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あなたの仰せのままに  作者: みるみる
16/18

16、ロザンナの回想、そしてその後

ロザンナがまだロベールと知り合う前、ロザンナはまだ恋を知りませんでした。


父親同士が仲の良いガナンとは、何となくお互いの家を行き来するようになりましたが、ガナンを特別に好きだとかそう言った気持ちはありませんでした。


やがてそんな二人も年頃になり婚約をして、まわりも結婚を意識するようになりました。


ロザンナはガナンの真面目で寡黙なところが嫌いではありませんでしたが、このままガナンと結婚してつまらない生活を送るのか‥と思うと憂鬱になりました。


ガナンの趣味や性格が、ロザンナとは合わなかったのです。


ガナンは庭の手入れをしたり、読書をしたりする事が好きでしたが、ロザンナはそんな事よりも、買い物をしたり、男性に甘い言葉をかけられたり優しく抱きしめて貰ったりする事に憧れていたのです。デートをしたり、プレゼントを貰う事にも憧れていました。


ですが、ガナンはそういった事をロザンナに一切してこなかったのです。


ロザンナは、それでも他に好きな男性もいない為、ガナンと結婚するしかないと諦めていたのです。


そんなロザンナに、ある日衝撃的な出会いが訪れました。画家のロベールがこの地にやってきたのです。


ロザンナの美しさに惹かれたロベールは、彼女を絵のモデルに誘いました。


そして絵のモデルと画家として二人っきりで過ごすうちに、いつしか二人は結ばれました。


ですが、ロベールは田舎は嫌いなので長居はしないといい、すぐに王都へ帰ると言い出しました。


ロザンナは何もかもを捨てて、ロベールに付いて行く事にしました。‥この時一瞬ロベールの顔がひきつりましたが、渋々ロザンナの同行を承諾したのでした。


ロザンナがロベールに付いていって王都へ来た時、ロベールの裏の顔を知る事になりました。


既婚のご婦人方と毎晩浮気をし、絵を描くことは二の次の生活をしていたのです。


ロザンナが作った食事も一度も口をつけた事はありませんでした。


ロベールだけは外で食事を済ませてくるからです。


ロザンナは寂しくて毎晩泣き暮らしましたが、それでもロベールの妻の座に固執しました。何年も何年も‥。


‥そんなある日、ロベールのアトリエに時々来ていた若いモデルの女の子が妊娠しました。ロベールの子でした。


ロベールは大喜びして、そのモデルの子を家に住ませました。


そしてロザンナは、モデルの女の子のお世話をする事になりました。出産も手伝いましたし、赤ちゃんのお世話も手伝いました。


外でロザンナが赤ちゃんの布おむつを洗っている時に、ロベールとモデルの女の子が話している声が聞こえてきました。


ロザンナが声のする方へ近づき、壁に耳をつけると‥‥


「ねえ、ロベール。あの女をいつまでここに住まわせるの?邪魔なんだけど。」


「まあまあ、ただで家事を全てやってくれるんだ。ありがたい話じゃないか。」


「でも‥。」


「それなら‥赤ちゃんが大きくなって手がかからなくなったら追い出そうか。」


「嬉しい!」


この時初めてロザンナは知りました。二人に自分が家政婦扱いをされていた事を‥。


ロザンナは悔しくて溢れ出る涙を腕で拭いながら、声を殺して泣きました。泣き声をあの二人に聞かれる訳にはいかないのです。


ロザンナは、この時ある決意をしました。


赤ちゃんをいっぱい可愛がって自分に懐かせてやろうと。そうして‥モデルの若い女の子を追い出してやろうと思ったのです。


ですが何年かするうちに、赤ちゃんだった子供は生意気な少女に成長し、ロザンナをやはり家政婦扱いするのでした。


ロザンナはもう我慢しきれずに何度も田舎へ帰ろうとしました。


‥ですが、ロザンナがいないと家事をやる人がいない事に気付いたロベール達は、ロザンナを追い出す事をやめて、逆に田舎へ帰らせないようにしようとしてきました。


それからまた何年かしたある日、買い物をしていたロザンナは、そのまま衝動的に自分のいた田舎へ走り出しました。途中荷馬車にも乗せてもらったりしながら、何とか田舎の自宅へ帰る事が出来たのです。


実家では弟がお嫁さんが迎えており、母は心労で亡くなっていました。


父親は、突然帰ってきたロザンナを当然叱りましたが‥苦労してきた娘の事を思うと無碍にもできず、そのまま家に住まわせる事にしました。


ロザンナは、家で過ごすうちにふとガナンのことが気になりました。


ガナンが結婚した事も聞いていましたので、どんなお嫁さんなのかをこっそり見に行く事にしました。



ロザンナはガナンの屋敷に行く道すがら、色々な出来事を思い出していました。


ロベールとの出会いに、ロベールとの逢瀬、ロベールとの生活‥。ロベールから逃げてここまで

やって来たというのに、思い出すのはロベールとの良い思い出ばかりでした。


ロザンナがガナンの屋敷にたどり着いて、そっと覗き見たガナンのお嫁さんは‥ロベールを自分から奪ったあの女のように若い嫁でした。しかも美しくとても幸せそうにしていました。


