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捕らわれた者たち

「ねえ。あんたたち。わたしたち捕まえてどうする気なの?」


 様子見するって言ってのだけどエルビーは我慢できなかったのか、盗賊の一人に声をかけている。


「どうするもねえよ。お前らみたいなのを欲しがるのがいるのさ。ったくここ最近、街道で商人ども襲っても失敗続きだしな。冒険者なんぞ雇いやがって……! その点、お前らを誘拐するのは楽でいい。まあ、せいぜい高値で売れてくれよ」

「誰が買うって言うの?」

「そんなのペラペラ喋るわけがないだろ」

「別にいいじゃない。どうせその人たちのところに売られたら分かってしまうことなんだもの。今のうちに教えてくれても損はしないでしょ?」

「知らねえよ。俺たちは金が貰えればそれでいい。お前らが誰に買われていくかなんて興味ねえからよ」

「ふーん。この盗賊団のリーダーってあんたなの?」

「あっ?なんでそんなこと聞くんだ?」

「だって、わたし売られていくんでしょ? ならわたしを売った盗賊団のリーダーのことぐらい知っていたいじゃない。 名前を聞いて、いつか必ずふくしゅーしてやるって、思いたいじゃない?」

「お前、自分がこの先どんな目に合うか分からねえのに怖くねえのか?」

「そうね、怖いかもしれないわ。だから教えて。高値で売った商品があっさり壊れちゃったら相手から文句言われるかもしれないわよ」

「まあいい。俺様はピッグス。この盗賊団、赤竜の鉤爪レッド・ドラゴン・クローの首領だ」

「へえ。ねえ、首領って何?」

「はっ?」

「あ、もしかして首領ってリーダーってこと?」

「当たり前だろが」

「えっ、じゃああんたがこの盗賊団で一番偉いんだ。この間、仲間がいっぱい捕まってたけど大丈夫なの?」

「ここにいるのが本物の、赤竜の鉤爪レッド・ドラゴン・クローだ。あいつらはしょせん捨て駒さ」


 一通り話をして気が済んだのか、エルビーが念話で話しかけてきた。


『ドラゴンだって。こいつらもあたしと同じなのかな?』

『普通の人間。強くはない』

『ってことは様子見の必要、もう無くない? こいつらやっちゃえば終わりじゃん?』

『そう、たぶん』

『じゃあ……』

『待って。動きを封じる』

『分かったわ』


 別に相手を倒す必要はない。

 行動さえ抑えられれば十分なのだから。

 とは言っても相手が魔法を使わないとは限らないし、ビッツのようにナイフを投げたりする可能性もある。

 魔法攻撃に対しては魔法を防ぐ壁を作ることで何とかなる。

 ナイフなどに対しては氷、もしくは土の壁でなんとかなりそうだけど。

 今盗賊たちはこの洞窟内の広間に集中している。

 広間以外だと、この広間の奥に複数の気配。

 ただ人間の気配とはちょっと異なる感じ。

 エルビーにはそっちの対応をしてもらおう。


『エルビー。この奥からも複数の気配がする。ただ盗賊かどうかは分からない。人間とはちょっと違う気配。そっちを調べてきて』

『分かったわ。でもどうやって出るの?』

『それは、……』


 ノールは魔法を発動する。

 相手の足元の土を一度液状化させて泥のようにする。

 相手の足が沈みこんだところでまた地面を元に戻す。

 これで移動を封じる。

 ただし、多人数相手だったので、全員がしっかり埋まっているとは限らない。

 うまく回避した者がいる可能性は考慮しておく。

 次に牢。

 この牢は洞窟の中にあるのでおそらく格子はそれほどしっかり作られていないと思う。

 格子をはめ込んでいる部分を崩すだけで外れると予想する。

 格子がはめ込まれている岩を次々と崩壊させる。

 そして格子を向こう側に押してやった。

 大きな音を立てて鉄製の格子が倒れる。

 盗賊の何人かが下敷きになっているけど気にしない。


「うぎゃあーーー。」「なんだなんだ!?」「足が!足が!」

「きゃーーーー!!」「ぎゃーーー!!」


