王都
王女様と別れた俺たちだが、問題はそれだけではなかった。
あくまで観光と言う名の護衛だったわけだが、エルビーたちにとってはその名目こそが目的。
夕食には戻る予定だがまだ少しの時間がある。
それまで俺がこの二人を観光案内しなきゃいけないわけだ。
俺たちがいた街グリムハイド。
それなりに大きな街だ。
そしてこの間行った街クルクッカ。
そこはグリムハイドよりも大きな街。
この王都エステリアはそんなクルクッカですら比較にならないほど大きな街だ。
エルビーは街の中身よりそんな想像を絶するほどの大きさの街に驚愕していた。
「すごーい! 人間いっぱーい! これ、この人間みんなここで暮らしているの?」
「まあ大半はそうだな。ただこれだけ大きい街だと俺たちみたいに他所から商売に来たり遊びに来たりする者も多い。それでもグリムハイドやクルクッカなんかとは比べ物にならないほどの人がここで暮らしているよ」
辺りをキョロキョロと見渡している。
完全にお上りさんって感じだ。
まあ無理もないさ。
昔ならば一緒にいる者がこんなお上りさんだったら恥ずかしくてやめてくれ!なんて思ったかもしれない。
けど今は本当に楽しそうにしている二人を見て、こっちまで嬉しい気分になる。
こんな子供たちがつい先日、あれほどの戦闘を繰り広げた者だなんて言っても誰も信じられないだろう。
ふと先日、馬車の上での二人の会話が気になった。
あのゴーレムを倒す前に何を語っていたのだろうか。
聞いてみたいが、さてどっちに聞くべきだろうか。
「エルビー。ゴーレムを倒す前にノールと何か話していたみたいだけど、何話していたんだ?」
なにかを思い出そうしているエルビー。
「そんなことあったっけ?」
あ、エルビーは失敗だったか?
「あ、そうそう。わたしがね、わたしの剣じゃあれ倒せないし、みんなも倒せないみたいだけどどうするの?って聞いたの。それでノールだったら、あれ倒せるんじゃない?って聞いたら倒せるって言うから、じゃあ倒してって言ったの」
なるほど、あの攻撃はエルビーが促した結果なのか。
それからその後の襲撃者について、なぜエルビーは追撃しなかったのか聞いたら離れずここにいるようにノールから言われたらしい。
もう一人の隠れている襲撃者が物理攻撃か魔法攻撃か不明だったことと、それとエルビーたちと切り結んだあの襲撃者だが懐に何やら妙なものを隠し持っていたので、それを警戒してのことだったようだ。
妙なもの、か。
こっちとしては引いてくれて助かったってところかもしれないな。
とりあえず、謎は解けた。
それからも王都の中を散策する。
様々な露店。
いったい何を売っているんだ?というような店も見かける。
露店なので商品が見えるのにその商品の使用目的がまったくもって想像つかない。
誰が買うんだ、あんなもの。
だがそんな良く分からないもの珍しさなのか、そういうものに限ってエルビーが食いつく。
あれ何?って聞かれてもな、俺が聞きたいぐらいだ。
いやすまん、興味もないので聞きに行かなくていいから。
そんな感じの王都探検は終了の時間を迎える。
夕食の時間。予定していた宿に向かう。
予定時間を少し過ぎてしまっただろうか、宿の食堂ではすでに宴会が始まっていた。
「なんだ、もう始めてたのか。」
「当たり前だろ、待っててやるとでも思ってたのか?」
「ん?ああ、俺は待たなくてもノールやエルビーのことは待っててやるもんだと思ってた」
「あ……、ん、んなわけないだろ……」
おそらく、あり得たかもしれない別の自分を想像して若干恥ずかしくなっているようだ。
ビッツは気を取り直して別の質問をぶつけてきた。
「なんだ?それ。買ってやったのか?」
「ああ、せがまれてな。邪魔になるから小物だけってことで」
「へぇ。で、なんなんだ?それ」
「さぁ?俺にはわからない。ちなみに、売っていた店主も分からないと言っていた」
「なんで買ってきた?そんなの」
「それはエルビーに聞いてくれ。分からないことが面白かったんじゃないか?」
ふ~んと相槌をうちビッツはエルビーに向き直る。
「で、なんなんだ?それ」
「知らないわよ」
「すまん、どういうことだ?」
「だって、あそこにしか無かったんだもの。わたしが王都に来たって言う証よ」
「あ、そう……」
あれを誰かに見せてわたし王都に行ってきたのよ!って言うつもりなのか?
