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第2話

 じょ、状況が全く理解できない…周囲を確認するに、俺とこの2人の女の子は小さな小屋のような場所にいて、困惑している俺とは正反対に、この女の子たちは心の底から喜びの声を上げている…




「やったよおねえちゃあああん!!!!!!」




「やったよおおおおお!!!!!!!!!」




…ここまで感情的な二人を見ていると、逆に冷静になれる。二人の顔立ちは日本人のそれとは違っているようだけれど、話している言葉は日本語だ。歳は多分…女子中学生か女子高生…くらいだろうか?




「あ、あの、君たちは一体…」




 そんな俺の問いかけなど意に介さず、二人は俺に詰め寄ってくる。




「ねえお兄さん、お腹すいたよ!早く魔法で食べ物を出してよ!!」




「それより先に、魔法でこの小屋を大きくしてよ!!」




 …俺は車にでもひかれて、夢でも見ているんだろうか…?全く状況が理解できない。魔法とかなんとか、この二人はいい年していったい何を言っているのか…




「あ、あのね…俺は魔法なんて使えないし、って言うかそもそも魔法なんてのは実在しなくて、空想の話であって…」




 俺はそこまで言って、口をつぐんだ。…二人の表情が、悲しげに凍り付いていたからだ。




「…と、とにかく、状況を説明してほしい…」




 俺のその言葉に、二人は淡々と説明を始めてくれた。


 そもそもこの二人の女の子は姉妹で、姉がミリアナ、妹がテルナと言うらしい。二人は数年前に両親を亡くした上に、頼れる親族もおらず、なんとか姉妹で力を合わせて生活していたという。そしてある日、持ち金の全てを使って、闇市にて売られていた召喚陣なるものを購入したそうだ。これは異世界から別の人間を召喚するアイテムで、公には使用が禁止されているものだという。召喚陣にて召喚される人間は、非常に特殊な能力を有しているだの、どんな願い事でも実現してくれる力を有しているだの、様々なうわさがあるが、実際のところは使ってみないとわからないらしい。


 …今後の生活に希望が持てなかった二人は、最後の賭けで召喚陣を購入し、これにすべてを託したそうだ。…そして召喚されてしまったのが…




「俺…ってわけか…」




 何の魔法も力も有していない俺の姿を見て、明らかに落胆する二人。…俺は異世界に来てまでも、人に失望されてしまうのか…


 そんな時、俺の足元に落ちていた紙が気になり、拾って内容に目を通す。




「…召喚陣…使用法?」




 なんと、このうさんくさい召喚陣には説明書がついていたようだ。




「…少なくとも召喚される人間は、言語の疎通能力に関して一切の問題なしと保証。加えて魔法、その他関連する力の発現に必要な時間に関し、それらの大幅な短縮を確約するものとする…」




 …なるほど、とりあえず俺がこの二人とコミュニケーションを取れる上にこの説明書を難なく読めたのは、この力が付与されていたからか…


 そして俺が現れた時、二人が小屋の増築や食べ物の現出を期待したのは、その魔法の発動に要する時間がかなり短縮されることを知っていたから…というわけか。




「ひっぐ…ぐっ」




「ごめんなさい…ツカサさん…私たちのせいで…あなたの人生を…台無しにしてしまって…本当にごめんなさい…」




「…」




 …失敗作が召喚された現実に、涙が止まらない二人。こんなに可愛らしい女の子が命の危機にあるというのに、俺は何にもできないのか…こんな状況になっても、何の役にも立てないのか…


 正直、俺自身の事はもうどうでもよかった。元より、何の意味もなかった人生だ。けれどもこの二人だけは、何とか助けたい…こんな俺にも、期待をしてくれたこの二人を…

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