表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

第1話

「はぁ…なんであの時ああ言わなかったんだろうか…」




 …今日は書類審査の手続きのために市役所に行ったのだが、軽くあしらわれてしまった。…あの時は何も言い返せなかったのに、今になって反論の言葉の候補リストが次々と浮かんでくる。…これがあの時言えていたなら、きっと書類審査を通すことができただろうに…


 思い返せば、生まれてからというものずっとそうだ。学校での勉強も、サークルでの活動も、その時その時の口げんかが弱いせいで、いつも俺が損する役回りだった。…しかも性質の悪いことに、そのまま最後まで何も浮かばなければ良いものを、終わった後になってから、もしあの時あんな風に言っていれば事態は変わっていたんじゃないかと考えてしまい、ますます無念の思いがつのるばかりだった…




「…俺って、死ぬまでこうなのかな…」




 不意にそうつぶやき、表情がうつろになる。気分も憂鬱になり、もういっそのことどこかに身を投げてしまおうか、とさえ考えてしまう…




「…ふぅ」




 道路わきのガードレールに腰掛け、空を見上げる。周囲からは、楽しげに会話をするカップルの声や親子の声、よく整備された自動車のエンジン音、それに空を自由に飛びまわる鳥の鳴き声が聞こえてくる。…こんな中にいると、自分という存在の無意味さを痛感させられる。一体俺は、何のために生まれてきたのだろうか…


 俺の両親はすでに他界しており、兄弟もいなければ妻も子供もいない。…つまり世間で言うところの、誰からも必要とされていない人間だ。…こんな意味のない生活が続いていくだけなら、もういっそこの場で終わらせてしまおうか。目の前をかなりの速度で通過する車に飛び込めば、終わりにできるんだろうか…


 …一体どれだけの時間、そうしていたのかは分からない。ただふと気づいた時には、すっかり周囲は暗くなっていた。…昼前にはここにたたずんでいた気がするから、半日近くここに突っ立っていたわけか…全く不審者極まりないな。




「…帰るか」




 そう思い足を動かそうとした、その時だった。突如として周囲がまばゆい閃光で包まれ、何も見えなくなる。




「!!!」




 ついさっきまで聞こえていた人の声や、環境音が途端に聞こえなくなる。全くの無音だ。…その時間がどれだけ続いたのかは分からないが、気づいた時には、さっきまでいた場所とは全く違う場所に俺は立っていた。




「え、えええええ!?」




 …ぱっと見た感じだと、ここは小屋の中か…?それもかなりぼろそうな小屋…


 いや何よりも、俺の目の前には幼い女の子が二人…!




「おねえちゃああああん!!!!!!!!」




「成功だああああああああ!!!!!!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