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1 誕生日の贈り物

おもちゃ屋さんで生まれたボクは袋の中で身動き一つせず、その日が来るのをじっと待っていた。


「これあけてもいいの!?」

「ええ、開けてごらんなさい」

「なんだろう? とってもたのしみ!」


ごそごそと袋を開ける音と楽しそうな女の子の声がボクの耳に届く。


きっと今日は彼女の誕生日なのだろう。


「おかあさん! うまくあけられないよ~」

「もう、しょうがないわね」


どうやら女の子はうまく袋を開けることができなかったらしい。


お母さんにお願いして代わりに袋を開けてもらうことにしたようだ。


「わあ、かわいい! クマさんのぬいぐるみだ!」


女の子の小さな手で袋の中から持ち上げられたボクは、抱えられるようにして外の世界へと飛び出した。


「どうだ、リカ。可愛いだろう?」

「うん! ありがとう、おとうさん!」


ボクを抱えている女の子の名前はリカちゃんと言うようだ。


リカちゃんはボクのことをぎゅーっと抱きしめながら、お父さんとお母さんに向けて満面の笑みを浮かべる。


「おかあさんもありがとう! だいじにするね!」


花が咲いたような笑顔のリカちゃんを見てお母さんも嬉しそうだ。


そんな家族の姿を見ているとボクも嬉しくなってくる。


「ええ、ちゃんと可愛がってあげるのよ」

「うん! えーっと、なまえはどうしようかな……?」


リカちゃんは首を捻ってボクの名前を一生懸命に考えてくれているようだ。


一体どんな名前を付けてくれるのだろう。


ボクはわくわくしながらプラスチックの瞳をリカちゃんに向ける。


「きめた! あなたのなまえはくまきち! よろしくね、くまきち!」


どうやらボクの名前はくまきちに決まったようだ。


「くまきち、くまきち~」


リカちゃんはボクの名前を何度も呼びながらぎゅーっとボクのことを抱きしめてくれる。


そんなリカちゃんを見てお父さんとお母さんもニコニコと笑顔を浮かべている。


「さあ、リカ。今日はリカの誕生日だからね。リカの好きなご飯をたくさん用意したよ」

「ええ、リカちゃん。くまきちと一緒にテーブルに行きましょうね」

「うん!」


花の咲いたような笑顔のリカちゃんを連れてお父さんとお母さんは食卓へと向かう。


ボクはリカちゃんの隣の席に座ると、リカちゃんが頬を膨らませてお母さんに声をかける。


「おかあさん! くまきちのぶんのごはんがないよ!」

「あらあら、ごめんなさいね。今用意するからちょっと待ってね」


そう言うとお母さんはキッチンの方へと向かって歩き出した。


しばらくすると、お母さんはお皿の上にプラスチックでできたおもちゃのケーキを乗せて戻ってくる。


「リカちゃん、これをくまきちに食べさせてあげてね」

「わかった! ありがとう、おかあさん!」


再び笑顔になったリカちゃんは、ボクの口におもちゃのケーキを食べさせようと近づけてくる。


「おいしい? くまきち?」


美味しいよ。


言葉にはできなかったが気持ちを瞳に込めるとリカちゃんは嬉しそうに声を上げる。


「おかあさん! くまきちがおいしいっていってるよ!」

「くまきちが喜んでくれて良かったわね。リカちゃんもご飯にしましょう」

「はあい!」


こうしてリカちゃんの誕生日に贈られたボクは、リカちゃんの新しい家族になった。

全四話、起承転結に分けるため連載で投稿します。

本日中に全て投稿予定です。

少しでも楽しんでいただけますと幸いです。

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