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帝国からの使者

「お久しぶりです。 ノール様、エルビー様」

「久しぶりね、え~と……」

「エルネシアです」

「あ、そうそう、エルネシア。 元気にしてた?」

「ええ、それはもうおかげさまで。 そちらの皆さまも、初めまして。 わたくしは国王エイルバルトの娘、エルネシアと申します。 以後お見知りおきください」


 そう言うと一礼する王女。

 王女に案内され城門を抜けた先、ある程度門から離れたところでノールとエルビーに話しかけてきたのだ。


「え?! お姫様!? やっぱりさっきのは聞き間違いじゃなかった……。 そんな方と知り合いだなんて。 エルビーさんって……。 もしかして、貴族の人だったんですか? いやまさか王族の方!?」

「ビリエーラ、何を言っているのよ。 ゴーレムに襲われたときの依頼の時、クルクッカから王都まで一緒に行ったってだけよ。 わたしは、その貴族だかってやつじゃないわよ?」

「ビリエーラ。 失礼よ? お姫様の前で」

「あ、す、すみません」

「ふふっ、いえ、お構いなく」

「ほらっ、ヘイゼル、自己紹介」

「あ、お、俺は、あ、じゃなくて、私は、ヘイゼルと申します。 えーと、帝国で冒険者をやっています。 Aランク冒険者です。 よろしくお願いします」

「ヘイゼル、初めてのお見合いみたいになってるわよ。 初めまして、お姫様。 私はラゥミー。 同じく帝国の冒険者で疾風迅雷の魔剣と言うチームのメンバーです。 あ、ヘイゼルはチームリーダーですわ」

「俺は、アーディ。 同じく疾風迅雷の魔剣のメンバーだ」

「私は、この度皇帝陛下の命により、使者として派遣されましたビリエーラと申します。 以後、お見知りおきを」

「ええ、皆さま、よろしくお願いします。 それで、国王に謁見したいとのことですが、それは帝国の皆様が、と言うことでしょうか」

「え? ああ、そうだ、です」

「失礼ですが、どういったご用向きでしょうか。 今、父は大臣らと会議をしている最中のはずでして。 娘とは言え会議を中断させることは出来ませんので」

「ああ、実は……」


 ヘイゼルはやっと本調子を取り戻したのか、今回の経緯について説明を始めた。


「なるほど。 実は今、会議している内容と言うのがまさにそのことについてだと思われるのです。 ただ、お恥ずかしい限りですが、その会議と言うのが王派閥と貴族派閥で紛糾しているようでして。 貴族派閥を束ねるリドマイガス公も悪い人ではないのですが、今回は少しも譲ることが無い様子。さすがに詳細まではわかりませんが、幾度となく会議を繰り返しているとお父様が話しておりました……。 皆様を会議室にご案内いたします。 どうか、皆様のお力をお貸しください」


    ◇


 王城の一室にて。


「失礼ながら陛下、以前より申し上げております通り、エルフたちの護送、我々にお任せいただけませんか。  陛下のお気持ちは重々承知しております。 ですが、もしここでエルフたちに何かあれば、それこそ取り返しのつかないことになります。 それは陛下もよくご存じでしょう?」

「何を言いますか、リングーデン卿。 此度、エルフを保護したのは我々銀星騎士(シルバースターズ)なのです。 ならばそのまま我らが帝国まで送り届けると言うのが筋と言うものでしょう」

「殿下。 お気持ちはわかりますが、これは国家としての一大事なのですよ? くだらないプライドなどお捨てください。 今、もっとも最優先すべきなのは何か。 それをもう一度考えていただきたいですな」

「よくも抜け抜けと! 貴殿は帝国に媚を売りたいだけでしょう!」

「な、なんと失礼な! 私はこの国を思って陛下に申し上げているのですぞ!」

「二人とも止めぬか。 みっともない」

「り、リドマイガス公……。 申し訳ございません」

「しかし、陛下。 私もリングーデン卿の意見には賛成です。 殿下のお気持ちも分かりますが、先日の帝国皇帝に当てた親書。 なぜ私に相談してくださらなかったのでしょう? あれでは悪いのは帝国だ、とそう言っているようなものはありませぬか。 帝国はエルフなど亜人に対して特に気を使っております。 自国の責任追及を恐れて、事に及ぶかもしれませんぞ? ここは、帝国とも付き合いのあるリングーデン卿にお任せしてみてはいかがでしょうかな」