 一瞬のことで呆気に取られていた盗賊たちの悲鳴が聞こえる。

 捕まっている人たちのほうからも悲鳴は聞こえたが、盗賊に何かされたわけでもないようなので気にしない。


『エルビー、行って』


 ノールの言葉を合図にエルビーが駆けだす。

 途中、足が埋まって動けない盗賊を殴ったり蹴ったりしながら良さげな剣を奪っていくのを忘れない。

 そのまま広間の奥に消えていった。

 その間、こちらは投げナイフや魔法に警戒するべく、もともと格子があった場所に氷の壁を作る。

 そして外への出口となる方に氷の塊を生み出し塞ぐ。

 エルビーが向かったほうに逃げられる危険はあったが、そこを塞いでしまうとエルビーが戻って来られなくなるので諦めた。

 逃げられても先にはエルビーがいるから大丈夫だろうし。

 さて、一通りのことをやったところで状況確認。

 まず、盗賊。

 うまく回避できたものはいなかった。

 ただ自分が持つ剣で地面の土を掘っている。

 浅く埋まった者は抜け出してくるだろう。

 投げナイフや魔法を撃ってくるものはいない。

 そして捕まっていた人たちの方は、なにやら茫然としている。

 なので問題なし。

 あとはエルビーが戻ってから対応を考えよう。


「ねえ!向こうにも何人か捕まってたわ! しかもエルフ族だったわよ! って何よこれ?」


 通路入り口から顔を覗かせエルビーが叫ぶ。

 氷の壁を見たからなのか、その声に疑問符を浮かべていた。


「おい!てめえら何しやがった!! こんなことしてタダで済むと思ってんじゃねーぞ!!!」

「うるさい」


 盗賊が叫ぶ。

 その後に何か鈍い音がした。

 エルフか。

 人間そっくりだけど人間とは違う長寿の生き物のはず。

 しかし、氷の壁のせいでよく聞き取れない。


『エルフ?連れてきたの?』

『まだよ。先に言いに来たの』

『なら先にこっちの捕まっている人達を逃がす。出口近くの氷だけ壊すからその近くに行って、盗賊たちが動きそうだったら止めて』

『分かったわ』


 向かって一番右側に移動し、魔法を発動させる。

 今度は単純に破壊するだけ。

 氷が音を立てて砕け散った。


「あの。ここから逃げられるので逃げてください」

「えっ?あ、はい」


 何が起きているのか理解が追い付かない人や助かったことに安堵している人。

 外から盗賊の気配は感じられないが、念のため自分が先頭に立って歩き始める。

 エルビーは今、盗賊たちと捕まった人の間に立って盾代わりになるのと同時に、盗賊が逃げないよう見張りも兼ねている。

 さて、どうやって捕まえようか。

 ふと、周りの景色を見渡す。

 森の中。

 なら。

 ノールはまた洞窟の中に戻っていった。

 森の中から沢山伸ばしたツルを引き連れて。


「きもちわるっ!」


 洞窟の中にいたエルビーが叫ぶ。

 ひどい。

 洞窟入り口を埋め尽くさんと大量のツルを引き連れ戻る。

 細いツルもあれば太いツルもある。

 1本2本だと人間の力でも切れてしまうだろうけど何重にもすれば大丈夫だろう。

 ということで盗賊たちをこれでグルグル縛る。


「なんだ?なんだこれ?」「ひ、人食い植物か?!」

「いやだーーー!助けてくれ!かあちゃああああん!!」

「まだ死にたくない……ぐすん……」


 色とりどりの悲鳴が聞こえている中、しっかりと縛り上げていく。

 完成。

 

「なにこれ。なんか昔聞いたことあるわ。人間や他の生物を捕まえて逃げられないようにするの。で、後からゆっくり食べるのよね。なんだっけ? あれ」

「いや、僕に聞かれても」


 岩だらけだった洞窟が今や緑豊かなツルだらけの洞窟になった。

 あ、そんなことよりエルフたち。


「ちょっとエルフも連れてくる。エルビーは盗賊見張ってて」

「わかったわ。でも早く戻ってきてね。これずっと見てると精神がおかしくなりそうだから」

「あ、うん」


 ノールは洞窟の奥に向かった。

 そこには6人の女性、あと小さい子供が4人。

 

