風俗嬢と童貞の純愛…ー!?
「こんにちは、初めまして。」
「は、はじめまして。」
暗闇の中でネオンや街灯だけが私たちを照らしている、そんな中で雰囲気に完全に合っていない男性が1人、今私の目の前に立っている。完全に挙動不審だ。
「中に入りましょうか」
「はい…」
ホテルの中に入ってベットに腰を下ろした。でも、その人は本当に緊張しているようで、とてもオドオドしていた。あぁ、絶対童貞なんだろうな。ひと目でわかった。
「お名前、教えてくれますか?」
「小山です」
「小山さん…今日はありがとうございますっ」
なるべく、明るく元気な笑顔で振る舞うようにして話しかける。緊張、少しは解けてくれるといいんだけどな…なんて何故かいつもより私は必死だった。
「こういうお店来るの初めてですか?」
「はじめてです…」
「緊張してますか?」
「はい…女性とあまり話したこともないし、怖くて」
「女性が怖い?」
いつもはすぐに事に及ぶことが多いけれど、この人はそれを望んでいる訳ではなく、人との関わりを大切にしているような、そんな気がした。だからタイマーはまだ押さずに、小山さんとしばらく話すことにした。
すると小山さんは途端に暗い表情を見せる。なにか嫌なことを思い出させてしまったんだと、軽率に聞いてしまった自分を憎んだ。でも、小山さんはポツリポツリと少しずつ理由を私に伝えてくれた。
聞くと、小さな頃から母親から暴力を度々受けていて、その後に両親が離婚して男手一つでお父様が小山さんを育ててくれたそうだ。でも、私たちには共通点があるとそれだけで感じた。
「私は、母子家庭なんです。なので男の人との接し方があまり分からないし苦手でした。」
小山さんは少しびっくりしたように目を見開いて私を数秒見つめると、照れてすぐ逸らしていた。
「でも、小山さんのお母さんがそうだっただけなんです。小山さんのこと大切にしてくれる女性は絶対います。だから、少し積極的になってみて下さい…私でよければ力になりたいです。」
いや、ちょっとわざとらしく聞こえちゃうかな?!言った後から凄く恥ずかしくなってきた。でも、この気持ちは紛れもない、本心だった。心配になって小山さんの顔色を伺った。
「っ…はい。」
小山さんは初めて安心したように目を細めて笑った。よかったと肩をなでおろす。その笑顔を見た時に心がとても暖かくなるような感じがした。そこで私はタイマーを押してバスルームへ向かった。