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第3話

 …しかし、体は同じはずであるのに、何かが違う気がした。別に視力がよくなっているというわけでもないのに、周りがよく見える…複数の事を、同時に考えることができる…今こうして冷静に分析できていることだって、向こうにいた時にはできなかったことだ…


 俺はもう一度、改めて召喚陣の説明書を眺める。『…魔法、その他関連する力の発現に必要な時間に関し、それらの大幅な短縮を確約する…』…その時、一つの可能性が脳裏にに浮かんだ。


 もしかしたら、問題解決に至るアイディアが浮かぶのがとことん遅かった俺の体質が、この召喚陣の力によって強化されて、これまでとは比にならないほどの短い時間で、いろいろな考えが脳内に浮かぶ様になったんじゃないだろうか…


 その証拠に、俺の脳内はこれまで経験したことがないほど透き通っている感覚が感じられた。とても飲み込むことはできないこの現状も、冷静に受け入れて分析することができている…今の俺なら、なにかできることがあるんじゃ…


 俺はさっそく、行動に移してみることにした。




「ねぇ二人とも、ご両親が亡くなったのが数年前なら、生活はかなり早い段階から苦しかったはず…今まで、どうやって生活していたの?」




 俺の質問に、姉のミリアナが涙ながらに答える。




「…前までは、王国から保護給付が出てたの…額は決して多くはなかったけれど、贅沢しなかったら十分生きていけるお金だったの…だけど…」




 ミリアナが、言葉に詰まる。これまで以上に悔しそうで、悲しそうな表情を浮かべて。




「…ある日担当者が変わって、突然給付が不認可になったの…ぐすっ」




 そこから先は、妹のテルナが話始める。




「…担当者の人はお姉ちゃんに、目の前で虫を食べて見せたら認めてやるとか、裸になったら認めてやるとか、ひどい事ばっかり言ってきて…」




 …あまりの仕打ちに、言葉を失う俺。こんな女の子に、なんて理不尽なことを…




「…お姉ちゃんは言われたことを、全部やって見せたの…なのに…こんな下品な女には、給付は認められないって…ひっぐ」




 きっとミリアナは妹を守るために、なんだってやる覚悟だったのだろう。けれどその覚悟すら、その担当者にもてあそばれてしまった、というわけなのか…




「…許せるかよ…そんな話…!」




 殺気立つ俺の姿を見て、不思議そうな顔を浮かべる二人。俺は二人に向かって、力強く声をかけた。




「このまま終わりにしちゃいけない。絶対に、そいつに痛い目見せてやろう!」




「…」




「…」




 …俺の覚悟の言葉を冷たい目つきで見つめたのち、同時に二人が声を上げる。




「無理なんでしょ!!お兄さん魔法も何も使えないんでしょ!!!」




「そうだよ!!私たちもう死んじゃうよぉ!!!!」




 …期待されないことに慣れてはいるものの、ここまで露骨に態度にあらわされるとなかなかに傷つく。しかしだからこそ、俺のやる気に一層火が付く。呼び出された以上、俺はこの二人に必ず希望を見せてあげなければならない。

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