ロザンナはそれが悔しくて悔しくて‥つい嫌がらせをしたくなったのでした。


急に自分の身の上が恥ずかしく思えて、ロザンナは悔しい気持ちを一旦抑えて、自宅へ帰る事にしました。


ところが‥自宅近くでロザンナを待ち伏せしてる男がいました。ロベールでした。


「‥ロザンナ、僕が悪かった。頼む、俺とまた一緒に暮らそう。」


ロベールはそう言って、ロザンナを抱きしめました。久しぶりのロベールの抱擁は‥ロザンナにとって、悔しいけどとても温かくて心地良いものでした。


「‥でももう私は‥。」


「‥子供が大人になったら、また二人で王都で暮らそう。それまで待っててくれ。また君を迎えに来るから。」


「‥本当?」


ロザンナはロベールの言う事を信じてしまいました。ロベールが自分を追ってここまで来たのですから‥。


ロザンナは、ロベールがこの地にしばらく滞在して展示会を開きたいと言うので、ロベールの滞在先を見つけたり、ロベールを支援してくれる人を探して、毎日忙しく動くようになりました。ロザンナが頑張れば頑張るほどロベールが喜んでくれるからです。


ロザンナは結婚適齢期は過ぎていても、まだ美しく魅力的でしたので、昔の恋人たちやダクト商会の息子にも声をかける事がありました。そうやって、なりふりかまわずにお金を集めてロベールに尽くしていたのです。


そんなある日、ロザンナはダクト商会の息子ではなく会長に見初められて結婚させられそうになりました。


ロザンナは悩みました。ダクト商会は自分をとても大切にしてくれて、プレゼントをたくさんくれるし、会う度に甘い言葉を囁いてくれるのです。‥ですが、ロベールもダクト商会の会長に負けじと甘い言葉をたくさん囁いてくるのです。


ロザンナは悩みながらも結局ロベールに尽くし続けました。どれだけ優しくされても愛してるのはロベールでしたから。


そんなロザンナですが、時折ガナンの嫁を覗きに来るようになりました。ガナンの嫁を見る度に‥苛立ちを募らせました。


「何よ、幸せそうな顔をして!‥本当は私がガナンと結婚してたかもしれないのよ。ガナンは‥私を諦めきれなくてこれまで結婚してなかったんじゃないの?何であんな若いだけの女と結婚したのよ!‥むかつくわ。」


ロザンナの苛立ちは日に日に増し、ついに衝動的にガナンの屋敷に乗り込んでしまいました。


何日か覗き見に通ううちに、ガナンの両親やガナンが留守で屋敷にあの女しか居ないのは分かってましたから。


そして、嫌がらせをするのでしたが‥ガナンの嫁はロザンナの思ったよりも一枚上手でした。


ガナンの嫁のせいで、ロザンナが頑張って築いたロベールの顧客や地位も全て失ってしまいました。


ロザンナはガナンの嫁のキャロルに文句を言いに行きました。‥‥ですが逆に言い負かされてしまいました。


そしてこの時、キャロルの言葉でロベールの言葉の中の嘘にようやく気付くことができたのです。


失意のままフラフラとガナンの屋敷を出て歩いてると‥むさ苦しい庭師が道を塞いでいたので、怒鳴ってやりました。どこかで見たことがあるような顔の男でしたが、あんなむさ苦しい男にロザンナは会った事がないので、気のせいだと思い、振り返る事なく自宅へと帰って行きました。


ロザンナが気付かないのも無理はありません。昔のガナンは、口煩いロザンナの言いなりになり毎日髭を剃ってましたが、ロザンナと別れてからは髭を伸ばして好きな格好をする様になったのですから‥。


ロザンナは自宅へ帰ると、父親にダクト商会の会長と結婚する事にしたと伝えました。


ダクト商会の会長は歳をとっているし、束縛が強い事で有名でしたが、今のロザンナには勿体ないぐらいの縁談だと言う事に、彼女は気付いたのでした。それにロザンナは、ダクト商会の会長に求婚された事を実はとても喜んでいたのです。


ロザンナはこれまで好きな人を追うばかりの恋をしていたので、会長の束縛するほど愛をこの身に受けてみたい‥なんて事も思っていました。


その後、ロザンナがダクト商会の会長と結婚して幸せに暮らしている事がキャロルの耳にも入りました。


キャロルは、ロザンナがやっと幸せを手にした事を、同じ女として心から喜びました。


そして、今度は刺々しいロザンナではなく穏やかなロザンナと話してみたいな‥なんて思うのでした。


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