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ケルケ遺跡の怪物2

 ケルケの遺跡。

 そこで逃げようとしていた3匹のケルゲァルを連れてきたノール。

 そしてヴァルアヴィアルスは念話によってケルゲァルと会話できないかと試してみたのだった。


『獣人族の者よ。 わしの言葉が分かるかのう』


 すると、ほんの少しの間を置いてケルゲァルからも反応があった。


『あなたはエルフ? どうして助けてくれる?』

『そこの二人はエルフじゃが、わしは…そうよな、人間と思ってもらって構わぬよ。 お主らを助けたのは…ふむ、あの遺跡に集まるお主の仲間について聞きたくてのう。 何をしておるのじゃ?何か知らんかの?』

『ごめんなさい。 私たちは王の側近に命令されてここまで連れてこられただけ。 ここが何をする場所で、私たちが何をされるのか、私にはわからない』

『ふむ。それは残念じゃ。 それで、お主らはこれからどうするのじゃ?』

『あなたたちは、私たちを……殺さないの?』

『ぬ? なぜわしらがお主らを殺す必要があるのじゃ?』

『それは……』


 念話で会話していたケルゲァルがサティナたちを見る。


『お主がこの者たちに危害を加えるというのであれば、わしらはそれを許さぬ。 だが、話の通じるものを無闇に殺したりはせぬよ』

『ありがとう。なら、私たちは、できれば群れに戻りたい』

『帰ったところでまた狙われるのではないかのう?』

『王は、きっとこのことを知らない。 話せば助けてくれる。群れに戻れる』

『なるほど。あい分かった』


 ヴァルアヴィアルスはサティナに向き直り話を始めた。


「そういうことじゃが、お主たちどうするかのう?」

「ん?ああ……そうだな……」


 そう言ってメイフィと顔を見合わせるサティナ。


「どうかしたのかの?」

「いや、私にはそのケルゲァルが何を言っていたのか分からなかったんだが……」


 メイフィはこくこくと頷く。


「なんと!? そうであったか……。 ふむ、これはどういうことかのう。 念話とは種族関係なく意思の疎通ができるものと認識しておったのじゃが」

「私たちも同じです。 だからこそ、ケルゲァルとは意思疎通のできない、その……獣同然なのだと思っていましたので。 まさか、人族となら念話で通じ合えるとは……。 いや、そもそも人族は念話が使えないと聞いておりましたので。 魔法共生国(レイアスカント)でも使える者を私は知りませんし」

「ん……ああ、そうじゃのう……」

『うはっ! ヴィアス様、ヴィアス様! 長老様ったら珍しく動揺してますよ! 自分たちは人間設定なのに念話使っちゃったりしちゃって、もう!』

『エルビー……。 まあ長老のことだ。 それとなくごまかすだろう。 それより、口は災いの元。 特にお前は気を付けるのだぞ。 まさか以前の過ちを忘れたわけではあるまい?』

『あ……あれは……』

『我らドラゴンは意思疎通に念話を用いる。 生まれたばかりの人間が言葉を覚え話すのと同じで、我らドラゴンも自然と念話で話すようになる。 ただ何も知らぬ赤子は全員に聞こえるように話してしまう。 それを魔法を学ぶ過程でただ一人に聞こえるようにすることなどを学ぶのだ。 念話も魔法の一種。 お前はただでさえ魔法の扱いがうまくない。 長老の悪口を長老の目の前で、しかも全員に聞こえるように話すとはな。 おかげでミズィーまで一緒に叱られたわけだが。 私はお前の悪口のせいで長老にお叱りを受けるのは御免だぞ』

『だ……大丈夫ですよ。 あのあとミズィーからもいっぱい怒られたんだもの。 それで念話だけはいっぱい練習したんだから……』

『他の魔法もいっぱい練習しなさい』

『うぎゅぅ……』


 ヴィアスとエルビーのやり取りなど知る由もなく、ヴァルアヴィアルスは考えた。


「まあ、わしも長らく生きておるからのう……」

「なるほど、人族にも賢者と呼ばれる者がいますが、魔法に卓越した方ならば扱えるのかもしれませんね。 しかし、それだとエルビーさんたちも内容が分からずお困りですよね……」

