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エルフの大樹

「あの橋を渡るともうドワーフ公国領なんですよ」

「へえ、おっきな橋ねー」

「橋を渡った先はリドガルムと言う街です。 リドガルムを北に行くとドワーフ公国の首都ドワルクがあります。 ただ私たちはリドガルムから西に向かうので首都には行きませんけど」

「そうなのね。 ドワーフの国がどういうものか見てみたかったけど。 まあそれは帰りにでもするわ。 ところで……。 さっきからサティナはなんでコソコソしているの?」

「今は話しかけるな。 ドワーフ共に気付かれる」

「いや、逆に怪しいわよ? まあ、いいけど。 あそこでもまた何かやっているわね」

「はい、橋を渡る前と同じであそこでも通行証を提示するんです。 昔は目視で確認していたらしくものすごく時間がかかるものだったらしいですよ。 今では魔法技術の発達により一瞬でチェックが終わります。 エルフの森にいたときには想像もつかない魔法技術ですね。 人族はほんと様々なものを生み出していると思います」

「ふん。 ただ楽をするためだけではないか。 生きると言うことは自然の恵みによって生かされると言うこと。 つまり、自然と同じ時を過ごしてこそ意味があるのだ」

「でもエルフだって魔法を使うでしょ?」

「我々が使う魔法は自然に宿る精霊の加護だからいいのだ」

「何が違うのよ、それ……」

「ああ、ええっとですね。 私が説明します。 人族が使う魔法は神の恩恵とされています。 しかし神は人族以外に恩恵をもたらさないともされています。 なので、エルフ族としては神の力である魔法は邪道なんですよ。 精霊魔法は神ではなく精霊、つまり自然の力なので良いとされています」

「へえ~……ん? んー……んん?」

「どうかしましたか?」

「え? いや、長老様が使う魔法って精霊魔法だったかなぁ? と思って……」

「エルビーさんたちのような人族なら精霊魔法じゃなくても普通のことですよ?」

「あ、ああ、そうね……。(わたしがドラゴンってことは言えないわよね、さすがに…) …っと、そろそろわたしたちの番ね」

「じゃあ次、通行証確認するぞ」


 エルビーたちは一人ずつ通行証を台の上に乗せると管理官が杖のようなものを通行証の上にかざす。

 すると通行証を乗せた台が青白く光りだした。


「よし、通っていいぞ。 次~」


 そんなようなことを複数の列を作り行っている。

 ふと後ろを見るとちょうどサティナの番だった。


「なんかすごくビクビクしているけど、とっても怪しいわね。 それでもちゃんと通行できるのね」

「そう……ですね。 昔のチェック方法だったら怪しまれて連れていかれたかもしれません。 やはり魔法は偉大です」

「ふぅ~……」

「サティナ大丈夫? そんな大きなため息なんてついて」

「いやな、あのドワーフ。 以前私が逃げる際に突き飛ばした奴だったので……緊張した」

「相手が覚えて無くて良かったわね」

「いや、それがどこかで見た覚えが……とか言われてすごく焦った」

「じゃあ思い出される前に行きましょ」

「そうですね。 それで、頭目。 エルフの森まではどの馬車で向かうのですか?」

「は? 何を言っているんだ?」

「え?それはどういう……」

「いや、基本他種族と交流を持たぬ我々の森に向かう馬車なんてあるわけがないだろう。 だいたい自分の時のことを思い出してみろ。 ここまで送り届けたのも迎えに来たのも我々の馬車だ」

「え~と。 それでも手配などは……」

「無理だな。 エルフの森方面にはほとんど村落はない。 それこそ行列をなして大冒険となれば話は違うだろうが、ちょっとした馬車でエルフの森まで、なんていうのは自殺行為にしかならない。 というかメイフィよ。 そんなことも知らなかったのか?」

「あ、でしたら連絡を取って迎えに来てもらうのはどうでしょう?」

「誰に? お前を迎えに行ったのは私で、私は今ここにいるぞ? まあそれ以前に通信する手段がない。 お前は連絡用魔符(メッセンジャー)を使って連絡を取ったと思うが、あのメッセージを受け取るためのマジックアイテムが今は集落にない。 あれは魔法共生国(レイアスカント)からの借り物でお前が卒業した後に返したからな」