いや、自慢するような子じゃないし、自分の中で王都でしか売っていなかった物を持っていたいってことなのかも知れないな。
そんなやり取りをしつつ、王都の料理にまた騒ぎ、そして各自の部屋に向かう。
おそらくまともなベッドで眠れる最後の日だ。
各自しっかり休むようにと念を押し、それぞれが明日を待った。
翌日、出発の日。
俺たちはいつもの馬車に乗り込み出発を待つ。
この先の街道だが少しずつ厄介な場所になっていく。と言うのも、今までは広い平野で見通しが良かった。
それが王都を過ぎるとそんな平野は無くなり右手側が海、左手側は起伏がありところどころ木々が立ち並ぶ場所もある。
海側から襲われることは無いだろうが、左手側は襲撃するのにピッタリな場所だったりする。
実際、この辺りでの襲撃の話はよく聞くし、今回の依頼もまたその辺を警戒してのことだった。
目的地はラビータ。
王都からラビータまでは通常なら7日と言ったところ。
しかし今までのゆっくりとした行軍速度から10日前後と見るべきだろう。
馬車はゆっくり進み始めた。
遠く離れていく王都を眺め、何やらエルビーが名残惜しそうな顔をしている。
「冒険者やってればいつでも来られるさ」
エルビーがちょっと驚いたような顔になった。
俺が心を読んだとでも思ったのかな。
「そうかな。わたしも冒険者になろうかな」
「エルビーなら将来はAランク間違いなしだな。もちろんノールも」
俺の言葉に満面の笑みを浮かべ嬉しそうにするエルビー。
冒険者ランクのことわかってるのかね?
ビッツが説明でもしていたのだろうか。
反対側からは数台の馬車が近づいてくる。
エルビーはそんな馬車に気づいては、その行く先を目で追っている。
彼らはこれから俺たちが向かうところからやって来て、そして俺たちが去った場所に向かう。
冒険者の一行だろうか、それとも行商人だろうか。
馬車の形からは残念ながら判別できなかった。
そんな俺たちを乗せた馬車は街道を順調に進む。
3日目となり、右手側にあった丘は姿を消し、代わりと言わんばかりに海が見え始める。
その光景にまたエルビーが燥いでいる。
クルクッカでもビッツに連れられて見たはずだが、断崖の上から見る海とこうして間近で見る海とではまた違う印象を受けるのだろう。
ノールもまた、そんな海を物珍しそうに眺めていた。
「なあゲイン。この間の盗賊ってやっぱりラビータ辺りを根城にしている盗賊団ってやつかね?」
唐突にビッツが聞いてきた。
「あ、ああ、その可能性は高いだろうな。王都の憲兵も派遣されたりラビータの領主も捕縛に躍起になっているらしいが、なかなか尻尾を掴めないらしいけど。この間の87人。あの人数でもたぶん末端でしかないはずだ」
「よくもまあそんな人数がいたもんだな。かなり大きい組織みたいだが壊滅させるのにどれだけ時間がかかることやら……」
「まあ難しいだろうさ。噂じゃまだ規模を拡大しているところらしい」
「じゃあ冒険者として仕事には困らないってことだな。ハハッ笑えねぇ……」
「俺としては盗賊相手にするより魔獣相手にしていた方が楽だよ」
「じゃなんで今回受けたんだ?」
「報酬が良かったからに決まっているさ。並みの報酬額だったら断ってた」
「結局はそこに行きつくよな……」
「魔獣相手のほうが戦いは読みやすいからな。それにこの辺りじゃ負けるような魔獣はもういないし。様々な奥の手を隠し持つ人間相手のほうが苦戦するよ。特に護衛任務なんて相手の事前情報なしで戦わなきゃいけないわけだしさ」
「冒険者なんて命を賭ける割にそんなに稼げるわけでもないし。他に出来ることがあるなら無理してやるもんじゃねえよな」
まったくだ。
そう言おうとして、先日のエルビーとの会話を思い出した。
優秀な未来の冒険者を今ここで潰すわけには行かない。
ふとエルビーを見やれば何やら複雑な表情をしている。
やってしまった。
ビッツも気づけ!
