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あなたの仰せのままに  作者: みるみる
12/18

12、ガナンの過去


二人が結ばれた日から一ヶ月以上が経ちました。


男爵夫妻は領地巡りに行ってしまい、ガナンはお城の庭の改修責任者として王都に行ってしまった為、キャロルが一人で屋敷の留守を守る事になりました。


「‥若奥様、お客様がお見えです。」


侍女のエリがそう言って連れてきたのは、キャロルよりも少し年上の目力のある女性でした。侍女が言うには旦那様の元彼女だそうです。モールス子爵家の出戻り令嬢ロザンナ。ガナンのいとこにあたる女性だそうです。


「‥いつもなら私が来たらすぐに応接間に通してくれるのに‥、ずいぶんと待たせるのね。」


「‥あの、なんの御用でしょうか?」


「‥は?用がないと来ちゃいけないわけ?‥昔からここへは自由に出入りしてましたけど?」


「‥‥。」


「‥何よ、おもてなしはないわけ?私がわざわざガナンの結婚相手を見に来てあげたというのに‥‥。」 

 

「‥申し訳ありません。お約束もなしに突然来られたので、準備が間に合いませんでした。」


「‥へぇ、言うじゃない。おっとりしてるように見えて案外図太いのね。」


「‥‥。」

 

「私はガナンがもうあんたと別れた頃かと思って、ガナンに会いに来たのよ。」


「‥別れる?何の話ですか。」


「ガナンはあんたと別れて私と結婚するって言ったのよ。」


「‥あなたの妄言に付き合う義理はありません。お帰りください。」


「‥フフ、いいわ。今日のところは帰ってあげる。」


ロザンナはそう言って、応接間に飾ってあった金の細工の工芸品をさりげなく持ち帰ろうとしました。


「お待ち下さい。それは置いていって下さい。」


「‥ケチな女。‥はぁ、ガッカリしたわ。あなたみたいな女が妻だなんてガナンが可哀想。」


ロザンナは仕方なく工芸品を戻すと、嫌らしい笑みを浮かべながら颯爽と帰って行きました。


「‥若奥様、大丈夫ですか。」


エリがキャロルを気遣い、お茶を持ってきてくれました。


「エリ、ありがとう。‥ねえ、さっきの‥えっと‥ロザンナだっけ?彼女と旦那様の事を教えてちょうだい。」  


「‥私から話していいのかどうか‥。」


「エリを困らせるつもりはないの。旦那様に聞きたくても、旦那様はここにいないから聞けないじゃない。‥だから、あなたから聞きたいの。」


「‥それでしたら、マリーさんの方がよく知っていると思います。」


「そうね、マリーがいたわね。確かに彼女なら詳しく知っていそうだわ。‥ねえ、三人分のお茶をテラスに用意してくれる?旦那様達もいない事だし、三人でお茶をしましょうよ。」


「‥分かりました。とりあえずマリーさんに声をかけてきます。」  

 

「わがままを言ってしまってごめんなさいね。」  


キャロルがそう言って申し訳なさそうな顔を向けると、エリは恐縮しながら退室しました。


若くても優秀なエリは、すぐに用意を整えてキャロルを呼びに来ました。


キャロルがテラスに行くと、綺麗にテーブルが綺麗にセッティングされており、脇にはマリーが控えていました。


「マリー、エリ、どうぞ席に座って。‥私のわがままに付き合わせてしまってごめんなさいね。その‥‥ロザンナの事とか色々教えて欲しい事もあるし‥。女同士で色々と話してみたかったの。」


「‥分かりました。若奥様のお役に立てるのなら‥。」


エリが三人分のお茶を淹れ終わり席に着くと、マリーがロザンナについて話し始めました。


「若奥様、ロザンナ様とガナン様はもとは恋人同士だったのです。‥とは言っても、もう十何年も昔の事ですよ。お二人は婚約もしていましたし、当然結婚するものだと思っていました。‥ですが、ある日突然ロザンナ様は他の方と結婚されてしまったのです。ガナン様に何も告げずに‥。当然ガナン様は落ち込みましたよ。それこそ女性不信になるほどに‥。」


「‥そうなの、ガナン様はロザンナに振られたせいで、あんな風になってしまったのね。‥ねえ、ロザンナはなぜ元の旦那様と離縁して戻って来たのかしら?」


「‥実はロザンナ様は、奥様が支援してした画家のロベールと駆け落ちしたのです。


ですが、王都へ行くとロベールは奥様以外のパトロンを得る為毎晩浮気をするようになったそうです。‥他にもモデルの若い子にも手を出して‥挙句にその若い子を妊娠させたらしいんです。


ロベールは結局ロザンナと別れてモデルの子と結婚したそうです。」


「‥まあ、ロザンナも苦労したのね。」


「‥ロザンナ様は、ロベールを金銭的に相当貢いでましたからね。‥それで傷心のまま帰って来たんです。」


キャロルはロザンナの意外な過去を知り、最初の悪い印象は大分薄れました。‥ですが、ガナンを勝手に振っておきながら、またよりを戻そうとするロザンナの事を許せませんでした。


「二人共ありがとう。‥旦那様をロザンナなんかにはわたさないわ!」


「勿論ですとも。」


「私達も微力ながらお手伝いさせて頂きます。」


「ありがとう。」


キャロルは二人の手を強く握り、自分を馬鹿にしたように帰っていったロザンナの姿を思い浮かべました。そして‥ロザンナなんかに旦那様を渡さないわ!‥と強く決意したのでした。


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