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最弱のドラゴンは今日も生きる  作者: 因幡うさぎ
第一部
6/8

最弱のドラゴンと彫刻家

 …あいつが来てから1週間ほど経過したか。自分の倉庫もとい美術館も充実してきた。あいついつまで来るのだろうか。取りあえず今日も明日のために彫刻用意するか…。


~ルドルフサイド~


 …今日も刺激的な作品だった。あそこに置いてある作品、毎日斬新でまた、その斬新の方向性が違うのがまた良い。

 つまりあれらを作った人はレパートリーが豊富なのだろう。そのような人は、どんな考えを持っているのだろうか1度話してみたいものだ……ってそうだった! 僕は彫刻を彫りに行ってるんじゃなかった。会うために行っているんだった。


 よし、明日こそは会おう。

 あの人はいつもいない。と、いうよりいつも僕が行くと隠れている。なので、明日は3時間ほど早めに行こうと思う。

 問題はあの音の出る石だ。あれを踏んでしまっては来たことがバレてしまう。なら踏まなければいい。

 踏まないようにするにはどうすればいいか考えた結果、土魔法で橋をかけることにした。魔法使えると隙だらけなのかな、あの石。魔力探知持ってればまた違った話になるのだろうけど。

 さ、今日は早めに寝るか。



 と、いうことで9時現在、僕は洞窟の前にいる。当然、ガリガリ音も響いている。今日こそは会ってやる。自分は音を立てないよう慎重に橋を架けながら進んでいく。

 よし、石は越えたぞ。それでも足音は立てないよう慎重に、慎重に。もうすぐ、いつも彫刻のあるところだ。ガリガリ音もうすぐだ。僕はガリガリ音に近づくたびに僕は息を呑む。果たして、どんな人なのか。おっと、5mぐらい先か、あそこの角から音がする。僕はこっそり作業を覗き見る。


 僕は一瞬目を疑った。いや、正気すら疑ってよかっただろう。僕の目に映った光景はそれほど異常だった。


 ドラゴンが、彫刻を彫っていたのだ。


 神話で語り継がれる災害になっているようなドラゴンが、こんな辺鄙な洞窟で彫刻を彫っている。誰がどう見てもまともとは思えない、そんな光景が映ったのだ。


「こんにちは、はじめまして」


 気がつくと僕はドラゴンに声をかけていた。もちろん恐怖心はあった。でもそれ以上に好奇心が勝ってしまっていた。未知の生物、それもまた、あのような彫刻を彫る生物。その事実に対する好奇心が、僕をドラゴンの方へ進めたのだ。

 世の中には好奇心は猫を殺すという言葉があるが、それはまさにこの状況のことを言うのだろう。当然、猫は僕のことだ。

 自分はドラゴンの機嫌を損ねてしまったのではないか、見つけてはいけなかったのではないか。ただ、それを心配しても、もう手遅れなのだが。

 

 僕はもう腹をくくって、ドラゴンに向かうことにした。どうせあの彫刻を彫ってる存在を無視できるような僕じゃないんだ。


~俺サイド~


 ついに見つかってしまった。ルドルフとかいう冒険者に。そして、ルドルフは獲物を狩るような目でこちらを睨んでいる。ああ、俺また死ぬのかな。もっと生きたかったな。

 それでも、二度目の生が受けられただけ満足だったと思っておこう。それでも、二週間は短すぎだったな。俺は諦めて、ルドルフが俺を一瞬で狩ってくれるよう、首を向ける。ああ、そうだルドルフ。彫刻、綺麗だったよ。そう伝えたくて発した言葉は「ゴアッ」だった。ルドルフには伝わってないだろうけど、これでいい。痛みのないよう一思いに頼むよ。


 ルドルフは一歩一歩俺に近づいてきて、こう言い放った。


「作業中話しかけてきてすみませんでした、あなたとは一度会話してみたいと思ったのです。お時間よろしいでしょうか?」

「...ゴア?」


 ......あれ?


 俺は不思議そうにルドルフのほうを見ると、ルドルフは内心ホッとしたような様子だった。どういうことなのだろうか。


「あぁ、殺されなくてよかった。でもこれじゃ伝わらないか。えーと...〈トランスレイション〉! ...これで伝わるでしょうか」

「ん、んあ?」

「初めまして、先ほどは作業中すみませんでした」

「お、おう」

「先ほどは作業中、失礼いたしました。前から貴方とはお話をしたいと思っていました。少々お時間貰えますか?」

「え、えーと…殺さないのか?」

「私がドラゴンを殺せるわけございません」


 あ、そうか。最弱でも見た目がドラゴンだから強そうには見えるのか。なら強そうに振る舞おう。いやほんと見た目通りだったらよかったのに。


「それはそうだ。それで何を話したいのだ」

「はい、あれらの彫刻を彫ったのは貴方ですよね?」


そう言ってルドルフは俺の作った雑な石像を指さす。


「いかにも」

「はい、やはりそうですか。とても素晴らしいアイデアです」

「褒めても何も出さないぞ?」

「いえ、そのようなおつもりはございません。ただ、あのような素晴らしいアイデア、自分で作って自分で楽しむだけでは、私、少々もったいなく思えます。

 そこでふとあることを私は考えたのですが…1つ質問させていただきまふ」


「貴方のアイデア、世界へ広めてみる気はございませんか」

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