「君たちは、エルフ?」

「えっ?あ、はい。私たちはエルフ族です。えっと君は? さっきの女の子はいったい?」

「ノール。さっきのはエルビー。盗賊は捕まえた。なので外に連れていく」

「助けてくれるのですか?」

「そう」


 さっきまで強張っていたエルフたちの表情が柔らかくなっていく。


「牢を壊す。離れていて」

「はい」


 ノールは格子に向かって手を翳す。

 そして魔法を発動する。

 効果は破壊。

 格子の至る所に亀裂が入り、そして音を立てて崩壊する。


「じゃあ、こっち」


 ノールの言葉に促されエルフたちは付いて行く。

 盗賊たちを捕らえた広間に出た。


「きゃっ!!」「いやーー!!」


 叫び声をあげ、目を逸らすエルフたち。


「なんて惨たらしい」

「いいえ、良い気味よ」

「まるで悪魔に囚われたような光景ね」

「こんなおぞましいもの、初めて見たわ……」


 エルフたちは口々にそんなことを言っている。


「ほんと、わたしもそう思うわ!」


 これはエルビー。

 ちょっと待って。

 ツルで縛り上げているだけなんだけど。

 盗賊全員生きているんだけど。

 そんなやり取りの後、エルフたちも洞窟の外に出た。

 ここからどうしよう。

 ふと前回の襲撃者が火球で合図するのを思い出した。

 同じことをすればビッツたちが気づいてくれるかも。

 ノールは魔法を展開する。

 以前の火球より若干威力を強めて。

 そして空に放つ。

 日が沈み始め暗くなっていく空に上がる火球を眺め、ノールは自身の過ちに気づき、そしてつぶやく。


「威力の設定、間違えた。」20話 捕らわれた者たち


「ねえ。あんたたち。わたしたち捕まえてどうする気なの?」


 様子見するって言ってのだけどエルビーは我慢できなかったのか、盗賊の一人に声をかけている。


「どうするもねえよ。お前らみたいなのを欲しがるのがいるのさ。ったくここ最近、街道で商人ども襲っても失敗続きだしな。冒険者なんぞ雇いやがって……! その点、お前らを誘拐するのは楽でいい。まあ、せいぜい高値で売れてくれよ」

「誰が買うって言うの?」

「そんなのペラペラ喋るわけがないだろ」

「別にいいじゃない。どうせその人たちのところに売られたら分かってしまうことなんだもの。今のうちに教えてくれても損はしないでしょ?」

「知らねえよ。俺たちは金が貰えればそれでいい。お前らが誰に買われていくかなんて興味ねえからよ」

「ふーん。この盗賊団のリーダーってあんたなの?」

「あっ?なんでそんなこと聞くんだ?」

「だって、わたし売られていくんでしょ? ならわたしを売った盗賊団のリーダーのことぐらい知っていたいじゃない。 名前を聞いて、いつか必ずふくしゅーしてやるって、思いたいじゃない?」