昨日の会話おまえも聞いていただろ!
「あっ、そ、そうかな~。たしかに冒険者の稼ぎは良いとは言えなけど……。えっと、そう! それはランクが低いからだ! Aランク冒険者となればそれなりに報酬も高くなる。俺たちだってAランク冒険者になれば楽して稼げるぜ?」
取り繕う俺。
なんとかして冒険者のイメージアップを図る。
「いやいや、ゲイン。Aランクになったら報酬は上がるけど依頼も重くなるだろ。それに有事の際にはAランク冒険者なんだから行くのが当然、みたいな空気になる。Aランク冒険者なんてなるもんじゃないさ。Cランク当りが一番のんびりできてたかなあ」
ビーーーッツ!
気づけ!
エルビー!
エルビーの顔!
なんとかアイコンタクトでアピールする俺。
だがビッツは気づかない。
クソ!こういう時だけ鈍感。
「そう言うものでもあるまい。俺は今の仕事に誇りを持っている。冒険者とは人々のために生きる、そういう仕事だとな。」
と突然のダーン。
さらに頷くルドー。
ナイスフォロー!
「へいへい。そういうもんかねえ」
よしこの話はこれで終わりだ。
いい大人が子供たちの夢を壊してどうする!
「ところでさ、昨日、よく眠れた?」
落ち着け。
落ち着くんだ俺。
そんな意味の分からないこと聞いてどうする。
夜は交代で見張りなんだからよく眠れるわけがないだろ。
「あ、いや、ほら。まだ盗賊の襲撃も可能性としては残っているからな。ちゃんと休んで事に当たらないとな。見張りの交代もあるから特に、ちゃんと休まないと。眠いなら今のうちに昼寝するのもありだと言う話をしようと思ってな」
よし、さすが俺。
切り抜けた。
「わたしは平気よ。それより気になることがあるのだけど。飲み水ってあっちの馬車に積んでいる樽から貰っているけど、あそこにいっぱいあるんだからあっちから貰えばいいんじゃないの?」
へっ?
あ、ああ、そうか。
「エルビー、あれは海って言うんだ。海の水ってのはとてもしょっぱくてな。人間が飲み水として使うことは出来ないのさ」
俺が答えようとしたがその前にビッツが答えた。
「しょっぱい? しょっぱいって何? もしかして毒?」
「いやいや、毒じゃないさ。ちょっと飲む程度なら死ぬわけじゃない。ただ大量に飲んじゃだめだぞ。しょっぱいってのはそうだなあ。口で説明するより実際にちょっと飲んでみればいいさ」
「死んだり、病気になったりしない?」
「しないしない」
そんなビッツとエルビーの会話を聞いてふと疑問を口にする。
「そういえばエルビーは肉料理ばかりだが、なんで魚は食べないんだ?」
「魚って小さいじゃない。お腹いっぱいにならないわ。それにしっかりとした味が、こう、いっぱい食べたーって感じさせてくれるのよね」
「なるほどね。ちなみにだが、以前俺たちが食べた魚は川で取れる魚だ。けど海には川の魚と違って大きな魚が多く生息しているぞ。たしかに肉料理ほどずっしりとはしないかもだが、肉にはない食感や旨味ってものがあるのさ。今度騙されたと思って食べてみな」
「へーわかったわ!そうする!」
素直でいい子だな。
それに比べてノールは。
俺の話を聞いて滅茶苦茶に興味を惹かれている模様。
エルビーのように言葉や表情に出せばいいのにな。
この先、ラビータは港町なので魚料理が食べられるのはもちろんなのだが、その間にあるエスエノラルースと言う村もまた魚料理で有名である。
ここは浅瀬や岩礁の海にある漁村なためか商船の離着は残念ながら出来ない。
だが美味しい魚がいっぱい取れるので街道を行きかう人は必ず訪れると言う名所である。
ただこの村は大きくないため俺たちの馬車列は中に入れない。
