目安箱
町内会で話し合って、公民館の受付に一つの箱をおくこととした。
それは月に1回の会合によって開かれ、これからの目安とするために行う。
匿名であっても投函することができ、役に立つかはわからないが、それでもしてみようということになったわけだ。
「それでは第1回目安箱委員会を開催します」
委員長が話す。
俺は一委員であるが、この町唯一の開業医をしている。
ただし、近所に総合病院があるから、患者さんはどちらにもよく行く。
「目安箱、開錠」
15cmくらいの木箱は、南京錠で止められていた。
それを委員長の鍵で開けると、中を改める。
「さすがにまだ誰も入れてないか」
委員長が嘆息したが、1ヶ月目にしては、持っていかれなかっただけマシと思うことにしよう。
「では次回は来月の同じ曜日、えtろ第4土曜日でよろしいですか」
異議なし、という声が聞こえる。
「ではそれまで目安箱を閉鎖します。施錠」
声と同時に委員長が自ら鍵をかけた。
来月、何か投書があればいいが、と思いながら目安箱を見つめていた。