「お前、自分がこの先どんな目に合うか分からねえのに怖くねえのか?」

「そうね、怖いかもしれないわ。だから教えて。高値で売った商品があっさり壊れちゃったら相手から文句言われるかもしれないわよ」

「まあいい。俺様はピッグス。この盗賊団、赤竜の鉤爪レッド・ドラゴン・クローの首領だ」

「へえ。ねえ、首領って何?」

「はっ?」

「あ、もしかして首領ってリーダーってこと?」

「当たり前だろが」

「えっ、じゃああんたがこの盗賊団で一番偉いんだ。この間、仲間がいっぱい捕まってたけど大丈夫なの?」

「ここにいるのが本物の、赤竜の鉤爪レッド・ドラゴン・クローだ。あいつらはしょせん捨て駒さ」


 一通り話をして気が済んだのか、エルビーが念話で話しかけてきた。


『ドラゴンだって。こいつらもあたしと同じなのかな?』

『普通の人間。強くはない』

『ってことは様子見の必要、もう無くない? こいつらやっちゃえば終わりじゃん?』

『そう、たぶん』

『じゃあ……』

『待って。動きを封じる』

『分かったわ』


 別に相手を倒す必要はない。

 行動さえ抑えられれば十分なのだから。

 とは言っても相手が魔法を使わないとは限らないし、ビッツのようにナイフを投げたりする可能性もある。

 魔法攻撃に対しては魔法を防ぐ壁を作ることで何とかなる。

 ナイフなどに対しては氷、もしくは土の壁でなんとかなりそうだけど。

 今盗賊たちはこの洞窟内の広間に集中している。

 広間以外だと、この広間の奥に複数の気配。

 ただ人間の気配とはちょっと異なる感じ。

 エルビーにはそっちの対応をしてもらおう。


『エルビー。この奥からも複数の気配がする。ただ盗賊かどうかは分からない。人間とはちょっと違う気配。そっちを調べてきて』

『分かったわ。でもどうやって出るの?』

『それは、……』


 ノールは魔法を発動する。

 相手の足元の土を一度液状化させて泥のようにする。

 相手の足が沈みこんだところでまた地面を元に戻す。

 これで移動を封じる。

 ただし、多人数相手だったので、全員がしっかり埋まっているとは限らない。

 うまく回避した者がいる可能性は考慮しておく。

 次に牢。

 この牢は洞窟の中にあるのでおそらく格子はそれほどしっかり作られていないと思う。

 格子をはめ込んでいる部分を崩すだけで外れると予想する。

 格子がはめ込まれている岩を次々と崩壊させる。

 そして格子を向こう側に押してやった。

 大きな音を立てて鉄製の格子が倒れる。

 盗賊の何人かが下敷きになっているけど気にしない。


「うぎゃあーーー。」「なんだなんだ!?」「足が!足が!」

「きゃーーーー!!」「ぎゃーーー!!」


 一瞬のことで呆気に取られていた盗賊たちの悲鳴が聞こえる。

 捕まっている人たちのほうからも悲鳴は聞こえたが、盗賊に何かされたわけでもないようなので気にしない。


『エルビー、行って』


 ノールの言葉を合図にエルビーが駆けだす。

 途中、足が埋まって動けない盗賊を殴ったり蹴ったりしながら良さげな剣を奪っていくのを忘れない。

 そのまま広間の奥に消えていった。

 その間、こちらは投げナイフや魔法に警戒するべく、もともと格子があった場所に氷の壁を作る。

 そして外への出口となる方に氷の塊を生み出し塞ぐ。

 エルビーが向かったほうに逃げられる危険はあったが、そこを塞いでしまうとエルビーが戻って来られなくなるので諦めた。

 逃げられても先にはエルビーがいるから大丈夫だろうし。

 さて、一通りのことをやったところで状況確認。

 まず、盗賊。

 うまく回避できたものはいなかった。

 ただ自分が持つ剣で地面の土を掘っている。

 浅く埋まった者は抜け出してくるだろう。

 投げナイフや魔法を撃ってくるものはいない。

 そして捕まっていた人たちの方は、なにやら茫然としている。

 なので問題なし。

 あとはエルビーが戻ってから対応を考えよう。


「ねえ!向こうにも何人か捕まってたわ! しかもエルフ族だったわよ! って何よこれ?」


 通路入り口から顔を覗かせエルビーが叫ぶ。

 氷の壁を見たからなのか、その声に疑問符を浮かべていた。


「おい!てめえら何しやがった!! こんなことしてタダで済むと思ってんじゃねーぞ!!!」