「リドマイガス公。 其方の心遣いには感謝する。 しかし、これは私が信頼していた者が起こした不始末。 ならばその主として、そして一国の王として、責任を果たそうと言うのも理解していただきたい」

「陛下……」


    ◇


 「失礼します」


 エルネシアは会議室の扉をノックすると、返事を待つことなく入室する。


「エルネシア。 どうしたのか。 今は会議の最中なのだぞ?」

「申し訳ありません、お父様。 ですが、可及的速やかにお伝えせねばならぬことがございましたため、失礼ながらお邪魔いたしました」

「姫。 いくら姫と言えど、守るべきルールは守って頂かなくては示しがつきませぬぞ?」

「ですから、可及的速やかな……」

「ここは子供が遊びに来る場所ではないのですぞ。 いつぞやの家出騒ぎと言い、まったく困った姫様ですな。 見張りの兵士は何をやっていたのやら」


 すると、様子を伺っていたヘイゼルたちは痺れを切らしたのか黙って入室する。


「ちょっと、失礼するぜ」

「な、なんだお前たちは!」

「姫!これはどういうことですか?! このような場所に得体のしれない者を入れるなど何を考えておられるのですか!」

「ああ、そうカリカリするなって。 失礼するぜって言ったじゃねーか。 あー……、あ、居た居た。 リドマイガス公、ご無沙汰しています」

「ほう。誰かと思えばヘイゼル殿か。 しかし、帝国の冒険者殿が一体何ゆえこのような場所に?」


 さっきまで文句を言っていた貴族はヘイゼルがリドマイガスの名を出したとたんに静かになった。


「姫様や兵士さんには無理を言ってお願いしたのさ。 おっとその前に。 陛下、お初にお目にかかります。 私は帝国の冒険者チーム、疾風迅雷の魔剣のリーダー、ヘイゼルと申します。 実は、ルイ……、あ、え~と、帝国皇帝陛下より親書を預かっております。 エルフの件、と言えばお分かりになられるかと」


  ヘイゼルの言葉に王の近くに居たものが近寄り、そして親書を受け取り王に渡す。


「なんと! 疾風迅雷の魔剣だと!?」

「帝国最強の冒険者と噂の!」

「数多の竜を滅ぼし、凶悪なゴーレムを滅し、さらには拳王を倒したと噂の、あの!」

「皆の者静まれ。 しかし……、なるほど、今回の件、やはり帝国も動いたわけか」

「ええ、リドマイガス公。 今回の依頼、帝国皇帝から直々にご指名って話ですからね。 こっちとしてはいい迷惑ですよ」

「はははっ。 それはヘイゼル殿も鼻が高いのではないかね?」

「いや勘弁してくださいよ」

「それで、陛下。 帝国はなんと?」

「ああ。 今回の首謀者、つまり売買に関わった王国貴族や盗賊らの引き渡し要求、または王国内でのその者たちへの尋問の許可と言ったところだ。」

「それはエルフ護送のほうではなく、関係者の引き渡しですか」

「陛下、王国の者を帝国に引き渡すなど反対ですぞ」

「何を言っている、引き渡すのは犯罪者であるぞ? 無実の民と言うわけでもない」

「だとしても、それは王国内で処分するべきです。 引き渡しなどすれば、王国は自国民を守りもしないのかと誹りを受けますぞ」

「落ち着きたまえ、王国内での尋問とも言っておる。 引き渡しは出来ないが尋問は許可してやればよいではないか。 帝国も王国の者を処分したいのではなく、事情を聴きたいと、そういうことなのであろう」

「それに、エルフに限らず王国では帝国同様人身売買を禁止しているのだ。 帝国と歩みを揃えてそういった犯罪に確固たる対応をしていくと言う見せしめにもなる」

「ですが、事情を聴くにしても帝国貴族と繋がりがあったと思われる者は……」

「確かに……それは参りましたな」


 そういうと王国の貴族一同は互いに顔を見合わせていた。


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