「え? わたしはちゃんと聞こえていたわよ!」


 と笑顔で言うエルビー。


「言ったそばから、この子は……」

「え? あっ……」

「ああ、もうそんなことはどうでもいいだろう。 それより、そのケルゲァルたちはなんと言っていたんだ?」

「おっ、そうじゃな……そっちが本題であった……」


 サティナの一言でここぞとばかりにごまかしつつ説明を始めるヴァルアヴィアルスだった。


「なるほど。 つまり、もしかして、私たちでケルゲァルの群れまでその3匹を送り届ける……なんて言わんよな?」

「ですがサティナ殿。 意思疎通ができると分かった今、無理に遺跡に強行するより、その王とやらに会い話を聞いたほうが良いのではないですか?」

「それは、そうだが……」


 するとその3匹のケルゲァルはサティナを見つめる。


「うぐっ……」

「ちなみにじゃが、2匹は子供で1匹がその母親なのじゃそうじゃぞ。 この者たちだけであの遺跡におるケルゲァルに見つかることなく、群れに帰ることはまあ無理じゃろうな。 もしかしたら、逃げたことでこの幼き命は……」

「ああ!!もうわかった! 私たちで群れに連れていき王に会い話を聞く。 それでいい」

「ほっほっほっ。 では話はまとまりましたな」

『ケルゲァルの者よ。 わしらでお主らを群れまで案内しよう。 それでその群れとやらは今どこにいるのかのう?』


 ケルゲァルの母親が指し示す場所。

 それは山の中腹ほどに開く穴の中だという。

 たださすがにここからは目視できないようだ。


「じゃあ、またノールのゲートで近くまで行きましょ? そこから入口までまたゲートで移動する」

「ふむ。それがよかろう。 頼めるかの?ノールよ」

「どこに繋げればいい?」

「えっへん! わたしが決めるわ! あそこ!」

「わかった」


 いつものようにゲートを開く。


「なんだか感慨深いですね。

 想像もしえない光景なのに。

 今じゃ馬車に乗るぐらいの感覚で究極の魔法が展開しているんですよ?」

「メイフィ。 考えるだけ無駄だ……。 行くぞ」


 ゲートから出ると3匹のケルゲァルはあたりをキョロキョロと見渡している。


『ここは!? いったいどうして?』


 一瞬で遥か離れた距離を移動していたことに動揺している様子だ。


「ねえ。たぶん位置的に正解だったのだと思うけど。 なんだか変なことになっているわよ? あれ」


 そこから見える光景。

 それはケルゲァル同士が戦っている。

 もう少し詳しく話すと下から上がってくるケルゲァルを上にいるケルゲァルが追い払っているという感じに見える。


『あそこです! あそこが私たちの巣穴。 けど、あれはいったいどうして……。 なぜ戦士たちが仲間を落としているのか……』


 どうやら上にいるのが戦士と呼ばれる者たちみたい。


『戦士とは何かの?』

『王に仕える勇敢な者たちのことです。 おそらく、遺跡から戻ってきた仲間を王は追い払っているのではないでしょうか』

『なるほど。 つまり、遺跡での問題に王が気付いた、と言うことじゃろうな。 ならばなおさら王に会う必要が出てきたようじゃ』


 ヴァルアヴィアルスはケルゲァルとの会話をサティナに説明する。


「見たところ、王の戦士とやらは押され気味にあるようじゃ。 つまりあの者たちに助太刀すれば王に会えるやもしれぬが、どうするかの?」

「助太刀って……。 あれ全部相手にするのか? 無理だ。無謀すぎる……」

「いやなに。 あれらすべてと戦う必要はない。 わしに考えがあるのじゃ」

「と言うと?」

「その3匹のケルゲァルを助ける際に、他のケルゲァルたちが侵入できぬようにノールが結界を張っておったであろう? 同じように結界を洞窟入口に張れば足止めにはなるじゃろう」

「なるほど。 それは確かに」

「わしやヴィアスが結界を張ってもよいが、ふむ。 うまくいくかはちと賭けになるがのう」

「わかった。 結界は僕が張る。 ただ結界を張る前に中に入らないと」

「そうよな。 ではわしらで露払いとするかのう。 そういうことでどうかの?サティナ殿」

「ああ、異存はないさ」

「では……」


 入口の前。

 ヴァルアヴィアルスの指示により、上のケルゲァルと下のケルゲァル、その間ぐらいに出てこられるようにゲートを開く。

 ここにいる3匹のケルゲァルには、おそらく味方であるはずのケルゲァルに説明する役目を負ってもらった。

 結界を張ったのはいいが取り残されてしまったのでは面倒なので、結界を張る前に引いてもらうように。


「皆、準備はよいか? では、行くぞい」

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