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もう一人の転生者

お待たせしました!今回も更新が遅くなってしまってすみません…前回土曜と言いましたね。わたし。

今日は土曜日です!はい!すみません。そんな訳はございません。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






「……とおい昔とは、どういうことですか?」


とっさに出てきたのは、そんな言葉だった。

なんとなく転生者であることは、誰にも知られてはならない。そんな風に思っていたからかもしれない。


「私にもこことは全く異なる世界で生きた別の人の記憶があるのです。私の生きてた世界と、お嬢様の生きてた世界、一緒だと思うんです。だって()()()()()()()()()()()なんですよね?」


確信めいたその微笑みは、私の心に矢を放った。


そうだ。羽根があるから扇風機。なんていうのは、羽根あり扇風機で幼少期を過ごした記憶のある田舎育ちの『私』には当然のことだった。

でも、なんでそんな事をロシューズさんは、気がついたというのか。


「先ほど扇風機を見て「羽根がない」なんて呟かれていたので驚きました。今まで風を輪っかの形から出す発想の方を奇抜だと驚かれてきましたから」


「……きこえてたんですね。それは迂闊でした」


「ちなみに、扇風機をご存知なら日本人?」


「はい、ロシューズさんも、ですよね?」


「そうです。といっても思い出したのは子どもを産んだ時なんですけど」


「え?生まれた時からではないんですか?」


驚いた私が隣のロシューズさんを振り返ると、ロシューズさんはキョトンとした顔で首を傾げていた。


「お嬢様は、生まれた時から?えっと、失礼ですけど、前はいくつだったんですか?」


「………あとすこしで三十路でした…苦痛ですよ…三十路で赤ちゃん…三十路で幼女…」


ふとここ数年を走馬灯のように思い返し、思い返されるままならなかった記憶に思わず遠くを見てしまう。

成熟した精神で行う幼児期は、紛れもなく辛かった。今でこそ家族仲も良い家に生まれて楽しい幸せな思い出が多いが、それはそれは。特に歩き、話せるようになるまでのできない苦痛は中々ないと思う。

『私』の世界で聞いた拗れた性癖の方々に言えるのは、赤ちゃんプレイはあくまでプレイだから楽しいんだぞ、と。


「み、みそじ………では、私より年上、ですかね…?」


「ロシューズさんはいくつだったんですか?」


「私は、十七歳でした。ちょうど思い出したのも十七歳で、私は記憶との差はありませんでしたね」


「なんと…うらやましい…」


さっきまでほんの数年前までのあの苦痛を思い出していたせいか、思わず本音が溢れた。


「そういってお嬢様だって今の暮らし幸せなのではないですか?辺境伯家のご令嬢なんて、贅沢し放題じゃないですか!ご兄姉仲も良さそうですし」


すっと背を伸ばし会計しているであろう兄たちを振り返ったロシューズさんに釣られて私も振り返る。

ちょうど会計が終わったのか、同じタイミングで振り返った兄と目があった。

愛しむように柔らかく微笑む兄に私も笑みを返した。


「そうですね。あの日々は大変でしたけど、確かに幸せかも。

でも、わたしは辺境伯家の者ではありません。


わたしは、リリシュナ・ノーデン・ヴィ・ソレイユといいます。


ソレイユ子爵家の次女です。ポラーノ家の二人とは幼なじみなんです」


「それは、失礼致しました。改めまして、魔道具士マリアンナ・ロシューズです」


「ロシューズさん、よければ文通しませんか?私普段は北の領地すまいなので王都へはなかなか来れないんです。せっかく出会えましたし、情報交換しませんか?」


「私で良ければ」


お互いカテーシーでの挨拶後、少し声を落としてそう密約を交わした。

こちらに兄たちが向かってきていたからだ。

領地に戻ったらこのお店宛に出し、お互い覚えている『昔のこと』書き綴ろうとそう約束した。


「妹の相手をありがとう。兄のローランド・ノーデン・ヴィ・ソレイユだ。良い買い物ができた」


「姉のラタエナ・ノーデン・ヴィ・ソレイユと申します。素敵なお店を知れてとても楽しかったですわ」


「ロシューズ様の魔道具のお話を直にお聞きできてとても有意義な時間をいただけました!ありがとうございます」


「こちらこそ、当店をご利用いただき光栄でしたわ」


そうして頭をたれたロシューズさんに魔道具について手紙で連絡してもいいかと迫るクラディスが叱られたところで今日のお出かけは終わりを迎えた。

いつも淑女らしく嫋やかな姉が珍しくぴしゃりと叱ったのだ。

理由は、いくらまだ幼いと見なされるとしても貴族令息が個人的理由で手紙を送り合うのを簡単に行うべきではない、と。

クラディスにしてみれば、ただ興味のある魔道具について魔道具士に話を聞きたいというだけなのだろうが、女性に手紙を送るのはそういうつもりであるという匂わせにとられる、と帰りの馬車内でさらに捕捉してくれた。


口では、仕方ないような言葉をしたクラディスだったが、その顔は納得いかないと不満げな顔だった。

ロシューズさんとの文通は、なんとなく前世に関わる事だし秘密にするつもりだったが、クラディスの様子を見て話してもいいかもしれない。

クラディスの言葉を私が代筆して、私が聞きたいという風にすれば、手紙としては何も問題ないはずだ。

クラディス本人がやりたい事を応援するというのも、所謂幼なじみという立場にいるのだから悪くないと思う。



こうしてはじめての王都を満喫した私は、残りニ日の滞在期間をゆっくりとすごし、領地へと戻った。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ここまでお読みいただきありがとうございます。

ひとまずここで一区切りと致します。

次の話からは、少し成長した年齢から始まります。お話もちゃんとタイトルになぞって進んでいきますので、引き続きブックマーク登録の上、更新を楽しみにしていただけたらありがたいです。

現在登録いただいている方ありがとうございます。

下の☆で評価もいただけると嬉しいです!

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