。


 白波勇作がQ-key.333を倒すために秘密裏に作り出した、天水晴那専用ブランド〈RDティアーズ〉の主力として搭載させた唯一無二のコスチュームだ。



「そして! ランドリーの〈リットルパズルトップス〉の効果を発動!」



 派手な演出とともにワンピースを出した直後に、私は畳みかけるように自分のランドリーに意識を向ける。



「脱衣してランドリーに送られたこのカードは、着ているコスチューム一着に自身の持つAPの半分だけアップさせる!」


「なっ! ランドリーから!?」



 衣服の映像ではなく一枚のカードとして舞い戻った〈リットルパズルトップス〉だが、現れたとたんに青い粒子となって散り始めた。


 まるで入れ替わった衣装に己の力を与えるように、その光の粒が〈ヴァルナーガワンピ〉をさらに輝かせてくれる。



「そしてミュージックカード〈シンデレラ・リトライ〉を発動!」



 続けて発動させたのは、名前の通りシンデレラの履くガラスの靴をジャケットに描かれたミュージックカード。



「このカードは自分のランドリーに置かれたコスチュームカード一枚を追加でコーデできる!」



 物語のシンデレラは一度目の挑戦は叶わずとも、二度目の挑戦で輝き掴んだ。


 現実のアイドル達にも、繰り返すチャンスで輝きを掴んで欲しいという願いが強力な効果となって作られたこの曲は、今や多くのアイドルに使われている。



「その効果で私は〈ヴァルナーガカチューシャ〉を再び追加コーデする!」



 洗濯籠から蘇ったヘアアクセを最後に、ワンピース、そしてシューズと、天水晴那の身に全ての衣装が揃った。


 恐らく、この大勢の目が集う公の場で初めて公開されたであろう〈RDティアーズ〉のメインコスチューム〈ヴァルナーガ〉シリーズが、アリーナ中に写るモニターにアップでお披露目されたことで、それまで邪険に見ていた客達の目が、さも珍しいものを見るような目に変わっていた。



「さらに〈ヴァルナーガワンピ〉のコスチューム効果!」



 鳳を勤める役者の様に遅れてエースコスチュームである〈ヴァルナーガワンピ〉の効果を発動させたとき、観客達から関心のどよめきが起こる。



「一ターンに1度だけ、このコスチュームに〈シェルベッコ・チャーム・トークン〉を一つアンダーとして装飾することができる!」



 着主の命に従うように一瞬だけ青白いオーラを纏ったワンピが、どこからともなくギターピックのような小さい鼈甲色の飾りを胸元に出現させた。



「な、なにもないところから!?」


「そう。あんたのワンピにある成長段階と同じように、こちらにもカードのほかにも編み出す力、そして能力もある!」


「ということはまさか!」



 そのまさかと答える代わりに、私は再度高らかにワンピに発動を命じる。



「〈ヴァルナーガワンピ〉のさらなる効果! このコスチュームは、ステージ上の〈ヴァルナーガ〉ブランドの数だけAPが100アップする!」



 リンケージ・コーデでだしたワンピのAPは1230。


 一枚の力ではしおりの切り札には敵わないが、効果で力となった〈リットルパズルトップス〉のAP300に加えて、自身の効果やシューズとアクセサリーが加われば合計AP2830と逆転できる。


 そのはずだが……



 〈ヴァルナーガワンピ〉AP1930→AP1730

 〈ヴァルガーガシューズ〉AP750→AP550

 〈ヴァルナーガヘアアクセ〉AP150→AP0


 天水晴那 AP2830→AP2280



「ド派手な演出のスキルを使った上にすっごい切り札を出されたときにはちょっと驚いたけど、無駄よ! わたしが〈シルキーモッスワンピ〉を着続けている限り、あんたのコスチュームは全てAPが下がるんだから!」



 怒濤の勢いで場をそろえた晴那のターンに一縷の汗を伝わらせて焦りを見せたしおりが、誇らしげに勝利を確信する。


 着ている限り容赦なくAPを下げるなんて、厄介な効果ではある。


 だが、それは全て想定通りだ。



「それはどうかな?」


「――え?」



 素っ頓狂な声を上げるしおりに見せつけるように、私は手札に残った最後の一枚をプレートに叩き付けた。



「トゥルーワード・ミュージック〈無垢なる真海・クリアオーシャン〉発動!」



 虹色の奔流から生み出したカードが読みとられた途端、薄らと虹色を帯びた一陣の風が改めて私の周りに吹きあれる。


 まるで握りしめるスキャナー内部のプリズムストリームが外気で集まりつつある虹色の気流と接続するように。


 一瞬だけドーム内部が眩い白の閃光に包まれると、今までアイドル同士が鎬を削りあっていた舞台から、海中に放り出されたような空間に景色が変わっていた。



「な、なんなの! 同じミュージックカードで、こんな表現ができるなんて!」



 それは使い手でもある私自身も、初めて使ったが故に同じくらい驚いてはいる。


 だが、あの虹の竜巻から精製したカードによる特殊演出ならば納得せざるを得ない。


 このステージ一帯を巻き込んだ仮想映像を体感しているのは、対峙している私達だけじゃなく、見ている観客達にも及んでいるのだろう。


 仮想だが本物みたいに空中を泳ぐ魚達が観客達の手や顔をすり抜けてゆく。


 歓声、怒号から、今度はまるで遊園地のアトラクションに放り込まれたかのような感動の声がちらほらと。


 一瞬であり得ない場所へと見ている景色が変えられるのは夢でも見ている気分にもなるだろう。



「ムッフッフ、あいつ驚いてやんの! それとトゥルーワード・ミュージックカードは、ただプリズムストリームによる派手な投影だけが売りじゃない! このカードの発動自体は誰にも邪魔することはできないし、何よりも生み出したプレイヤーの叶えたい強い意志が詰まった特製カードだぜ!」



 このカードを生み出した動力であるビャコと私の説明に併せて、どこからともなくやってきたウミガメの大群が大きく迂回し、私の背後からしおりに向かって押し寄せる。


 仮想映像とはいえ真っ正面から迫るウミガメの大群に思わず腕で顔を覆うしおり。


 その蚕を模した白い衣装にウミガメ達がすれ違ったかと思えば、いつのまにか各部位に鼈甲色のチャームが一つずつけられていた。


 もちとん背後から通り抜けられた私の身にも同じチャームが頭、胸、靴にも一つずつ。


 カード効果の発動処理が終了すると、それを皮切りに美しい熱帯魚がさまよう海中遊泳の映像がフェードアウトし、元の暑苦しいアリーナの内部へと戻ってゆく。



「な、なにこれ? チャーム?」


「トゥルーワード・ミュージック〈無垢なる真海クリアオーシャン〉は、お互いのプレイヤーが着ているコスチューム一着につき一つ、AP0の〈RDティアーズ〉ブランド〈シェルベッコ・チャーム〉をつけることができる!」


「AP0のコスチュームを相手にもつけさせるなんて、一体なんの意味が……」


「〈ヴァルナーガワンピ〉は、ステージ上の〈RDティアーズ〉ブランドの数だけ、APが100アップする。それは当然、相手ステージにあるのも含まれる!」


「そ、そんなッ! それじゃあ、あいつの総APは!」



 天水晴那 AP2880 VS 登坂しおり AP2750



ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「いいから早く決闘しろよ」


と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。

また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、

思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。


あとブックマークもいただけるとうれしいです。


細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