つまり野宿になると言うわけだ。
うまいことこの村の近くで野営してくれれば言うことは無い。
俺の予想では最後の食材調達の砦としてこの村に立ち寄るはずなので期待はできるだろう。
まあラビータに着けば俺たちの任務は終了する。
そうなればラビータで観光することも出来るのだから、その時いっぱい魚料理を食べることができる。
万が一エスエノラルースで食べることができなかったとしても焦る必要はない。
昼過ぎ、エスエノラルースには立ち寄った。
立ち寄ったのだが食材を調達してすぐ出発してしまった。
どうやら、食事担当の者が先行して買い付けだけはしていたらしい。
今日の夕食に魚料理が出るかは不明だ。
エルビーやノールを見やると海を眺め、ワクワクソワソワしているようにも見える。
そういえばこの村が魚料理で有名と言う話はしていなかったな。
二人とも最初からラビータで食べられると言う気持ちでいるのかもしれない。
助かった。
そして、ここから街道はせまくなる。
ラビータまで残り4~5日と言う距離だが、おそらく最初の3日間程度がもっとも襲撃されやすい。
それを過ぎるとまた街道が少し広くなるので盗賊としては襲いづらくなるからだ。
前回はノールがかなり早くに盗賊に気づいたこと、盗賊が隠れた位置から馬車列まで距離があったこと、それらがこちらにとって有利な状況を作った。
今回もノールの能力は期待できる。
だが、馬車列の近くに隠れる場所ができるため、発見したことに気づかれたと同時に攻撃されると、反撃の機会を失いかねない。
前回はノールが火球によって相手の場所を知らせるのと同時に混乱させるって方法取っているからな。
あの場にいた全員捕えてはいるが、ノールの感知の範囲外から監視されていた場合、同じ手は通用しない可能性がある。
依頼主も他の冒険者チームも多少の被害は考えているだろうけど、俺たちとしては今回も無傷で成功させたいものだ。
それと、ノールの能力だけに頼るのは考え物だな。
俺たちだって人間相手に戦うことがあるわけだし魔獣相手のスキルだけじゃなく幅広く経験を積んでいかなくちゃな。
俺たちの課題。
魔獣と言うのは人間よりも強い。
つまりは捕食者。
そんな捕食者に打ち勝つために生み出されたのがスキル。
人間同士ならばスキルなんて必要ないと考えてもいたが世の中、上には上がいるわけだ。
しかし、人間相手のスキルってどうやって獲得すればいいのか見当もつかないぞ?
エスエノラルースを出発して3日目。
おそらくは今日。
もし俺が盗賊なら今夜狙う。
空は曇っていて星も月の明かりも当てにはできない。
日は傾きすでに沈もうとしている。
街道もまた御誂え向きの狭さ。
と言ってもすれ違えないわけではない。
ただ今までの街道は、自分たちのようなゆっくり走る馬車を追い越す馬車がいても十分余裕はあった。
まあ整備された街道とは言えもともと走りづらい場所ではあるので、この辺りではみんなゆっくりな速度で前の馬車についていくのが普通となっている。
そんな街道で怖いのが故障だ。
一台でも故障した馬車がいればそこからはどんどん渋滞していく。
端に寄せるにしてもそんなスペースもない。
今のところそんな残念な馬車は現れることなく順調に進んでいる。
向かいから数台の馬車がやってくる。
彼らもまた行商に向かうところなのだろうか。
数名の護衛らしき者を連れて走っている。
エルビーはまたもそんな行商と思われる馬車を眺めている。
そんな馬車の先頭、護衛らしき者と目が合ったのか、エルビーが突然馬車を降りて男に切りかかる。
まったく燥いじゃってしょうがないやつめ……。
ん?
