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第8話

「それで、実は二人に話があるんだ」




 食事を終え、俺は二人に本題を持ち掛ける。二人は静かに、俺の言葉を待っている様子だ。




「これから、生活局に乗り込もうと思う」




 途端、二人の表情が凍り付く。…俺もそれを覚悟のうえで、二人にこの話を持ち掛けた。




「必ず、給付を認めさせてやる。いやそれだけじゃない。二人を苦しめたその担当者を、俺が必ず叩き潰す」




 …しかし二人は俯いてしまい、言葉を発さない。…しばらくの間沈黙の時間が続き、ミリアナが重い口を開いた。




「…分かったわ。行きましょう」




 しかしそのミリアナの言葉に、テルナが強く反論する。




「ダ、ダメだよ!!絶対にダメ!!」




 テルナは涙を流しながら続ける。




「またお姉ちゃんがいじめられちゃうよ…お姉ちゃんが…かわいそうだよ…」




 涙を流すテルナを、ミリアナが優しく抱きしめる。




「テルナ、ありがとう。でも、私は大丈夫よ?あなたがいてくれるだけで、私にはいくらでも勇気が湧いてくるの。それに…」




 ミリアナは笑いながら、俺の方を見る。




「ツカサがこんなに自信満々に言ってくれてるんだから、なんとかなっちゃう気がするの。今度こそ、本当にあいつに勝てちゃうかもしれないわよ?」




「お、お姉ちゃん…」




「テルナ、信じてほしい。俺は絶対に二人を守って見せる。必ず」




「ツカサお兄さん…」




 俺は一歩二人に近づき、手を差しだす。




「だから、一緒に戦ってくれるか?」




 ミリアナは強くうなずいて、俺に手を重ねて返事をしてくれる。テルナも少しの間をおいて、そっと手を重ねてくれた。






 生活局の局内に入り、待合室に腰掛ける俺たち




「…またあんたですか?いい加減しつこいですねぇ…こっちも暇じゃないんですが…」




 窓口に一人だけ、やけに態度の大きい局員がいるのが目に入る。




「…あいつが、ヤシダか…」




 そうつぶやいた俺を、隣に座るミリアナが不思議そうに見つめる。




「え、なんであいつの名前知ってるの?」




「ま、まあちょっとな」




 ミリアナの疑問を軽くあしらい、しばらく観察を続ける。




「ぅぅ…こんな所もう帰りたいよ…」




 じっと我慢してくれているテルナの肩を、ミリアナが優しく抱く。




「ねぇ、いつまでこうしてるの?」




 まだだ、まだ確証がない。あいつがその動きを見せるまで、今はじっと耐えるんだ…


 そして窓口に対応相手がいなくなり、ヤシダは一息つく様子を見せる。その時、ついに俺が待ちわびていた行動をあの男はとった。




「…よし、出撃と行きますか」




 二人を後ろに連れ、俺はヤシダの座る窓口へと足を進めた。

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