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ビリエーラ、本日もきっちりお仕事中です

 帝国特殊部隊第三秘密行動班。

 ちょっと前で言う暗部と言うやつだ。

 そして私の職場。

 第一、第二、第三、第四とあって第一は前線での工作活動、第二は前線での情報収集。

 そして私がいる第三は安全な後方勤務と言うやつで国内での情報収集と第一第二の支援を主な任務としている。

 前線とはまあ国外のことね。

 それで第四は……秘密です。

 さて、そんな私ですが、またレミア室長からの呼び出しです。

 レミア室長は私の直属の上司であり、ちょっと怖い時もあるけど優しくて面倒見の良い素晴らしい女性なのです。

 前回呼び出されたときは、室長からお前何やらかしたの? と心配されました。

 そりゃそうですよ。

 私だってびっくりしましたもん。

 そして今回も。


「それでビリエーラ。 今回は何したんだ?」

「いえ、今回()、身に覚えがありません」

「そこ強調しなくていいよ。ま、そういうことだから。 とりあえず宰相閣下のところ、行って来い」


 私は何一つ隠すことなく、ものすっごく嫌そうな顔しました。

 足取り重く宰相閣下のもとに向かう。

 怒られる、と言うことはないだろう。

 前回呼び出されてからはずいぶんと経っている。

 というか、私としては怒られるほうがマシなんじゃないかとさえ思うところだ。

 ほんと、嫌な予感しかしない。

 私は宰相閣下の執務室まで行くとノックをして入室した。

 宰相閣下は私を確認すると、立ち上がり告げる。


「来たか。では行こうか」


 どこへ?

 あの、せめて行き先を……。

 私はその程度のことすら聞くこともできずにただ黙ってついて行くことしかできなかった。

 心臓の高鳴りを感じる。

 こういうときは必ず良くないことが起こると決まっているのだ。


「ついたぞ。陛下がお待ちだ」


 ほらね。

 おそらくだが、室長でさえ陛下にお会いしたことはないだろう。

 何かの式典の時に見たことあるよって程度なら私だってある。

 けど、こうして面と向かって会うという機会は下っ端にはまずないと言っていい。


「君がビリエーラか。 この間はご苦労だった。 それで、今回も君に仕事を頼みたい。 実は先日のエルフから手紙が送られてきた。 先方は帝国にとっても悪い話ではないと言うのだが、正直面倒にしか思えないのだがね。 そういうことなので、エルフの森、行ってくれるね?」

「エルフの森……ですか?」

「そうだ。 協力者の人選は任せる。 それから、今回の件についてのみ、君にはある程度の権限を与えておく」


 断ってもいいのだろうか。

 いや、待て……。

 面倒にしか思えない……からの行ってくれるね……、つまり面倒だからお前行って片付けてこいと言う圧力なのだ。

 まあ、私に断る勇気なんてないんだけどね……。



    ◇



「……ということなので。じゃあ行きましょうか」

「あのな。 また意味ありげに呼び出して、来てみりゃいきなりそれか。 せめて説明しろ」


 黙ってついてくればいいのに、などと思ったがここで断られると余計に面倒なのでここは下手に出て説明をする。


「なるほど。 今回は遠慮させてもらうわ」

「え? ちょっと何言ってるんですか? 皇帝陛下からの指名ですよ?」

「いや指名したのはサティナで、されたのはオマエな」

「いいじゃない別に。私エルフの森とかちょっと興味あるのよね。 なんていうか幻想的な雰囲気がね」

「お前、ノールたちから聞いた話に感化されやがったな?」


 そう、エルフの森に旅立ったノールさんとエルビーさんはしばらくして、約束通りに会いに来てくれたのだ。

 ヘイゼルさんたちとは冒険者ギルドで。

 私のところには忍び込んで。

 怒られるの私だからやめてほしい、嬉しかったけどさ。

 その時にエルフの森で起きた話を聞かされた。

 しかしあの話を聞いてエルフの森に行きたいと思えるのだろうか、もしかして私が聞いた話とラゥミーが聞いた話って違うのかな?

