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青の石畳

長らくの更新停滞すみません。

そして、変わらずブックマーク登録外さずにいて下さった皆様ありがとうございます。

これから毎週更新できると思います。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




私たちは、クレープを堪能したのち、屋台通りを抜けて、西通りに向かい再び歩き出した。

今現在私は、無事に兄の腕の中から脱出することに成功していた。羞恥心をどうにか押さえ込み、兄の満足いくまで甘え倒すことで兄のご機嫌マックスにしたのだ。

クレープを一口あーんしてあげたのが一番良かったらしいので、今後も上手く活用していこうと思う。


ザハードの案内で進んでいた私たちを出迎えたのは、西通りの特徴となっているらしい透明感のある青色の石畳だった。

人々が歩き擦れていていいはずなのに淡い光沢のその青色は、神秘的な色だった。


「すごい…」


「これ石なのか?」


「元は白い磁器質タイルだそうですよ。それを特殊な染料で染め上げてコーティングしているそうです。常に青を纏われている現国王様が即位された際の祝いの一つの名残ですね」


「これ魔法でコーティングしてある…」


「そんな事わかるの?」


クラディスは、自分の足元のタイルに手を触れているだけだ。

兄やタイルの説明をしてくれたザハードに視線を送るが、みな困惑した表情で首を横に振るだけだった。

つまり、施されているコーティングが魔法であると言うのはクラディスにしかわかっていないということだ。


「僕は、魔力が多いからか魔力が人より見えやすいみたいなんだ」


「触って分かったわけじゃないの?」


「触ったのはどういう魔法かわかるかなって思っただけだよ。でも、そんな訳ないね。魔法で強化されてるって事しかわからないや」


魔力は、魔法の発動時にしか目に見えないと言っていたのは、魔力学の家庭教師だ。


魔法は、魔力に術者のイメージが反映し起こすもの。


魔術は、文字を用いた陣を組み、決められた法則の中で術を発動させるもの。


どちらを使用するにも魔力の元はなんでもいい。術者の魔力でも、魔石の魔力でも、発動させることができる魔力量があればいい。

それこそ、大気中の魔力でも。


この世界、魔力というのは目に見えないが、大気中に充満しているという。目に見えない空気中の窒素や酸素を体内に取り込んでいるのと同じなんだろう。

魔力も大気中から呼吸し、その体内に取り込み、保管できる量が術者が使用できる魔力量とされている。


しかしながら、人が体内で持てる魔力にも使用できる魔力の適正にも個人差がある上、空気中にある魔力は誰のものでもないが故に制御する事が難しいと言われている。自分に馴染んでいない魔力をコントロールする事の方が難しいと言われているのだ。

もちろん強大な術や自分の適正外の術であればその分使用する魔力量は多くなるし、使用する魔力が多ければ多いほど術者の体への負担が多くなる。

だが、魔力は減っても休息を取れば回復するし、回復するための薬だってある。

だから、普通の人間は大気中の魔力を使う、と言うことをしない。


忌避すべきは、回復が間に合わない程の体への負担を受けた時の魔力が枯渇からくる体調不良だ。魔力が体内から全て枯渇してしまった場合、最悪死に至る場合もある、と教えられた。

魔力が体内にない状態ではこの世界の人間は生きていられないという。


そして、リリシュナの体は、保管できる魔力量が少なかった。


元々ソレイユ家の家系が魔力量の器の低い家系らしい。

魔力量が少ないとはいえ、魔力を使わなければ体へ負担が出ることはない。必要以上に体内の魔力を減らさなければ生きるのに問題ないらしいし、魔法や魔術を使うなら魔石で補えればいいと教えられた。

実際兄や姉も魔石が付いた専用の杖や剣で魔法を使う。私は、まだ魔力操作しか教えてもらえなかったので、兄たちに魔法を使って見せてもらったのだが、その際兄も姉も発動する魔力の色が同じ青色の水適正の魔力だった。


ちなみに私は、検査の時に緑色の風適正の魔力だとわかっている。


魔力には、四つの魔力色がある。


赤の火適正、青の水適正、茶の土適正、緑の風適正。

使う魔法や魔術によって発動時にその特色が現れるのだが、人間にはそれぞれその肉体に対し使いやすい魔力色が決まっている。

基本は、四大元素のいづれか一色。まれに複数の魔力色を持つ人もいるが、その数は少ないらしい。


ソレイユ家は、父が水適正、母が緑色の風適正、と外見そのままを私たちは受け継いでいたので、遺伝子偏りすぎではと少し笑ったものだ。


「クラディスには、大気中の魔力も見えるの?」


「ううん。大気中に漂う魔力に魔力色はなくて、魔法を使わないと色はつかないんだ。だけど、魔法を施されたら、その効力が切れるまで魔力色を帯びてるんだ。それが、僕には一目でわかるんだ」


簡単なことのように説明してくれてるけど、それはチートの片鱗なのではないのか?大丈夫?その事実クラディスの新発見とかじゃないよね?

と不安に思いながら、隣の兄たちも感心したようにクラディスの話を聞いていた。

ギブソンだけ思案顔だったので、もしかしたら私と同じような事を心配しているのかもしれない。

でも、確か今のクラディスには、一応教会から魔力コントロールのための講師が派遣されていると言っていたので、その辺はちゃんと把握されているはずだ。

何かあればそこから教会とか詳しい機関に話が上がってるはず。よね?


「魔力量が多いとそんなこともわかるの?」


「どうなんだろう?ベリアル神父さまは、普通は発動時にしか魔力色は見えないって言ってたけど」


はい。やっぱり普通じゃないって事ね。というか、聖職者として神に仕える神父様の名前がものすごく神を裏切りそうな名前なんだけど、大丈夫なの?いや、この世界の宗教の事よくわかってないし、神話とか違うんだろうけど、その名前って堕天使の名前じゃなかったっけ…。


「ベリエル神父様の言うとおりだな。魔力色が見えるのは発動時の魔力が変換される事による魔力の摩擦によってだ。物質に馴染んでしまった魔力色は普通見えない」


「だが、クラディスは見えるのだろう?クラディスにだけ見える何かがある、という事か?」


「そのあたりは教会本部の方で調べを進めていると父上は言っているが、俺たち子供にはまだ全てを話しては下さらないんだ」


兄の疑問に眉を下げて言葉を返したエドバルドは、不満なんだろう。だけど、当人であろうと六歳のクラディスと十歳のエドバルドに全てを話していないという辺境伯は、二人の事を考えてあえて話していないと思いたい。

だっていくらしっかりしているとはいえ、まだ幼い子供であることに変わりはないと思う。

二人の父親である辺境伯とは、直接話したことは実は少ないのだけど、クラディスの件で国王に直々に話をつけた辺境伯がクラディスについて悪いことにならない様に配慮しているはずだ。


「失礼ながら、団長は、国の安寧と同様にご家族の事を思っておいでですから、ご安心して頂いて良いと思います。この話はこの辺で終わりに致しましょう」


「これ以上はこのような往来では差し支える内容になるかとも思いますので、目的のお店へ移動致しましょう」


イッシュとギブソンの言葉で、ここが道の往来だと言うことを思い出した。

二人の言う通りである。こんな誰が聞いていてもおかしくない、むしろ聞いて下さいと言わんばかりの場所で話すことではなかった。

それに気がついた兄たちはっとした顔をしていたので、もしかしたらこういう所がまだ子供だと見られているのかもしれない。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

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