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愛し方も知らずに  作者: リコピン
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エピローグ

「……それで、結局、お前たちの関係はどうなっているんだ?」


セリーヌが裁判で無罪放免を言い渡されてから一週間が過ぎた。


無罪になったとは言え、諸々の処理が残っているセリーヌは未だ第三隊に留め置かれている。ただ、地下牢の代わりに女性隊員と同じ宿舎に部屋が与えられ、聴取の代わりに雑用の仕事が与えられた。


今日も、隊舎の清掃の手伝いを行っていたセリーヌは、しかし、気付くとケレンに連れ出され、中庭で横になる彼に自らの膝を貸している。


そこに偶々通りかかったジークが足を止め、セリーヌ達を見下ろして不思議そうに首を傾げた。


「恋人関係、という訳でもなさそうだが。……それならそれで、隊の風紀上好ましくない距離感は正さねばならん」


彼の言葉に、セリーヌの膝の上でケレンが「酷いなぁ」と笑った。


「どこをどう見て、恋人関係じゃないなんて言うのさ。どっからどう見ても、恋人同士でしょ、俺たち」


「え……?」


ケレンの言葉にセリーヌは驚く。心情のまま口から零れ落ちた小さな声に、寝転んでいたケレンが勢いよく上半身を起こした。


「え?ちょっと待って、今の『え』って何?どういう意味?」


鬼気迫る彼の勢いに押されつつ、セリーヌは疑問を口にする。


「あの、恋人同士というのはどういう……?」


彼の言葉に期待していることを自覚しながら、セリーヌは慎重に言葉を選んだ。これが全くのセリーヌの勘違いであれば、恥ずかしいだけでなく、辛い思いをする。臆病な自分に言い訳して、セリーヌはケレンの言葉を待った。そして、直ぐに自身の判断が間違っていなかったことを知る。


「……セリーヌ、ちょっと、ちゃんと、話をしようか?」


そう告げたケレンは、すっくと立ち上がり、セリーヌの手を強引に引いた。そこに、「恋人同士」という言葉が似あう甘い雰囲気はない。ただ、子どもがお気に入りの玩具を取られまいとするかのような態度に、セリーヌは「やはり」と思う。


彼に気に入られているのは間違いない。大切にされ、甘えられるのは嬉しい。だが、それだけ。


執着のベクトルが違うことを少しだけ残念に思いながら、セリーヌは笑ってケレンを見上げた。ケレンの目がスッと細められる。


「……うん、なんか、俺、間違ってたかも。セリーヌがもっと俺に馴染んで、……まぁ、少なくとも、敬語がとれるまでは待とうかなぁとか考えてたんだけど」


「?」


「全然、分かってないみたいだし、外野はうるさいし、もう、俺の好きにしていいよね?」


言って、ケレンはセリーヌをヒョイと横抱きに抱え上げた。彼よりは小さいとは言え、セリーヌは然程小柄というわけではない。バランスを取ろうと、慌てて彼の首にすがりついた。


ケレンの瞳が、嬉しそうに弧を描く。


「……ジークも、楽しみにしててよ」


「おい、ケレン……」


「恋人同士かなんて疑問にも思わないくらい、グチャグチャのドロドロ、……セリーヌの匂いが分からなくなるくらい、俺の匂いでいっぱいにしてあげるからさ」


ケレンが、楽しそうに笑って歩き出す。


その笑みに見惚れたセリーヌが、彼の言葉の意味を正確に理解するまで、もう、あと少し――






(終)




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