 今回はいうほど危険はないと思うが、ノールさんやエルビーさんがいないと言うのがちょっと不安だ。

 斯くしてヘイゼルさんたち疾風迅雷の魔剣のメンバーと私はエルフの森へと向かうのだった。

 ドワーフ公国にて案内役の人と合流し無事サティナさんの元までたどり着いた私たち。

 ただ、想像していたエルフの森とは違い、そこは魔境と化していた。


「すげーな。これ……」


 目の前にある巨大な樹を見てヘイゼルさんは素直な感想を漏らしている。

 ここに来る途中、魔樹と呼ばれる存在に会った。

 そんな魔樹にサティナさんが食われている光景を見てメイフィさんはいつものことだと言う。

 それが魔境と言わずしてなんと言うものか。

 まあそれだけでもないのだけどね。

 ノールさんが魔力の水を使い大樹を強引に成長させた。

 その大樹は今……雲を突き抜け天高く聳え立つ巨大樹となっていたのだ。

 そしてその巨大樹なのだが、実は自身の中に大量の魔物を抱え込んでいる。

 内部は空洞で、それはまるで迷宮のように入り組んだ形だ。

 しかもご丁寧にフロア分けまでされている。

 そしてその迷宮の核フロアには巨大樹が生み出した魔物が跋扈ばっこしているわけ。

 それから、見たことないお爺さんが登場。

 そのお爺さんはエルフではなく人間なのだそうだけど、かなり物知りでサティナさんとも仲が良いようだった。

 そのお爺さんが言うにはこの巨大樹、実は魔樹なのだと言う。

 しかも吸収した魔力が半端ない量で数千から数万年はこの状態が続くのではないかと話しているそうだ。

 巨大樹自体がエルフや人を襲うことはないのだけど、まるで意思を持つかのように魔物を生みだし、この迷宮を作り出している。

 つまり生きる迷宮と言うわけだね。

 ね? 魔境でしょ。

 エルフたちは魔物が森に出てこないように封鎖することに専念しておりその生きる迷宮の上階がどうなっているかまでは把握していないのだとか。

 さて、ここまでの話で一体私に何が出来るのだろうか。

 ヘイゼルさんたちと共にこの迷宮の最上階を目指せばいいのだろうか。

 ハハハ。無理に決まってるじゃん、そんなの。

 と思っていたらサティナさんから説明された。

 つまり、これから帝国の冒険者をここに呼び込み魔物討伐させるということなのだ。

 魔物がどんどん生み出されるのだからどんどん倒さなければいけない。

 じゃないと森が魔物だらけになってしまう。

 この迷宮の魔物は魔石を持っているんだがその質がかなり良いのだとか。

 なるほど、帝国としてもその上質な魔石を回収したいって腹積もりなわけね。

 エルフからしてみても巨大樹の封鎖に人手を割かなくても済むという利点がある。

 そしてヘイゼルさんたちのアドバイスもあってある程度の方針は決定した。

 エルフ側からの要望もあり、可能な限り森へ人が入ることを避けるようにしたいということも。

 この北のほうにはケルケ遺跡と言うのがあって、そこから巨大樹内部に侵入できるらしい。

 そしてこの巨大樹の周囲を囲み簡易な宿などを作る。

 さらに巨大樹の1階を制圧しておく。

 するとどうだろう。

 森に来た冒険者たちはケルケ遺跡より迷宮に入り、1階から外に出て休憩。

 そして巨大樹の迷宮にアタックできるというわけだ。

 さらに休憩だけでなく売店も設置し回復薬など必須アイテムを販売すれば売れること間違いなし。

 あと魔石って結構かさばるので、この場で換金したりすれば効率よく稼げる。

 あと倒した魔物から取れる素材もかなり良い。

 そんなわけで、人を好まない、寄せ付けぬエルフの森の一角には冒険者とエルフが金儲けする金の成る樹が誕生したのだった。

 私は陛下から与えられた権限を使い必要な人員、物資の手配からいろいろなことを行った。

 ドワーフ公国からケルケ遺跡までの街道整備の手配。

 ケルケ遺跡入口、それと内部の補修の手配。

 休憩所や販売所の建設の手配。

 そして販売する物の販路の手配と様々。

 さて、そんなところでサティナさんだけど何をしているのだろうかとみて見れば。

 ここを出入りする冒険者から入場料を徴収している。

 世俗から離れたエルフの生活はどこに行ったんだろうか……。

 私は陛下への報告を記しつつ、ほんの少しだけ、ここに転職するのもありかなとか思って見たりする。

 さて、この巨大樹、もともとは名もなき大樹。

 今エルフたちはこの迷宮の巨大樹を遥か昔の伝承にあったと言う樹になぞらえてこう呼ぶ、世界樹(ユグドラシル)と。

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