って、ええええええええええええ!!!!!
まて!ちょぉっとまてー!!!
記憶にないがたぶん声に出していたはず。
ともかく止めなきゃ。
後ろからも数台近づいている。
目撃者が増えてしまう、このままじゃ俺たち捕まってしまう。
他の連中を見るとやっちまったな、とか俺知らね、と言うような顔をしている。
ビッツは何というか、たぶん俺も同じ表情なんだろうな。
そんな心配を胸に、とりあえずエルビーを止めるためにノールにも声をかけた。
「ノール!」
「わかった」
えっ?何が?
何が分かったの?!
きっとエルビーを止めるためだろうノールが馬車を降りる。
そしてエルビーが蹴り飛ばした護衛とその馬車を、凍り付かせた。
それを確認したエルビーはその後ろの馬車に襲い掛かる。
そんなエルビーを見て、冴えない御者だった男は不釣り合いな剣を抜きエルビーと戦い始めた。
相手側の馬車からはわらわらと人が……。
ってあれ?
その服装や見た目には見覚えがあった。
例の盗賊だ。
ああ、そうか……。
これ盗賊の襲撃か……。
俺はやっとそこで事態を理解した。
呆けている場合じゃない。
俺は焦る心を抑えつつ笛を吹く。
ルドー、ダーンはビッツの判断ですでに馬車を降り戦闘に参加している様子。
俺たちの直前とよく見える後方の馬車は笛の音の前に、目の前の光景で事態を把握し防衛態勢に入っている。
前方の馬車はいまだに事態を把握しきれていない者もいるようだが、遅れて来た盗賊の馬車から降りては氷の飛礫で飛ばされる見覚えのある者たちを見て、状況を把握したようだった。
とりあえず俺も弓で応戦する。
今回のエルビーはなかなかに積極的で敵を倒すとどんどん前に行ってしまう。
例えば御者席から降りようとする男を蹴り飛ばして海に落としたりとか。
まあ、もう王女様もいないしいいけどね。
敵の数はそれほど多くない50~60ぐらいと言ったところか。
乱戦に近い状態ではあるがエルビーが特攻した甲斐あって敵は混乱、またそんなエルビーに対処しようとする盗賊たちを見て事態を察した先頭のAランクを含めた3チームも参戦する。
しんがりを務めるチームだが出番がないので防衛体制のまま様子見しているようだ。
気楽でいいな。
この時点で半分近く倒している。
残り半分。
俺たちはと言うと周囲に敵はいないが無理に先頭に向かって参戦せず、反対の左側にも注意を向けるように促す。
ノールからの警告がないので大丈夫かとは思うが、敵が行商人を装って襲撃したあと、タイミングを計って挟撃に出てくる可能性は捨てきれないからだ。
襲撃してきた盗賊団が落ちるのにそう時間はかからなかった。
計57名。
前回の襲撃に比べれば手練れもそれなりに交じっていた感はある。
それでもこちらの方が上だ。
予定では明後日には着く。
ラビータには王都のような規模の憲兵隊はいない。
呼びに行ったところで迎えには来てくれないだろう。
そんなわけで、ちょうど盗賊の馬車もあることなので盗賊を馬車に詰め込んでそのまま護送することとなった。
一人海に落ちたやつもいたけど、ちゃんと回収済み。
俺たちの方に死傷者は無し。
盗賊の方にも死者は無し。
怪我人はいっぱいいる。
回復させる義理はないし、元気になって反乱起こされても面倒なので致命傷以外の傷は放置ということになった。
やっと依頼が終わる。
長かったー。
もうすぐ終わると思うとどうしても気が緩んでしまう。
まだまだ、着くまでが任務です。
そんなことをノールやエルビーに言いながらラビータまでの道のりを進む。
俺は馬車から外を眺めながら決意した。
こういう長期任務は控えようって。