「え~と、それなら……。 頭目はどうやってエルフの森まで行くつもりだったのですか?」

「歩いてだが……」

「大人ですらかなり過酷ですよ……。 小さな子がいるのにそれは無謀です…」

「やっぱりそうか……」

「ふーーん……。 遠い場所まで一瞬で行くことが出来ればいいのよね……。 ん~……。 あっ! ねえノール。ゲートの魔法でエルフの森まで行けないの?」

「場所が分からない。 せめて視認できる場所じゃないと難しい」

「じゃあ、まずあそこの山に行って、あそこから森を目指すのは?」


 エルビーが指をさしたのはこのドワーフの国の北方に連なる大きな山脈と呼ばれる場所だった。

 標高はエルビーたちドラゴンが住むドラゴンズ・ピークよりもさらに高いのだが、遠いためエルビーはそれに気づかないでいた。


「やってみる」


 ノールは魔法を発動する。

 空間が歪みゲートが出現する。


「えーと……。これは?」

「ゲートの魔法よ。ゲートの先が別の場所に繋がっていて、遠く離れていてもあっという間に移動できるの」

「ほう……。それでどこに繋がっているんだ?」

「あの山……のたぶんどこかよ。 それで今度は山の上から森を見ればゲートの魔法が使えるでしょ? 一回出辿り着けなくても何度か繰り返せば行けると思うのよ」

「ふむ。なるほど。 では行くとするか」

「と……頭目!?」

「なんだ?」

「い……いや、大丈夫なのですか?」

「知らん。だがこれほど安定して魔法が発動しているなら問題はないだろう」

「いや、そういう話ではなくて……」

「何をしている。 ほら皆も行くぞ」


 ゲートをくぐる。

 するとそこは……。


「さっむっ! お、おい! 寒すぎるだろ!」

「え?そう? お腹出しているからじゃないの?」

「フッ。 美しきエルフたるもの、このぐらいは普通だろう」

「でもメイフィたちと比べても明らかに薄着なのだけど?」

「あの! そんな話はいいので! 私たちも寒いので早く!」

「どこに?」

「とりあえず! どこでもいいので! お願いします!」

「わかった」


 再度ゲートの魔法を発動しくぐる。


「んあっ……。 凍え死ぬかと思った」

「もう、エルフって寒さに弱いのね」

「確かに強いほうではないが、あの猛吹雪の中で平気なお前たちがおかしいのだ!」

「そ、そもそもあの吹雪で見えていたんですか?」

「ギリギリ」

「もし視界通らなかったらどうするつもりだったんですか……。 あの、次はもう少し低い位置でお願いします。 寒くないところ。 あと山にかかる雲が無いところで」

「私は楽しかったけど……。 まあしょうがないわね。 じゃあ、あそこなんてどう?」

「ま、まああそこならたぶん、大丈夫だとは思います」


 ノールたちはそうして平地と山の移動を幾度か繰り返した。


「あ、あの木です! あの一際高い木を目指すことは可能ですか? あそこに行くことが出来れば私たちの集落は目前です」

「あの木なに? こんな遠くからでもはっきり見えるなんて」

「あれはエルマイノスの大樹と呼ばれる木です。 あの木の近くならば私たちの集落は目前です」

「わかった。けど少し待っていて。 木が邪魔で低い位置にゲート出せない。 一度、僕一人で行ってからもう一度ゲートを開く」

「あの、それ、私たちがいる場所見失ったりしないですか? ここで迷子はさすがに……」

「エルビーがいれば、たぶん大丈夫」

「そう……ですか。では待ちます。 あの、早めに戻ってきてくださいね」


 魔法の発動により空間の歪みと共にゲートが現れるとノールは入って行く。


「ほんとに大丈夫でしょうか」

「お前は心配性だな。たぶん大丈夫だろう」


 ほどなくして、エルビーの眼前に再びゲートが開かれる。


「ああ良かった……。 このまま戻って来られなかったら……あっ?!」

「アハハハハハハハハハッ!! 何その恰好! ノールどうしちゃったの?」

「あ、あそこか……」

「ゲートから出たら沼だった。 ゲートで高いところから降りるのは以前やっているから大丈夫と思っていたけど。 着地する場所が沼になっているとは思わなかった」

「せめて泥落として来ればよかったのに」

「メイフィが早めに戻って来いと言ったから……」

「あの、それは、すみません。フフフッ……」

「ともかく、安全な場所にゲート出してある」

「ねえ、走って飛び込んだら泥だらけってこと、ないわよね?」

「なら、もう一つゲート出すから……」

「出さなくていいわよ!」

「よし! じゃあ、久しぶりの我が里に向かうとするか!」

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