「うるさい」


 盗賊が叫ぶ。

 その後に何か鈍い音がした。

 エルフか。

 人間そっくりだけど人間とは違う長寿の生き物のはず。

 しかし、氷の壁のせいでよく聞き取れない。


『エルフ?連れてきたの?』

『まだよ。先に言いに来たの』

『なら先にこっちの捕まっている人達を逃がす。出口近くの氷だけ壊すからその近くに行って、盗賊たちが動きそうだったら止めて』

『分かったわ』


 向かって一番右側に移動し、魔法を発動させる。

 今度は単純に破壊するだけ。

 氷が音を立てて砕け散った。


「あの。ここから逃げられるので逃げてください」

「えっ?あ、はい」


 何が起きているのか理解が追い付かない人や助かったことに安堵している人。

 外から盗賊の気配は感じられないが、念のため自分が先頭に立って歩き始める。

 エルビーは今、盗賊たちと捕まった人の間に立って盾代わりになるのと同時に、盗賊が逃げないよう見張りも兼ねている。

 さて、どうやって捕まえようか。

 ふと、周りの景色を見渡す。

 森の中。

 なら。

 ノールはまた洞窟の中に戻っていった。

 森の中から沢山伸ばしたツルを引き連れて。


「きもちわるっ!」


 洞窟の中にいたエルビーが叫ぶ。

 ひどい。

 洞窟入り口を埋め尽くさんと大量のツルを引き連れ戻る。

 細いツルもあれば太いツルもある。

 1本2本だと人間の力でも切れてしまうだろうけど何重にもすれば大丈夫だろう。

 ということで盗賊たちをこれでグルグル縛る。


「なんだ?なんだこれ?」「ひ、人食い植物か?!」

「いやだーーー!助けてくれ!かあちゃああああん!!」

「まだ死にたくない……ぐすん……」


 色とりどりの悲鳴が聞こえている中、しっかりと縛り上げていく。

 完成。

 

「なにこれ。なんか昔聞いたことあるわ。人間や他の生物を捕まえて逃げられないようにするの。で、後からゆっくり食べるのよね。なんだっけ? あれ」

「いや、僕に聞かれても」


 岩だらけだった洞窟が今や緑豊かなツルだらけの洞窟になった。

 あ、そんなことよりエルフたち。


「ちょっとエルフも連れてくる。エルビーは盗賊見張ってて」

「わかったわ。でも早く戻ってきてね。これずっと見てると精神がおかしくなりそうだから」

「あ、うん」


 ノールは洞窟の奥に向かった。

 そこには6人の女性、あと小さい子供が4人。

 

「君たちは、エルフ?」

「えっ?あ、はい。私たちはエルフ族です。えっと君は? さっきの女の子はいったい?」

「ノール。さっきのはエルビー。盗賊は捕まえた。なので外に連れていく」

「助けてくれるのですか?」

「そう」


 さっきまで強張っていたエルフたちの表情が柔らかくなっていく。


「牢を壊す。離れていて」

「はい」


 ノールは格子に向かって手を翳す。

 そして魔法を発動する。

 効果は破壊。

 格子の至る所に亀裂が入り、そして音を立てて崩壊する。


「じゃあ、こっち」


 ノールの言葉に促されエルフたちは付いて行く。

 盗賊たちを捕らえた広間に出た。


「きゃっ!!」「いやーー!!」


 叫び声をあげ、目を逸らすエルフたち。


「なんて惨たらしい」

「いいえ、良い気味よ」

「まるで悪魔に囚われたような光景ね」

「こんなおぞましいもの、初めて見たわ……」


 エルフたちは口々にそんなことを言っている。


「ほんと、わたしもそう思うわ!」


 これはエルビー。

 ちょっと待って。

 ツルで縛り上げているだけなんだけど。

 盗賊全員生きているんだけど。

 そんなやり取りの後、エルフたちも洞窟の外に出た。

 ここからどうしよう。

 ふと前回の襲撃者が火球で合図するのを思い出した。

 同じことをすればビッツたちが気づいてくれるかも。

 ノールは魔法を展開する。

 以前の火球より若干威力を強めて。

 そして空に放つ。

 日が沈み始め暗くなっていく空に上がる火球を眺め、ノールは自身の過ちに気づき、そしてつぶやく。


「威力の設定、間違えた。」

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